第14話 軍議
前世武将アニマル軍の皆は、何事かと険しい表情で、陸続と陣屋に集まってきた。
最初にやってきた名乗らぬタヌキに、織田信長ウサギは事の次第を告げると、胸を反らして座ったまま動かなくなった。
名乗らぬタヌキは、左右隣に座った毛利元就イヌと黒田官兵衛ハリネズミに、事の次第を告げると黙り込んだ。
毛利元就イヌと黒田官兵衛ハリネズミは、それぞれ隣に座った豊臣秀吉リスザルと名乗らぬセキセイインコに事の次第を告げた。このように、隣に座ったものに告げることを繰り返し、いつしか車座はできあがっていった。
ぬいぐるみのように動かない織田信長ウサギの長い耳がぴくぴくと動いた。武田信玄ハトを感知したのだ。
「どうじゃった?」
織田信長ウサギの正面となる車座が解けて場所が空いた。そこに、武田信玄ハトが舞い降りた。
「名乗らぬクモに依頼して得た情報じゃが……」
一斉に皆が、緊張の面持ちで武田信玄ハトを見た。
「あの檻ならば、伊達政宗なら脱出は可能じゃということじゃが……」
武田信玄ハトは溜め息を吐いた後、ゆっくりと続けた。
「伊達政宗は戦意喪失。四隅の一つに体を寄せ丸まっているとのことじゃ。そんで……」
再び溜め息を吐き、首を下げて続けた。
「完敗じゃ……完敗じゃ……完敗じゃ…完敗じゃ……と、生気のない転生アニマル音で何度も呟いておるそうじゃ」
「ふん、そうか」
素っ気なく織田信長ウサギは鼻を鳴らした。
「情けない」
「無理もないわ」
前田利家シマリスと立花宗茂プレーリードッグが、ひそひそと交わした。
「それから……小姓の母が、うちの息子が迎えに来るはずだからそのときまでお願いしますと、申し訳なさそうに何度も頭を下げてお願いしていたそうじゃ」
「却下」
間髪を容れず、織田信長ウサギが鼻を鳴らした。
「は?」
嘴を開け広げた武田信玄ハトが首をかしげた。
「その情報は聞かなかったことにする」
素っ気ない織田信長ウサギの顔を見つめた武田信玄ハトは、ますます首をかしげた。
「じゃな」
同意した名乗らぬタヌキは意図をくんでいた。にやりとしたその口元を見て、武田信玄ハトは思い当たった。他の皆も気づき、わくわくするように目を輝かせた。そんな中、保科正之アライグマだけが、怪訝そうな目で皆を見回した。
「一日一悪。動物愛護センターに攻め入る」
凜然と鼻を鳴らした織田信長ウサギに、驚いた保科正之アライグマは慌てて尋ねた。
「その心は何ですか?」
「決まっておるじゃろが」
憤慨した織田信長ウサギが、後足で地面を蹴り上げた。
「おまえ以外は皆、わかっておるぞ」
ふわりと名乗らぬモンシロチョウが、考え込む保科正之アライグマの耳にとまった。
「善し悪し。おまえは動物愛護センターのことを知らんのんか?」
手厳しく羽を鳴らした名乗らぬモンシロチョウに、はっと保科正之アライグマは気が付いた。だが、皆とは違って、思い悩んで黙り込んだ。
「いい機会じゃ。派手に攻め入ろうぜ」
意気軒昂に前田利家シマリスが、槍で突く仕草をした。
「水攻めはどうじゃ?」
にやりと目を細めた黒田官兵衛ハリネズミが、豊臣秀吉リスザルを見た。
「いいねえ」
豊臣秀吉リスザルは満足そうな笑みで親指を立てて返した。それを隣で見ていた織田信長ウサギの右目が、冷めたように細まった。
「他に良い案のあるものは?」
他の策を強く促すように、織田信長ウサギは皆を見回した。
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