初恋の女の子のお話

 といっても、まゆこちゃんの話ではなくて、大人になってからは一度も再会していないとある女の子のお話です。イニシャルはY・Hなんですが、ひがしもりゆうか(仮名)とでもしておきましょうか。


 そもそも、私たちの出身小学校に通ってる奴って大体、徒歩10~20分圏内から通ってたもので、一学年二クラスという比較的小さなところなので、それぞれがどこに住んでるかは大まかには把握していました。今になると交流がない同期の噂も時々聞こえてきたりする辺りが都市部な割に妙に田舎チックな感じです。


 前説はさておき、ゆうかちゃんといつ出会ったかは例によって覚えてないのですが、小一の時はお互い認識していた気がします。


 彼女は同小出身でもとりわけ強烈な印象がありまして、一言で言うと気がとっても強かったのです。男子に混じって格ゲーもよくやってましたし、私も彼女と格ゲーで対戦した記憶があります。桃太郎電鉄みたいなパーティーゲームにもよく混じってました。


 彼女と私は比較的よく遊ぶ友達くらいだったのですが、ある時、今でも鮮明に思い出せる強烈な出来事がありました。それは、校庭の結構大きめの遊具で鬼ごっこをしていたときのこと。私が鬼で近くにいたゆうかちゃんにタッチしたのですが、誤って、よりによって彼女のお尻をタッチしてしまうことに……。

 

 これが確か小四くらいの頃だったのですが、開口一番、彼女は「痴漢や!」と大騒ぎ。よりによって学級会の議題にされたのでした。とはいえ、負けん気の強い子どもだった私も、間違って触れてしまったのは悪かったけど、わざとじゃないのにふざけるなと思ったわけで、


「僕が触ってしまったのはわざとじゃないのに、痴漢だって言い立てる方がおかしいと思います!」


 と徹底抗戦。確かにわざとじゃないのにおかしいよね、でも、ゆうかちゃんの気持ちもわかるし、とか色々あった末、教師から仲直りの提案。


 放課後にお互いに二人きりになったタイミングで


「ごめんなさい」

「ごめんなさい」


 と言い合って仲直りをしたのでした。この時は彼女もなんだか申し訳無さそうだったので、なんとなく彼女自身もやらかしたのを自覚してたのかなーという気がします。


 その後も同じく飼育委員をしていた関係もあって、鶏やアヒル、ウサギとかの世話を一緒にやったりと仲良くしていたのを覚えています。真似してはいけないのですが、アヒルを校庭の滑り台から滑らせるのが飼育委員の間で流行っていて、私も彼女もそんなことを一緒にやっていました。


 記憶が多少曖昧ですが、私の誕生日会に彼女を招いたこともあった気がします。ともあれ、なにか特別なきっかけがあったわけじゃないですが、男子というのは単純なもので、接点が多くて仲良くしている女子が居れば割と簡単に好きになってしまうもの(笑)。


 特別にアプローチをしたわけでもないのですが、なんとなく好きだったなあという感じです。卒アルを見ても男子と一緒に写っている写真が多い中で彼女は一緒に写ってたりするので、当時基準でも仲が良かったのかなという印象です。


 そんな彼女と最後に遊んだのは中学校一年の夏頃。既に京都の中学に通い始めていたのですが、この頃はまだ大阪の家から通っていた頃で学校も夏休み。かなもり君やゆうかちゃんが花火しようよーと誘ってきたので、近くの大きめな公園で盛大に花火をやったのでした。


 普通の花火の他にロケット花火を持ち出してお互い打ち合いをしたりとかなり大盛りあがりだったのを覚えていますが、遊び終えて暗い中、それぞれの家路に帰る中、彼女が家に帰るのを見届けた私はといえばなんだかとても寂しい気持ちに襲われたのを覚えています。


 ゆうかちゃんは地元の成人式に来ることもなかったので、成人式で再会もならずで(ちなみに、成人式の時に彼女が居ないかなーとちょっと思ってた記憶があります)、今に至るまで没交流です。


 ただ、出身小学校のコミュニティというのはやけに強いものでして、かなもり君はゆうかちゃんと中学を通じて付き合いがあったらしいし、他の同期女子でも彼女と最近会った人もいて、たまに近況を聞くことがあります。その同期女子から去年聞いたところによると、


「ゆうかちゃんはお兄ちゃんと今もあの家で独り暮らしなんやって。一生、結婚せえへんって言ってたよ」


 だそうです。去年辺りに、かなもり君に彼女の近況について尋ねたことがあるのですが、うーんと口を濁した後に「ゆうかは色々あるからなあ。当時の思い出もどれだけ覚えてるかわからんよ」みたいな感じで言われたのでした。


 中学以来会ってない私がなにか言えることもないのですが、二人の言い分を総合すると、男性絡みでなにかあったのだろうなと思っています。淡い初恋の思い出で終わらずに、その後の人生についても人づてに色々聞こえてしまうのが、良くも悪くも出身小学校のコミュニティだなと思うのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る