第67話 これがトリプルクラス。

永遠緑花の都エターナルグリーンシティを出てエルフの国をひたすら南下。俺たちは正統アウギュスト帝国の領地へと入り込んでいた


「あなた……周囲に人の気配が……」


ママさんは狩人の素質があるのか、俺よりよほど気配に敏感。


「用心してくれ。ママさんエルちゃんは俺の後ろに」


俺の背中に周り、そっと裾を握るエルちゃん。


「止まれ! これより先は正統アウギュスト帝国、フックス男爵家の領地だ」

「我らはフックス騎士団。領地の警備が任務である」


俺たちの前に姿を見せたのは、正統アウギュスト帝国。フックス騎士団の兵士が6人。どうやら領地を警戒しているようである。


「怪しい者ではない。俺はシューゾウ・モーリ。ダミアン男爵領、ダミアン村の村人で村へ帰るところだ」


俺の言葉に兵士たちは、後ろのママさんエルちゃんを指し示す。


「後ろの2人は?」


「俺の愛人と連れ子だ」


現在、ママさんエルちゃん共にフードを被っている。


正統帝国でエルフ狩りがあると話にあったのだから必須の装備。長い耳を隠すにも美貌を隠すにも役立ち、外見だけでエルフとバレルことはない。


「たかが村人が愛人だと?」

「その2人、怪しいな。フードを脱げ」


別に正統帝国とエルフの国は敵対しているわけではない。正統帝国の国内には、少数ながらエルフも住んでいると学校で習っている。


俺が用心するべきはエルフ狩り。

騎士団を相手に隠す必要もないわけで、俺は2人に合図してフードを脱いでもらう。


「ほう! エルフ。しかも子供ではないか!」

「おほ! これは当たりですな」

「うむ。今日はついておるわい」


エルフの姿を認めた途端、兵士たちの目の色が変わる。


「エルフが我がフックス領の住民を襲っていると目撃がある」

「すでに住人に多数の負傷者が出ておるのだ」

「その2人。服を脱がして詳しく調べさせてもらおう」


そう言ってママさんエルちゃんに近寄ろうとする兵士たち。

俺はその目の色をよく知っている。


「フックス騎士団の方々。それ以上は、ご遠慮いただきたい」


近寄ろうとする兵士たち。俺は右手を前に制止する。


「なんだと!」

「貴様! 歯向かうか!」

「我らは騎士団であるぞ!」


エルちゃんを連れて神聖教和国を歩く際、浴びる程に見た目。兵士たちの目は、己の性欲のままにエルフを物にしようとする目であった。


「言ったはずだ。俺の愛人と連れ子だと。2人の潔白は俺が保証する」


突き出す右手を眼前に。

ストレージを飛び出たユーカリの剣を握り取り、俺は眼前へと構える。


「たかが村人風情が。保証するだと?」

「馬鹿も休み休み言え! 何の保証にもならんわ!」

「もういい。おい。エルフをひっ捕えろ! 男は殺しても構わん」


相手は自国の騎士団。穏便に済ませたかったが、やむを得ない。


「公務執行妨害スラッシュ!」


ズバーン


「騒乱スラッシュ!」


ズバーン


「器物損壊スラッシュ!」


ズバーン


たかがCランクアーツのスラッシュとはいえ、俺のLVは42にして、振るう得物はミスリル鉱石で作られたユーカリの剣。


一介の騎士団。一介の兵士が太刀打ちできるはずもない。


「なっ! き、貴様あ! 騎士団に手をかけるかあ!」


かけてはいない。さすがに自国の兵士を殺すわけにもいかないため、峰打ち。剣の平で打ち倒しただけであって、3人は気絶しているにすぎない。


「善良なる村人に対して、先にあらぬ疑いをかけたのは貴公らではないか?」


すでに3人が地に伏せ、残る兵士は3人。


「貴様! 貴様あ! ダミアン村と言ったか? 問題だぞ! 大問題だ! フックス男爵閣下から陛下に報告していただく! 貴様だけではないぞ! 貴様の家族も、領主も全員が死刑だ! 覚悟しておけ!」


それは困る。家族はもちろん、領主のダミアン男爵からは剣と盾をいただいた恩がある。ドロテお嬢様には、出征の前に思い出までいただいたのだ。


「今さらブルっても遅いわ!」

「だが、その女と娘を差し出せば考えてやらんこともない」

「ほれ。おなごども、ちこう寄れ」


連帯責任。家族や恩人に被害が及ぶとあっては、これ以上、兵士を峰打ちするわけにもいかない。


「証拠隠滅スラッシュ!」


ズバーン


「証人抹殺スラッシュ!」


ズバーン


「完全犯罪スラッシュ!」


ズバーン


死人に口なし。今回はきちんと剣の刃を立てている。


これで領主に報告されることもなくなった。

後は気絶する3人に止めを刺した上で、ストレージに収納。完全犯罪の成立により俺は無罪放免となったのである。


「うふ。あなた。立派です」

「無罪なのかなあ? と疑問に思うのですが、人間の国のことには口出ししないエルちゃんなのです」


しかし、フックス男爵家か……

問答無用でエルフを捕えようとするとは、女王の言っていたエルフ狩りと関連があるかもしれない。


ダミアン村に帰った後、領主に聞いてみるとしよう。


それはそうと、先程の止めにより俺のLVは43へと上昇した。


-------------

名前:シューゾウ・モーリ(17歳)

LV:43(↑ 1UP)


クラス   :修理工

      :リペア (S)成長限界

      :ストレージ(S)成長限界

      :デストラクション(A)(↑1ランクアップ)


EXクラス :九死一生

      :火事場の馬鹿力(S)成長限界

      :消費成長   (S)成長限界

      :自動回復   (S)成長限界


EXクラス :エルフ特性


スキル   :剣術(A)(↑1ランクアップ)

      :盾術(A)(↑1ランクアップ)

      :槌術(A)(↑1ランクアップ)

      :採掘(A)(↑1ランクアップ)

      :投擲(B)


HP  :2万264  (↑ 24UP)

MP  :19万5045(↑ 45UP)



攻撃  :450(↑ 10 UP)

防御  :665(↑ 15 UP)

敏捷  :450(↑ 10 UP)


魔法攻撃:493(↑ 11 UP)

魔法防御:632(↑ 14 UP)


魔法:水魔法(C)(↑1ランクアップ)

  :火魔法(C)(↑1ランクアップ)

  :風魔法(C)(↑1ランクアップ)

  :土魔法(C)(↑1ランクアップ)

-------------


これまで成長限界に引っかかっていたスキルと魔法。熟練度自体はカンストしていたようで、それぞれ1回使うだけでランクアップしていた。


さらにステータスの上昇にエルフ特性が追加されたことで、攻撃力については修理工で+2、九死一生で+4、エルフ特性で+4。1LVのアップで合計10の上昇。


他のステータスについても同様に破格の上昇率。

デメリットであるHP減少については、適当に自傷を繰り返すことで伸ばせるため、何の問題もない。


これが三重職業トリプルクラス

エルフ特性を手に入れた俺は、正真正銘、人外の強さを手に入れたわけだ。


しかし……せっかくのお披露目の場が自国の騎士団相手とは……誰にも話すわけにもいかず悲しいものである。

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