入学祝いの時計が形見になった①
数十年程前。
当時、まだ私がセーラー服を着てた頃の話です。
G叔父さんが家に彼女を連れて来ると母が言ってました。
正直驚きました。
G叔父さんはこれまで女性の影がありませんでした。後に母から聞きましたが、今までお付き合いした女性はいなかったらしく、
敢えて言うなら、貢いでいた飲み屋のお姉さんの事を「彼女だ」と言ってたそうで…女性経験がない事はお分かりいただけたであろうか。
因みに、お金の切れ目が縁の切れ目でポイされたらしいですね。
お姉さんは接客だし優しくしますよね。仕事だから笑ってくれるだけで、割り切ってるから…、草生える感じですがね。
当時の叔父さんのスペックは
40才手前、普通の会社員
それなりにお給料貰ってました。
それから、直毛剛毛の持ち主でしたが、パンチパーマかけてました。大阪のオカンが当ててるやつ。
……あの当時、流行ってなかったと思いますが、流行に疎いと思うので、気に入ってたのかもしれません。
G叔父さんには、私や弟が幼い頃に数年一緒に住んでいた事があったので、まあまあ懐いていました。パチスロ好きで、パチ台を買って家に置いてたり、テレビゲームのソフトにパチスロ、競馬、花札等々ありまして、叔父さんがよくやってた記憶があります。
真面目で優しい人ですが、少しズレてました。
G叔父は母に慕われてたのを勘違いしてたのか「俺は兄貴」風を吹かせたかったのか。
大人しい子供だった私達兄弟に思うところがあったようで、母に子供達を甘やかしているんじゃないか、もっと叱らないと駄目だとか言ってたそうです。
母曰く「悪いことしてないのに子供達を叱ってもしょうがないじゃない?」そうで、誤魔化して流してたようです。
……確実に言える事は、学校に居場所がなかった私が家で叱られていたとしたら、親に失望して更に歪んだ大人になってたか、自殺を選んでただろうなと思いますよ。親って偉大ですね!
そんなG叔父さんに降って湧いた話。
どうして彼女が出来たのかと言うと…祖母の知り合いからの紹介でお見合いしたのだと母から後々聞きました。
知り合いさんからの話では、「いい子だから」と言われていたそうです。
最初は別の叔父さんに持って来た話だったそうですが、写真を見た叔父さんが嫌がったので話がG叔父さんに来た。
そのような経緯だったようです。
G叔父さんが家に連れて来た日。
その女の人を見た私は、子供ながらに「あれ?」と思ったんですね。どこ、というわけではないが、『気持ち悪い』と思ってました。
このときは、突然来た女性に優しい叔父さんを取られるのが寂しかったのかとも思ってたので、口には出しませんでした。
もしかしたら、無意識に同族嫌悪的なものを感じ取っていたのかもしれません。
その女性の名前は、E子。
少しぽっちゃりした体型の、ごく普通の三十代のおばさんでした。
先に別の叔父さんが嫌がったのは、ぽっちゃりした女性がタイプじゃないからだったそうで…その逆で、G叔父さんはぽっちゃり女性が好みだったようです。
G叔父さんのタイプはきっとうちの祖母(背が低くてぽっちゃりしてる)。家に来た二人は楽しそうでしたし、仲が良さそうに見えました。ですが、二人が帰ってもどうにも違和感が拭えませんでした。
このとき同席していた父は母に「あの女の人は何かヤバい奴だぞ」のような事を言っていたようです…後に母がこぼしてました。
多分母は父の話を本気にしてなかったんだと思いますし、それよりも何か思っても「兄の選んだ人だから」何も言えなかったようです。
私にはよく分からない感覚なのですが、下の兄弟は兄や姉には意見出来ない圧がある…らしい。
言っても聞かないとのこと。
年上こそ、年下の意見を怒らず軽んじることなく聞くべきだと思いますがね、うちの叔父さん達は残念ながら出来ないんですね。
G叔父さんはそこが顕著なので…言っても更に燃え上がってただろうなあ。
話が逸れましたねすみません。
それからG叔父さんは、E子とお付き合いを重ねて結婚をする事になりました。
その際に母の実家に挨拶に来たそうです。
気が早いのかE子は、早くも祖母を「お義母さん」と呼んでおり、挨拶中もG叔父さんにべったりで、実家に泊まっていったそうです(G叔父さんは結婚するまでほぼ実家住み)
あー……それと、仮にも人の家でいちゃついて、やること○ってたと、祖母が呆れかえって母にぼやいてたそうです。(部屋から声が筒抜けだったそうで、呆れるしかなかったらしい)
「あいつ(E子)、普通は義理の実家に初めて止まるのに堂々といちゃつかねぇだろ、はしたねぇな」って言ってたようで…
祖母は紹介した手前G叔父さんには言えなかったようですが、叔母や母に「あれおかしくねぇか?」と、ぼやいてたようです。
このお付き合い〜結婚の間に私は高校生になり、G叔父さんから入学祝いに腕時計を貰いました。
何だかんだ言っても、節目にはお祝いをくれる所はいい叔父さんでした。
入籍だけ済ませた二人は、結婚式とかはせずに母実家と同じ市内で家を借りて暮らし始めました。
家の場所はだいたいこの辺、というふわっとした事しか聞かされておらず、またその場所に行った事はありませんでした。
そりゃ、招待されてませんでしたのでね。
E子に若干の違和感を感じていましたが、私自身は新生活で環境ががらっと変わった事もあり、叔父さんの結婚の事は特に気にしてませんでした。
そんなものだと思います。
そして、E子の本性はわりとすぐに明らかになったのです。
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