第36話 同窓会
「え!?同窓会?」
「中学三年の同窓会の連絡がきたけど一緒に行かない?」
「中学三年か…ヒロはどうするのかな?」
「ヒロは三年のときクラス違ったからこないよ~」
「あ、そうだったね。」
今日は愛と一緒にショッピングを楽しんでいた。
「そういえば、美優が気になっていた武田君くるみたいだよ。」
「武田君…?」
「うん、覚えてない?確かサッカー部だったかな?」
「あ…保健室の…」
「そうそう、美優にボールぶつけてそれからいい感じになったよね。懐かしい~」
愛がニヤニヤしながら美優のほうを見る。
「え!?何?」
「確かその保健室で武田君と…」
「恥ずかしいから思い出さないでよ~」
武田君とキスしそうになったんだ…
――中学三年生
武田君はサッカー部のエースで、ファンクラブがあるぐらい女の子からモテていた。
中学はクラスが毎年変わっていたけど、武田君だけ三年間一緒のクラスだった。
「危ない!」
「え?」
美優のおでこに武田が蹴ったボールが勢いよくあたり、美優はその場にうずくまった。
「ごめん!大丈夫!?」
「うん…」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫…」
「傷が…」
「え?」
ぶつかったおでこを触ると血が出ていた。
「先生!ちょっと保健室いってきます!いこう!」
「私一人でいくから大丈夫だよ。」
「俺の責任だから俺も一緒に行く。」
そうして二人で保健室へ向かった。
「先生~っていないか。じゃあここ座って。俺やるから。」
そういって手際よくピンセットなどを用意した。
「なれているんだね。」
「あぁ、俺たちしょうっちゅう怪我するし、それに親父のやっているのよく見ているから。」
「お父さん?」
「親父は医者だから。」
「そうだったんだ。知らなかった…」
「フッ…」
「え?」
「如月ってさ、三年間俺と一緒のクラスなのに俺のこと知らないでしょ?」
「え!?知ってるよ!武田篤人、サッカー部で女の子にもてて…」
「それぐらいでしょ?」
「まぁ…」
「俺は知ってるよ。両親がレストラン経営、神田も作ることが好きで料理上手、花も好きで花壇をよく見ているし、数学が苦手…」
「何で数学まで…」
「よく補習受けてるじゃん。」
「そうだけど…ッ――」
「痛かった?」
「大丈夫―ッ」
三年間クラスが同じでもこれだけ話のは初めてで、こんな至近距離で顔を見たのも初めてだった・・・
「神田はさ知らないでしょ?」
目を反らしたいのに反らせれなくて、目をみつめあったまま武田が話し始めた。
「何を?」
「俺がずっと神田とこうやって話したかったこと――」
「武田君…?」
まさか武田君にそんなこと言われると思っていなくて驚いた。
だって三年間そんなに話したことなかったのに――
武田君の顔がどんどん近づいて、近すぎて見えなくなってくる…
“ガラガラッ…”
「あら?どうしたの?怪我?」
保健の先生が帰ってきた。
「あ…」
恥ずかしくなってその場から逃げ去るように出て行ってしまった…
「お~い美優!」
「あ、ごめん。」
「今武田君のこと考えてたでしょ~保健室のこと。」
「そ、そんなことないよ。」
「でもあの保健室以来話もせず卒業しちゃったね。」
「そうだったね…」
「あのまま武田君とうまくいっていたらまた違う人生だったんだよね~なんか不思議な感じだよね。」
「そうだね…」
「ね?なんか最近元気なくない?」
「え?そうかな?」
「うん…巧君と何かあったの?」
「巧とは何もないんだけど…」
美優は黙り込んでしまった…
「お茶、お茶にしよう、ね?」
愛は美優を近くにあるカフェに連れて行き、そこで美優から巧と沙織の話を聞いた。
「え!?何それ…普通に嫌でしょ?てか遠慮するよね?だって今はまだ美優の気持ちがあれかもしれないけど、戸籍上奥さんなわけだしさ…」
「うん…///」
「え…何々今の反応何?」
「…巧のこと気になるっていうか…」
「うんうん。」
「……好き?う~ん好きは好きなんだけど、こう言葉にうまくできないんだけどさ。これが恋なのかと言われるとまだピンとこないというか…でも沙織さんのことが気になる…」
「そっか、あと一歩って感じか~」
「うん…」
「ゆっくり焦らないほうがいいよ。とりあえず同窓会に着ていく服探そう♪」
「うん。」
――同窓会当日
「美優!」
「愛!愛可愛い!似合ってる~」
「美優も可愛いよ!」
レストランで貸切で同窓会ということで二人ともおしゃれをしていた。
大学の時は二人ともいつもジーンズ姿だからこういう格好はみたことがなかった。
「じゃあ入ろうか。」
「うん♪」
「美優!」
女の子たちが一気に美優の周りを囲ってきた。
「え?何々?」
卒業してから会っていないしメイクもしているから誰だかわからないぐらいなのに、女の子達は美優にべったりとしてきた。
「ねぇ、ニュースみたよ!日向巧の奥さんなんでしょ今!」
「どうやって結婚したの?出会いは?」
「巧って普段家ではどんな感じなの?」
みんな巧のことが知りたくて近寄ってきたのだ…
(なんか、居心地が悪い…)
「今日は同窓会だから、中学の時とかの思い出話しようよ。」
「武田君!」
さっきまで巧の話をしていた女の子たちが一気に武田君に駆け寄った。
185センチの巧と変わらないぐらいの身長で、スラッと伸びた手足は芸能人の巧と同じぐらいのルックスだった。
顔も丸い可愛らしい瞳は変わらず、肌が少し白くなったぐらいだった。
「美優大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。」
「武田君、今○○大学の医学部なんだって。お父さんの跡を継ぐとか…」
「そういえばお父さんお医者様って…」
武田君の一言で女の子達は一切巧の話をしなくなった。
「あの、武田君…」
武田君が一人になった時を見計らって話しかけた。
「さっきはありがとう。助かったよ。」
「あぁ…いいんだよ、やっぱり同窓会は昔の話とかしたいし。」
「うん…そうだね。」
「そういえば神田…あ、今は苗字変わって日向だっけ?」
「神田でいいよ。」
「じゃあ、美優って呼んでいい?」
「あ…うん。」(巧もヒロも美優って呼ぶけどなんか武田君がいうと変な感じ…)
「そういえば美優ってラインのグループ入ってないよね?」
「何のグループ?」
「この中学のグループなんだけど、今回もそのグループで同窓会決まってさ。俺がみんなを集めたんだけど…」
「そうだったんだ…そんなグループがあるのも知らなかった。」
「じゃあ、ライン交換しようよ。俺あとで招待するよ。」
「じゃあ、お願いします。」
そういって二人は連絡先を交換した――
私の中での武田君は、サッカー部のエースで、格好よくて、モテて、勉強もできて、性格もよくて…
中学の時の武田君しか知らない
表の武田君しか知らない――
【日向巧の彼女の連絡先ゲット!】
SNSで武田がそう書き込んだ。
「女ってマジでみんなチョロイな…」
暗闇の部屋で携帯の光が照らす武田の顔は中学時代の美優が知っている彼とはまったく正反対の顔をしていた――
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