第5話 俺様のサプライズ
「ん…ココどこ!?」
美優は見慣れない、しかも豪華な部屋に驚く。
「え!?え!?あッ!!」
やっと昨日のことを思い出した。
ベッドから起き上がりソファに近づいてみる。
ソファを見てみると誰もいなかった。
「あれ?お風呂かな?出かけているとか?」
浴室やトイレも確認したが誰もいなかった。
テーブルを見てみると大きな箱一つと小さな箱二つあった。
「何これ?」
綺麗にラッピングされていて、大きな箱のリボンの所にカードが入っていた。
『これを着て12時にホテルの2Fに来い。』
それしかメッセージは書いてなかった。
箱を開けると赤いフリルがついているドレスと仮面が入っていた。
「え…どっちも映画とかでしか見たことない…」
小さな箱を開けるとネックレスにイヤリング、靴が入っていた。
どれも高級そうなものばかりだった。
「え!?何!?昨日のことこれでチャラってこと!?」
そう思うと少しづつ腹が立ってきた。
お金があれば何をしてもいいのか、とりあえず着てきた服で2Fに行こう!と思った。
「ない!ない!!」
どこを探しても服がなかった。
自分の今の服をみたらバスローブだ。
さすがにバスローブで外にでるのは恥ずかしかった。
「もーーー!!」
急いで服に着替え、アクセサリーをつけ、靴を履く。
鏡をみて自分で自分に驚く。
「これが私?」
テレビの中でみるセレブのようだった。
「てか、今何時?エッ!」
携帯をみると11時58分だった。
「そんなに寝てたの私!てかバッグどうしよう!」
ドアのほうへいくと箱の上にバッグがおいてあり、カードもはさんであった。
『バッグがないって焦ってただろ笑』
そのカードも文字を見てさらにイライラが募る。
絶対一言言ってやろう!そう思った。
エレベーターのボタンを押しドアが開くと中に人がいた。
「美優様、2Fでございますね。」
「あ、はい。お願いします。」(びっくりした~)
“チン…”
二階に着くと目の前には人がいっぱいいた。
200人いや300人ぐらいいるのだろうか。
みんな仮面を被っている。
慌てて美優も手に持っていた仮面を被った。
「アイツは…って分かんないし!」
仮面をみんな被っているので顔はまったくわからなかった。
(まさか私がこうやって怒ってくるってわかってて、ここに呼び出したのかな…意地でも探してみるんだから!)
美優はキョロキョロと周りを見渡しながら会場の前へと歩いていく。
突然会場の照明が消えた。
「え?何?」
暗くて歩けなくなりその場に立ち尽くす。
『皆様!お待たせいたしました!今日のメインイベントのバースデーケーキです!』
司会者らしき男性がマイクを持って話す。
「おお!」
歓声とともに大きなバースデーケーキが登場した。
ウェディングケーキ並みのケーキだった。
『では、本日の主役日向巧(ひゅうが たくみ)さんの登場です!』
「あ!」
会場の袖から登場しスポットライトを浴びていた。
「これもしかしてアイツのバースデーパーティー!?」
こんなバースデーパーティーは見たことがなかった。
普通の一般家庭で育ってきた美優にとっては住む世界が違うと感じた。
「今日は皆さんお集まりいただきましてありがとうございます。無事20歳を迎えることができました。それも皆さんのおかげです。感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。」
日向は昨日の美優の前の態度とは全く違うので、違う人を見ているみたいだった。
仮面を被っているから余計にそう思うのかもしれない。
もしかしたら、今のは仮面を被った日向で、昨日のが素なのかもしれない。
『じゃあろうそくの火を--』
「すいません、今日一緒にろうそくの火を消したい人がいるんです。」
「美優――」
「え!?私!?」
美優にスポットライトがあたり一瞬まぶしくて見えなくなる。
スポットライトが当てられたことなんて今までの人生一度もない。
意外と熱いと感じた。
日向は壇上から降りて美優の前に立った。
そして右手を差し出してきた。
(これって漫画とかでもみるそういうシーン!?手を私も差し伸べないとダメ!?)
頭で色々考えながらも、ゆっくりと手を日向へ伸ばした。
「わぁッ…」
まだ手を伸ばしきっていないうちに日向のほうから腕を掴んできた。
そして日向の腕に美優の腕を絡ませる。
「ちょっとッ!」
「俺に恥をかかせるな。」
そう耳元でボソッと囁かれた。
(一瞬でも喜んだ自分が馬鹿だ!やっぱりムカツク!)
割れんばかりの拍手で壇上へあがっていく。
「ちょっとゆっくり歩いてよ。ヒールになれてなくて…キャッ」
美優は階段で慣れないヒールで躓きヒールが脱げてしまった。
会場のほうへ目をやるとたくさんの人が仮面を被っているとはいえ、注目している。
(やだ…恥ずかしい…)
「わッ!」
日向は美優をお姫様抱っこし階段をあがる。
「い、いいよ、歩けるよ。」
「いいから。」
お前は黙って俺に抱かれていればいいんだよ。」
「だ、抱かれ…!?」
美優は顔が一気に赤くなった。
そういって壇上へあがり、脱げたヒールを日向が跪き美優に差し出す。
美優の左足の足首を手に取り、ヒールへと足を誘導してくれた。
「カッコいい!」
「さすが日向様!」
「私もされたい!」
会場にいる女性たちから黄色い声が飛び交う。
さっき私がこけたことは皆忘れているようだった。
「実は彼女、今年の誕生日祝ってもらってないみたいなんで、せっかくだからみんなに祝ってもらえたらって思うのですが…」
そう日向がいうとまた拍手が起こった。
会場にいる人たちが大合唱でバースデーソングを歌いだした。
自分と巧のために歌ってくれて、祝福されていることがうれしかった。
「昨日は悪かった。」
ボソッと巧が美優にいった。
大合唱の声でかき消されそうなぐらい小さな声だった。
「…え?」
「聞こえただろ。」
「聞こえなかった。」
「…ごめん。」
仮面で表情は見えないが、照れているようが気がした。
「素敵なサプライズありがとう!」
そう美優が伝えると巧の耳が赤くなっている。
両親が誕生日に亡くなってお祝いしていないという話をキチンと聞いてくれて、こうやってサプライズしてくれたことがうれしかった。
それに俺様男の巧からは想像がつかなかった。
『では、ろうそくの火を消してください!』
巧と目を合わせて一緒にろうそくの火を消した。
『おめでとうございます!』
「巧!どういうこと!」
女性が下から大きな声で叫んでいる。
「あの子一体誰なの!?」
ものすごい剣幕で話しかけてくる。
「お前は部屋に戻ってろ。」
そう耳元で巧は呟いた。
「うん…」(大丈夫かな…)
美優は会場を出ようと入り口へ向かう。
「あの!」
「え?」
声を掛けられたほうを見ると男性が立っていた。
顔は見えないが手足はスラッと長く、仮面から見える目は優しそうな目をしていた。
「あ…いや…人違いです。すいません。」
「いえ…」
美優は会場をあとにした。
「美優ってまさか…美優なのか?あの格好…どうしてここに…」
男性はポツリと言いながら飲み物を飲み干した。
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