第12話 みんなで話し合い
「初めまして!フウと言います!」
「初めまして。ルウと言います。」
「「レイの妻の座は渡しません!」」
「……何言ってんだよお前ら。」
院での話し合いから翌日。計画の内容を詰めるためにクロエの屋敷を訪れて、クロエに会って開口一番言い放ったセリフがこれである。
ちなみに、この屋敷に来るのには非常に苦労した。というのも、クロエの屋敷は下界の奥まった場所にあるため、下界を長い距離歩かなければならなかったのだ。男一人に女二人の少年少女が下界を歩くと、まあ襲われるよね。通算20回は襲われた。全部返り討ちにしたけど。
「初めまして。私はクロエと申します。私が旦那様の妻になる予定でしたが、そうですね、では旦那様に直接聞いてみることにしましょう。」
「え?」
つかつかと足音を響かせながら俺の近くまで近づいてくるクロエ。そしてその白魚のような左手で俺の右頬を柔らかく触ると、赤く艶やかな唇を俺の耳元まで近づけてくる。
「ねぇ。私のこと、好き?」
「うひぃ!?」
思わず声が出てしまう。耳元で囁かれて脳に甘い声が直接届けられたときに、背中と脳がぴりぴりのような、ぞくぞくのような、そんな感じがしたのだ。
「私のこと、好き?」
「しゅ、しゅきでしゅ。」
頭がボーっとしてきて、呂律も回らなくなってくる。目に映るクロエさんの首元が美しい。今日はその綺麗な髪を下ろしているが、見え隠れする首元がどこかで背徳的で無意識のうちに興奮してしまう。……ああ、良い匂いもする。
「じゃあ、あなたの妻はだれ?」
「あぅ。そ、それは、クロエさん、です……。」
さらに口元を耳に近づけて囁きかけてくる。そんな声を聞くと反射的に全身が硬直して、体のすべてをクロエさんに支配されているかのような感覚に陥る。
「うふふ。ありがとう。」
―――ちゅ
頭の中が真っ白になる。足に力も入らなくなってきてクロエさんに寄り掛かるような体勢になってしまう。クロエさんの柔らかい体が横から全身を包み込む。……はあ、幸せ。
「に、兄様の顔がこんなにもだらしない表情に……。」
「うわすご!兄様のこんな表情初めて見た!」
なんか周りから声が聞こえる気がするがまあいいか。温もりを感じながら柔らかい体に包み込まれ、ふわりとしたいい匂いを嗅ぐ。はああ、こんなにも幸せなことが今まで生きてきてあっただろうか。
「ふふ。これで私が旦那様の妻ってこと、分かって頂けましたか?」
「分かりました!さすが奥様です!」
「悔しいですが認めざるを得ないでしょう。」
「では、作戦の話し合いをしていきましょう。」
「それはいいですが、ふにゃふにゃになった兄様はどうするんですか?」
「兄様頭回ってないよー!」
「それは問題ありません。すぐに復活させる方法も知っていますので。」
温かい温もりが徐々に消えていき、床に膝立ちの状態で立たされる。少しずつ意識が覚醒してくる。うん?クロエさんがまた俺に顔を近づけてくる。今度は何を囁いて……
「今すぐちゃんとしないと、私旦那様のこと、嫌いになりますよ。」
頭が急速に覚醒していく。お、俺がクロエさんに、嫌われる……?……嫌われる……。嫌われる……。嫌われる。……だ、だめだ!クロエさんに嫌われるわけにはいかない!今すぐちゃんとしないと!
「は、はい!ちゃんとしてます!えっと、今から作戦会議ですよね。早速始めましょう。」
「うわ!奥様すご!」
「凄すぎます。あの兄様が、もはやしつけられた犬じゃないですか。」
妹分たちが何か言っているが気にしない。俺はちゃんとしなければいけないのだ。作戦を早く詰めていかなければ。
「うふふ。はい。では、早速作戦会議を始めていきましょうか。」
作戦会議の結果、俺たち組織側に割り当てられた仕事は、当初の通り第4エリアと第5エリアの主とその館を跡形もなく消すことだ。彼らはクロエがいくら説得しても『下界更生計画』に賛同してくれなかったらしく、さらにひどく暴力的だということだったため、消えてもらうことになったのだ。
もちろんこのことに関しては、こちら側でも調査して、嘘ではないことが分かっている。特に第5エリアの主は元騎士のようで、その実力を悪用して好き勝手しているらしい。これは組織の立場上、見逃すことはできない。
一方クロエさんの役割は二つ。一つは俺たちの破壊活動の前の段階で行われる。それは主とその仲間たちを館に待機させるというものだ。俺たちが館に行っても主とその仲間たちがいないと意味がない。だから、彼らを集める役をクロエさんが担ってくれたのだ。
もう一つは俺たちの破壊活動の後の段階で行われる。今回のメインである戸籍作成だ。すでに自分が治めているエリアの戸籍作成は完了しているらしく、あとは第4,5エリアだけらしい。
あれ、俺との初対談の時一部だけ完成してるみたいな言い方しなかったっけ?っと思って聞いたら、あれは嘘だったらしい。小さめに言っておくことで、後の交渉で優位に立とうとしていたらしい。さすがである。
「それでは、決行は明後日の夜ということで。お三人とも、よろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしく、クロエ。」
「よろしくお願いします!奥様!」
「全身全霊で挑みます。」
こうして大まかな作戦は決定し、当日まで現地調査や連携の練習を進めるなどして万全な準備をするのだった。
そうして、決行当日の夜となり、まず初めに第4エリアの館に行くのだった。
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*ここで第1話に繋がるわけですね。
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