第17話 軍議

 暗闇の中、いつものように前世武将アニマル軍の陣屋には、車座ができあがっている。


「黒田官兵衛。前世忍者アニマル軍の奇襲の調査はどうなった?」


 胸を反らす織田信長ウサギが、堂々と鼻を鳴らした。


「調査はまだ継続中じゃ」


 淡々と報告した黒田官兵衛ハリネズミだが、含みのある物言いだと、感覚の鋭い織田信長ウサギは察知した。


「じゃったら、そのまま調査を続けろ」


 織田信長ウサギはあっさりと鼻を鳴らした。


「はっ」


 頷いた黒田官兵衛ハリネズミが、思い出したといった顔付きになった。


「なんじゃ?」


 気付いた織田信長ウサギが、不快そうに髭をぴくりと動かした。


「調査隊から意外な情報が入っておった」


「なんじゃ?」


 織田信長ウサギが黒田官兵衛ハリネズミを睨んだ。


「明智光秀殿の生まれ変わりに出会ったという情報じゃ」


「それは朗報じゃ」

 打って変わって織田信長ウサギは、にやりと目を輝かせ、浮き浮きと長い耳を揺らした。

「で、どんなアニマルじゃ? どこにおるんじゃ?」


「それが……」


 口ごもった黒田官兵衛ハリネズミが顔をしかめた。


「なんじゃ?」


 早く言えと催促する織田信長ウサギは、苛々と後足で地面を連打した。


「明智光秀殿は、ヒトに生まれ変わっておるそうじゃ」


「それは誠か?」

 腕組みをした前田利家シマリスが首をかしげた。

「信じられん」

 武田信玄ハトが首を振った。

「ヒトの脳では、前世の記憶と共存ができぬはず」

 険しい表情で毛利元就イヌが鳴いた。

「そうじゃ。じゃから、たとえヒトに転生していたとしても、前世の記憶は封じ込められている為、自らがそうだと認識ができない故、その存在を知られることはない」

 えせ情報ではないかと、名乗らぬタヌキは黒田官兵衛ハリネズミを睨んだ。


「この情報は、入隊していない名乗らぬツバメの情報で、ツバメ殿が非常階段に作った巣の下、そこに座っていた酔っぱらいの女が、わしは明智光秀じゃと、転生アニマル音(特別な周波数)で喚き散らしていたということじゃ。転生アニマル音は、転生アニマルにしか発音できぬ。それをヒトが発音したんじゃ」


 黒田官兵衛ハリネズミは、言い切るようにきっぱりと鳴いた。


 名乗らぬタヌキは納得したと頷き、他の皆も頷いた。


「ふっ、ふっ、ふっ……」


 織田信長ウサギは不気味に口元を震わせている。底知れぬ闘争心が湧き上がっているのだ。


「で、明智光秀殿はどこに住んでおるんじゃ?」


 立花宗茂プレーリードッグが落ち着いた目で、黒田官兵衛ハリネズミに促した。


「ツバメ殿は、酔っ払いの上、ヒトじゃった為、質問などの会話はせず、無視したそうじゃ」


「うむ。それが正解じゃろうな」


 腕組みをしている立花宗茂プレーリードッグは、ゆっくりと首を縦に振った。


「殿。もしかしたら……」


 閃いたと、豊臣秀吉リスザルが織田信長ウサギを見た。


「そうじゃ」

 にやりと片髭を上下させた織田信長ウサギは、豊臣秀吉リスザルが何を言おうとしているのか気付いている。

「酔っ払うことで、前世の記憶が封じ込めから解放されるんじゃ」


「ヒトに転生したときは、酔っ払ったときにだけ、前世の記憶と共存することができる、ということじゃな」


 名乗らぬタヌキは考え深く頷いた。


「武田信玄。セキセイインコ。明智光秀の居場所を特定せよ」


 荒々しく鼻を鳴らした織田信長ウサギは、逸早く明智光秀ヒトの居場所を突き止める為、名乗らぬツバメに接触しやすい鳥類である彼らに指示を出した。


「はっ」「はっ」

 武田信玄ハトと名乗らぬセキセイインコは、頭を下げると、ふわりと飛び立った。

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