第35話 沙織の正体

「おはようございます。」




今日は新しいドラマの衣装合わせの日だった。




「巧君、おはよう!」




「井口さん、おはようございます。あ、どうぞ。」




巧は井口に椅子を差し出した。




「巧君って本当優しいわ!この子巧って名前にしようかしら!」




巧の専属のスタイリスト井口は妊娠中だった。





「産休中のスタイリスト、ちゃんと用意したわよ!」




「たくちゃん!」




「沙織!?」




「あれ知り合いだった?」




「何で沙織が…」




「彼女今スタイリストの中では有望って言われている子なのよ。きっと巧を魅力的に見せるコーディネートとかしてくれると思うわ。」




「スタイリストだったのか…」




「今日からよろしくね、たくちゃん♪」




「ちょっと失礼します。」




橘が巧を呼び出した。




「あの子でしょ!?この間ネットであんたと写真に写ってた子!顔あんまり写ってなかったけど…どういう知り合いなの?」




「施設に一緒にいた仲間。」




「施設にいるときの巧を知ってるの!?マスコミにその時の巧のこと暴露したりしない!?」




「沙織はそんなことするような人間じゃ…」




「ならいいけど…これから映画もあるわけだし、もうあの子と二人で会ったりとかしないでちょうだい。」




「わかった…」




「たくちゃん、早くこっち来て!これ着てみて!」




橘が目で「あの呼び方もどうにかして!」と無言で睨んできた。




「沙織、ちょっと俺の呼び方変えて。」




「え?何で?」




「ココ仕事場だから。」




「う~ん、じゃあ巧…さん?」




「はい、沙織さん。」




「やだ、くすぐったい。」




沙織はくすくすと笑い出した。




「じゃあ、巧さん?これ着てもらえますか?」




巧は沙織が差し出したジャケットを羽織ってみた。




「う~ん、もう少しさ筋肉つけれる?」




「え?」




「もう少し筋肉あったらもっと格好良くみえると思う!」




「わかった。」




「食事気をつけてる?」




「え?食事?」




「そうだよ、好きなもの好きなだけ食べてるとかそういうのダメだよ。」







「巧さんそういうの苦手そうだから、私が食事管理してあげる!スタイリストとして担当の人の体型を管理するのも大事だし!」











「え…?ご飯いらないの?」




「連絡遅くなってワリィ…今日から体系を維持する食事をするように沙織に言われて…」




「沙織ってこの間会った沙織さん?」




巧の電話口から何を話しているかはわからないが沙織の声が聞こえてきた。




「専属のスタイリストになってこれから毎日弁当になって…あ、ちょっとまだ仕事だから、後で。」




「…」




電話は切れたのに美優はまだ耳に携帯電話をあてたままだった。




私って巧のそばにいる意味あるのかな――




沙織さんみたいに仕事のサポートをしてあげれるわけでもなく




私生活のご飯とかのサポートをするわけでもなく




昔の巧のことを知っているわけでもなく…








私は巧にとって一緒にいてプラスになる人間なのかな?




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