第33話 沙織を追いかける男
“ピピピピピッ…”
携帯のアラームが鳴り響き、闇雲に手を伸ばし携帯を探した。
「はい。美優。」
「ありがとう….エッ!?」
普段は一人で携帯を探して止めるのに巧に携帯を渡されて驚いた。
「昨日あのまま…?」
自分が服を着ていることを確認した。
(何だか安心のような寂しいような…)
「んー美優。」
「起こしちゃった?」
「昨日はその…寝ちゃってごめんね。」
「…いいよ。だからご褒美ちょうだい。」
「え!?」
こういう時の巧はあまりいいことを言わない気がした。
「俺が着替えさせる。」
「え!?いいよ、自分でやるよ。」(こんな明るいとこで下着姿になるとか)
「美優をコーディネートしてみたかったし。俺も触らないし、美優も動かない。これならいいだろ?」
「うん、わかった…」
巧は早速美優のパジャマのボタンを1個ずつ外していく。
(ボタンが外されるたびに心臓が…胸が見えちゃう~)
“パサッ…”
パジャマの上着を脱がされブラ1枚になった。
美優はとっさに胸を腕で隠した。
「動くなって言っただろ。」
「だって…ンッーー」
巧は美優の口を塞ぐようにキスしてきた。
「次動いたら違うところにキスするから。」
「違うとこって…///」
“スルッ…”
巧はパジャマのズボンを下げ始めた。
「ちょっとッ…あ…」
「はい、罰ゲームね。」
巧は美優をベッドの上に押し倒し、首筋にキスしてきた――
「…ッ」
それから胸、肩、お腹、太ももとキスマークをつけながらキスをしていく…
(恥ずかしいけど…手で触れられているわけじゃないけど気持ちがいい…)
美優は目をつぶり、ドキドキしながら次の展開を待っていた。
「下はスカートは…これでいいか。」
巧は独り言を言いながら美優の服を探していた。
(え…本当にここでストップ!?)
体を起こした美優に巧が耳元でささやいた。
「もっとしてほしかった?」
自分の心を見透かされたようで耳まで真っ赤になった。
「明日大学休みだよな?」
「え、うん。」
「今日の夜連れていきたいところがあるんだ。」
「どこ…?」
「そこで今の続き…しよ?」
「///」
「さっき嫌がらなかったのが答えだと思ったんだけど、そう思っていい?」
確かに嫌じゃなかったーー
むしろもっとしてほしかったーー
“コクン…”
美優は首を縦に振った。
「もうなんでそんな可愛いんだよ////」
巧は美優にメロメロだった。
「ねぇ、このスカートもう少し長いのがいい。」
巧が用意した服を着たが、スカートの丈が気になった。
「何で?」
「だって…太ももの…」
太もものキスマークが見えそうで見えないギリギリの丈だった。
「それでいいんだよ。」
「座ったりしたら見えそうで…」
巧は口角をあげてニヤリと笑う。
「大学行ってもずっと俺のこと考えてほしいから。」
「え…///」(巧でも不安になったりするんだ…)
「てか時間大丈夫なの?」
「え!?今何時!?」
「8時40分だけど。」
「9時からだよ!!もう出なきゃ!」
「俺が送ってくよ。」
「でもすぐそこだし、みんな見ちゃうし…ここで…」
「じゃあ…」
そういって巧は美優を抱きしめた。
「今日の夜…心の準備しとけよ。」
耳元でそうささやかれ、巧は車に乗って行ってしまった。
「巧ってあんなに甘い人だったのかな///」
美優は大学へと急いで向かった。
巧の彼女ということでいつも大学の人にもジロジロと見られていたが、今日はさらに見られている気がした。
(もしかしてキスマークが見えてる!?)
美優は太ももをチェックするが見えてない気がした。
「美優!!」
「愛、おはよう。」
「おはようって大丈夫なの!?」
「大丈夫って…?」
「これ!」
愛が美優に見せてきたのは、昨日の巧が沙織と抱き合っている写真だった。
「テレビでもネットでも、謎の美女出現!って騒いでたよ。これ知ってた?」
「うん。だって目の前でされたし。ほら、これ私の靴。」
写真には美優の靴が写っていた。
「え!?美優がいて抱きついたの?何それ…」
「施設の時の友達みたいで…久しぶりだったから抱きついたんだと思うよ。」
「…大丈夫?」
「…」
「美優?」
「ごめん、ボーッとしてた。大丈夫だよ。友達だし…」
愛には心配かけれなくて、胸がモヤモヤすることを言えなかった。
“友達”って口にすることで2人が友達だって
恋愛関係はないんだって、信じたかったーー
2人が抱き合っている写真は、お昼のワイドショーでも流れた。
街中の大きなテレビのスクリーンにも映し出され、美女は誰なのかが話題になっていた。
「沙織……?」
1人の男性が大画面に映った写真を見ながら呟く。
「こんなとこにいたのかよ…」
「俺から逃げられると思うなよ。」
「芸能人?日向巧?こいつの側にいるんだな…絶対捕まえてやる…フッ…」
男は不気味に微笑みながら、人混みに消えていったーー
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