第3話 攻防
気絶した立花宗茂プレーリードッグは、名乗らぬキツネによって地面に置かれた。
前世武将アニマル軍の武田信玄ハトは、地面に気絶した三匹が横一列に並べられているのを、上空から不愉快げに見下ろしながら、
虎柄のミックス(雑種)ネコである前世武将アニマル軍の伊達政宗ネコは、地面から伸び出てきた根に鋭利な爪を立て、尖った牙で噛み付いた。根が怯んだように地面に潜った。それを横目に、身軽に飛び跳ねると、膨らんで太長くなった尻尾を振って身をくねらせ、葉の手裏剣をネコパンチで叩き落した。そこへ、枝が鞭のようにしなって打ってきた。だが、余裕でしなやかに身をくねらせてかわした。そのとき、別のしなる枝に気づき、口から転生アニマル音を鳴らした。
「武田信玄殿。避けろ」
警告に、武田信玄ハトは一気に羽を閉じて急降下、地面ぎりぎりで急旋回、急上昇でかわした。途中、枝から出てきたカマのような枝に引っ掛かりそうになっていた。
ひやりとさせられた武田信玄ハトは、鞭のように打ってきた枝を上空から見下ろした。既に通常の状態に戻っている枝に、アニマルらしきものを捉えた。確かめようと急降下する。近づくと、それはやはりアニマルだった。体長九センチの茶色のアニマルの前足はカマになっている。そのアニマルは、前世忍者アニマル軍の名乗らぬオオカマキリだ。枝から出てきたカマのような枝は、名乗らぬオオカマキリの前足のカマだ。
気付いた名乗らぬオオカマキリは、近寄ってきた武田信玄ハトに向かってカマを振った。だが、そのカマを、武田信玄ハトは双刃刀で封じ込めた。カマに双刃刀を挟ませたのだ。
武田信玄ハトは、カマに双刃刀を挟ませている状態で、くちばしを振った。双刃刀は大きく横に振れるが、名乗らぬオオカマキリは、宙ぶらりんになりながらも耐え、双刃刀を離さない。だが、離さないということは、名乗らぬオオカマキリの負けであることは間違いない。なぜなら、武器であるカマが使えないからだ。
「油断大敵」
名乗らぬオオカマキリが羽をこすり合わせて転生アニマル音を鳴らした。
仰天した武田信玄ハトの首を、名乗らぬオオカマキリは噛み付いた。いや、噛み付かれる前に、武田信玄ハトはくちばしを左右にビュンビュン振って、名乗らぬオオカマキリの顔を引き離した。この状態を保とうと、くちばしを振り続けていて気付く。この動作は、双刃刀を振り回すことになっていて、そのことで名乗らぬオオカマキリの顔を引き離せているのだが、双刃刀を振り回し続けることは最終的に双刃刀を挟ませているカマが外れるということだと。武田信玄ハトはこれを利用することを閃いた。カマが双刃刀から外れるだろう瞬間を見極めると、その刹那に首を大きく横に振った。
カマが双刃刀から外れ、名乗らぬオオカマキリは木々の奥の暗闇へ飛ばされていった。途中、名乗らぬオオカマキリが木にぶち当たる音を、織田信長ウサギの長い耳は捉えていた。
「小鳥を食べるというオオカマキリをやったか」
片笑んだ織田信長ウサギは、愉快そうに片髭を波打たせて鼻を鳴らした。
「成敗してやった」
着地して双刃刀を地面に置いた武田信玄ハトは、得意げに口から転生アニマル音を鳴らすと、くちばしを持ち上げて意気揚々と胸を張った。そんな足下の地面から、根が伸び出てきた。慌てて双刃刀をくわえ飛び立って逃げるが、葉の手裏剣が羽に当たりそうになって急降下。すぐに急上昇し、向かってくる葉の手裏剣を、双刃刀で華麗に打ち落としていく。
伊達政宗ネコは、連続でしなってくる枝に打たれそうになりながらも、しなやかに身をくねらせてかわし続けていた。と突如、地面から伸び出てきた四本の根が四肢にまとわり付き、しなった枝が鞭となって打ってきた。だが、なめらかで柔らかい動きでかわした。かわしたはずだった。が、枝から伸び出てきた長い枝に打たれ、ボールのように飛んでいった。そして、名乗らぬキツネの足元に落ちた。と思われたが、直前に身をくねらせてしなやかに四肢を地面について着地した。と同時に、颯爽と飛び跳ねて逃げようとした。矢先、名乗らぬジョロウグモが疾風に乗って、伊達政宗ネコの鼻先にとりついた。毒牙で噛む素振りを見せている。それに気がついた伊達政宗ネコは硬直した。
「四匹、やられたか」
苛立ったように鼻を鳴らした織田信長ウサギが、後足で地面を蹴り、警戒音を鳴らした。それに呼応した前世武将アニマル軍の意気が揚がる中、名乗らぬジョロウグモの代わりに、尋問する名乗らぬキツネの口から鳴る転生アニマル音が響いた。
伊達政宗ネコが、毅然と否定して鳴いた。
気絶させられた伊達政宗ネコが地面に並べられるのを、胸くそが悪そうに見ていた名乗らぬタヌキが、ひょいと地面から伸び出てきた根に噛み付き、眼前に迫ってきた葉の手裏剣を俊敏に前足の爪で引っ掻いて落とした。そこへ、枝が鞭のようにしなって打ってきた。だが逃げることなく、その枝をひょいと背中で受け止め、弾き返した。
「なんじゃ?」
口から驚きの転生アニマル音を鳴らした名乗らぬタヌキの見張った目には、枝を弾き返した瞬間、その枝から伸び出てきた長い枝を捉えていた。
「しまった」
悔いるように鳴いた名乗らぬタヌキは、長い枝の正体を悟り、正体の主を取り逃がしてしまったことを口惜しがった。だが、すぐに気持ちを切替えると、地面から伸び出てくる根や、葉の手裏剣をやっつけていく。
毛利元就イヌは、名乗らぬタヌキが弾き返した枝が再びしなろうとするのに気付き、飛びかかって噛み付いた。噛んだままでぶら下がり、後足で枝を蹴り上げる。そのとき、枝から伸び出てきた長い枝に頭を打たれた。喫驚して見開いた目に、長い枝の正体が映った。
「舌か」
呆然と口から転生アニマル音を鳴らした毛利元就イヌの目を狙って、再びエボシカメレオンが舌を伸ばし打ってきた。
枝から伸び出る長い枝は、前世忍者アニマル軍の名乗らぬエボシカメレオンの舌だったのだ。
毛利元就イヌは、反射的に目を閉じたが、瞼は舌で打たれた。その痛みに耐えながらも、枝を噛んだままの状態でぶら下がっている。案の定、枝は動きを止めている。
名乗らぬエボシカメレオンは容赦なく、毛利元就イヌのもう片方の目に向かって舌を伸ばした。だが、かわした毛利元就イヌは、前足で枝を抱えると、後足を縮めたり伸ばしたりして体をバネのように動かす。それに連動して枝が上下に動く。だが、名乗らぬエボシカメレオンは枝から落ちることなく、再び舌を伸ばした。毛利元就イヌの前足を打つ。毛利元就イヌは痛みに耐えながら、動きをより一層激しくする。枝が大きく上下し、後足が地面についた。一気に前足で枝を引っ張り、後足を思いっきり縮めた。直後、名乗らぬエボシカメレオンが舌を伸ばした。毛利元就イヌが前足を枝から離した。
弓なりに曲がっていた枝は勢いよく跳ね上がり、名乗らぬエボシカメレオンは木々の奥の暗闇へ飛ばされていった。
「あばよ」
にやりと鳴いた毛利元就イヌは、思わず気を抜き、地面に座ってしまった。ふと、三角耳が危険を察知した。だが、かわすが遅し。毛利元就イヌの首は、名乗らぬキツネによって噛み付かれていた。
「五匹、やられたか」
不愉快げに髭をぴくぴくと動かし鼻を鳴らした織田信長ウサギだが、依然堂々と胸を反らして座ったまま、その場を動こうとはしない。迫ってきた葉の手裏剣は、片方の長い耳で持つ刀を振って打ち落とし、もう片方の長い耳はいろいろと探っている。そんな耳が、上空の何かを捉えた。
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