第37話 みんなで旅行!
「旅行?」
「うん、だってさ、今年大学三年で就職活動しないといけないから、今のうちにいこうよ!」
「旅行か…うん、いいね♪」
「何?何の話?」
「ヒロも行こうよ旅行に!」
「旅行?」
愛がヒロも旅行に誘ってきた。
「メンバーはこの三人なの?」
「巧君は?」
「巧は…どうだろ?聞いてみるね!」
「ん~来週の週末とかどう?場所は…近いところがいいよね?」
「そうだな~沖縄とかどう?俺沖縄行ったことないんだよね。」
「そういえば沖縄でロケがあるって言ってた!」
「じゃあ、沖縄だったら巧君も大丈夫なんだじゃない?」
「うん!聞いてみるね!」
「帰りに沖縄の本買いにいこうよ♪」
「沖縄…?」
「そう、巧は来週沖縄にいるんだよね?愛とヒロと私で沖縄行くからその時会えないかなって…できたら一緒に観光もできたらいいなって…」
「金曜日に仕事一旦終わるから、日曜日の朝には帰らないといけないけど土曜日なら大丈夫。」
「本当?」
「あぁ…金曜日に撮影終わるからスタッフと土曜日かえる予定だっただけだし。」
「やった!私沖縄初めてで…」
「じゃあ俺が案内しようか?」
「本当!?すっごく楽しみ!巧と観光できるなんて…」
「どこに泊まんの?」
「うん、ロッジみたいなところに泊まろうかなって。」
「ふ~ん、じゃあ俺もそこに泊まる。」
「じゃあヒロと同じ部屋でいいかな。」
「俺はお前と一緒の部屋に決まってんだろ。」
「いやいや、さすがにちょっと…てかそれじゃヒロと愛が同じ部屋になっちゃうじゃん。」
「それがいいんじゃねぇの?」
「え?…どういう意味?」
「本人に聞いてみたら?」
「え!?そうなの!?」
「シーッ声が大きいよ、美優。」
大学のカフェテリアで愛と昨日の巧の電話の内容を話していた。
「ヒロのこと好きなの?」
昨日の巧とのやり取りから愛がヒロを好きなのか気になって仕方なかった。
「うん…だけどさ、ヒロっていつも美優が一番だったからさ。」
「でも今は…」
「わかってる。今はもう美優のこと以前のようには思ってないけど、それでも、中学からずっと一緒でさ…なんか今更どういう風にすればいいのかわかんない。」
いつもしっかりものの愛が顔を真っ赤にして話している姿が可愛らしかった。
「わかった!沖縄旅行がんばろう!」
「いやいや、あんまり気合いれると変な感じになっちゃうからいつものどおりで大丈夫!」
「わ、わかった!じゃあいつもどおりで…愛スタイルいいし、水着買ったらどうかな?ヒロ泳ぎたいっていってたし!」
「そうだね…水着買うの付き合って!」
「水着買いにいこう!」
大学に旅行の準備で、巧がいない間も慌しく時間が流れ、旅行の日が近づいてきた…
「巧君とどこで待ち合わせしているの?」
「レンタカー借りるからここで待っててって言われたんだけど…」
愛、ヒロ、美優は沖縄に着いて、空港の外で巧を待っていた。
「あれじゃない?」
ヒロが指差した方から普段の巧が乗っているとは思えないようなちょっと古い、おじさんが乗るような車でやってきた。
「巧!ありがとう~」
「今日はよろしくお願いしま~す。」
愛や美優が巧に声をかける。
「おはよう!」
「沙織さん…」
「え!?沙織さんってあの…?」
愛が車を覗き込んで確認する。
「たくちゃんが、スタッフと帰らないっていうから何でってきいたらあなた達と観光するっていうからさ~私も沖縄きたことなくって♪それに巧の食生活も気になるしね!はい、皆さんどうぞ♪」
そういって沙織は助手席に座り、後方席をあけた。
「助手席に美優は座りなよ。」
愛が小声で言ってきたが後ろに愛とヒロと沙織さんというメンバーで座らせるわけにはいかなかったので、後ろに座ることにした。
「ね、海に行って泳ぎに行こうよ!巧も少しは焼いたほうがいいよ!」
「じゃあ、海行くか。」
「美優!一緒に買った水着で頑張れ!」
「沙織さんのことは気にしない話じゃ…」
「あれは撤回!女の勘だけど何となく危険な感じ!」
「あの、愛…」
「ん?」
「私…」
愛の耳元で生理だと打ち明けた。
「…えッ…海やめる?てか海いってもつまんないんじゃない?」
「ううん、愛も水着せっかく買ったしさ、ヒロも泳ぎたいって言ってたし、私海見るの好きだから。」
「…ありがとう、美優!」
愛が美優に抱きつく。
そんな二人のやり取りを羨ましそうな顔で沙織は見ていた。
「あ、海の香りがする!」
沙織が窓を開けて匂いをかいでいた。
「サーフィンやっている人もいるんだ…俺もやろうかな~兄さん教えてよ。」
「気が向いたらな。」
「気が向いたらって何だよ~」
海に着くと早速みんな更衣室へいって水着に着替えてきた。
「美優!どうかな…?」
愛は黒のビキニで大人っぽいデザインのものだった。
「いい!すごくいい!かわいい~愛は脚が長いからすごくひきたつよ!肌も白いし…」
「ヒロにもそう思ってもらえるかな?」
「うん!大丈夫だよ!あ、ヒロがきたよ!巧も、こっ――」
「たくちゃん!」
美優が言い終わる前に沙織がこちらに駆け寄ってきた。
「すごッ…」
愛が沙織の水着姿にみとれていた…
男性はもちろん、女性でも憧れるぐらいの胸とお尻は出ていて、ウェストはくびれていてと普段の服装ではわからなかったけど、グラビアアイドル並にスタイルがよかった。
「沙織ちゃんすごい…イテッ!愛今足踏んだ?」
「別に…」
ヒロにヤキモチをやいて愛がわざと足を踏んだ。
「どう?可愛い?」
沙織が巧の前に立ちクルリと回ってみせた。
「うん。似合ってる。」
(やっぱり巧もああいうスタイルが好きだよね…)
「あれ?美優ちゃん…だっけ?あなた入らないの?」
「あ、うん、ちょっと…」
「ラッキー♪じゃあ荷物お願いね!巧、行こう!」
沙織は巧の手を引っ張って海のほうへ行ってしまった。
「美優、いいの!?私巧君呼んでこようか?」
「ううん…いいよ。愛もヒロとせっかくだから行ってきて。」
「でも…ん?」
ヒロが女の子にナンパされているのが目に入った。
「ヒロ、もてるんだからいったほうがいいよ!大丈夫だから。」
「ごめん!すぐ戻る!」
そういって愛はヒロのところへ行ってしまった。
「はぁ…」
まさか生理がくるなんて思ってもいなかった。
いつも正確な生理がいつもより早くきてしまった…
ストレスからなのか、それとも――
「何してんの?」
「巧!どうして…沙織さんは?」
「沙織は今向こうでビーチバレーしてる。」
「え?あれは知っている人?」
「いや、全然知らない人。」
「え…大丈夫なの?」
「沙織はさ、人見知りとか全然しなくてすぐ仲良くなるんだよね。」
確かに知り合いのように沙織も輪に入って楽しそうにビーチバレーをしていた。
「何で海はいんねぇの?」
「えっと……ちょっと…」
巧に生理だと恥ずかしくて言えなかった。
「ふ~ん、じゃあ今日はイチャイチャできないってことか、残念。」
巧は美優が生理だということに気づいたらしい。
「イチャイチャ…したかった?」
イチャイチャしたいと巧なら言うってわかっていたから…
今はその返事をもらって、愛されているという実感がほしかった。
「毎日でもお前を抱きたいよ。」
(嬉しい…)
美優がニコニコ笑顔になると、巧はニヤニヤしながら尋ねてきた。
「何?そんなに毎日したいの?」
「いや、そういうわけじゃなくて…」
「美優がそんなに好きだったとはね~」
「だから違うって…」
「それだけしたら子供できるかもなー」
「子供?」
「俺はたくさん子供ほしいな…父親に今すぐにでもなりたい。自分は父親との思い出ないから、いっぱい遊んでやりたい。」
そういう巧はどこか寂しそうだった。
「巧…」
「美優、今度さ…実家に顔を出そうと思うんだ。」
「うん…」
「一緒に来てほしい。情けないけど一人じゃッ」
「行くよ!一緒にいく!」
横にある巧の手をギュッと握った。
嬉しいことは巧と一緒に喜びたいし、悲しいことはできるだけ巧に感じさせたくないーー
美優の中にそういう感情が生まれてきた。
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