第8話 俺は将来、冒険者を目指すのだから剣術は必須

自宅に帰り着き昼ご飯の後、俺とカルフェは庭に出ていた。


「カルフェも8歳だし、ちょっとおにいちゃんと剣の練習するか?」


「お!? おー!」


木の棒を手に大はしゃぎのカルフェに対して、俺も木の棒を手に取り構える。


スキルには訓練することで後天的に習得できるものがある。

【剣術】スキルもその1つで、長年に渡り剣を振ることで習得できるという。


俺は将来、冒険者を目指すのだから剣術は必須。

イザーク兄さんから指導を受ける約束はしているが、その前に少し自分で練習してみることにする。


カルフェにとっても身体を鍛える良い機会。

将来どのようなクラスとなるかは分からないが、剣術の練習をして損はないはずだ。


「よし。カルフェ。打ち込んでこい」


「おー!」


カルフェが打ち込む木の棒に対して、俺も木の棒で受け止める。


カーン


10歳と8歳。この年頃での2歳差は圧倒的である。


カーン カーン カーン


必死に打ち込むカルフェの打撃を俺はなんなく受け止めるが──


カーン ボキッ


しばらく打ち合ったところで、俺が手にする木の棒はあっけなく折れていた。

適当に拾った木の棒であるため仕方ない。


「カルフェ。ちょっと待ってくれ」


ボカッ ボカッ ボカッ


痛い。


「ちょっ! 待って! カルフェ。おにいちゃんの棒が折れたからタイムを頼む」


「お?」


しばらく俺を殴ったところで、はじめて気づいたとばかりカルフェは打ち込みを止めていた。


木の棒が折れ抵抗の出来ないおにちゃんを、ここまでボコボコにするとは……

我が妹ながら、なかなかの逸材と言わざるを得ない。将来が楽しみである。


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HP  :20/29 → 30


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「いや……カルフェ。なかなか良い打ち込みだったぞ」


相手が8歳児とはいえ、こちらもたかが10歳児。

けっこうHPが減っている。まあ、その分最大HPも上がったから良いのだが。


「おー! もっと打ち込む」


「いや! ちょっと待った。先に折れた木の棒を修理させてほしい」


さすがにこれ以上にボコボコにされたのでは、おにいちゃんが死にかねない。


俺は地面から折れた木の棒を拾い上げると、手元の木の棒に近づける。


「リペア」


折れた木の棒は見事に元通り。

リペアのランクがEとなり、木材を修理できるようになったのだ。

傷んでいるだろうカルフェの木の棒も修理する。


「よし。それじゃ再開だ。かかってこい」


「おー!」


再び8歳児とは思えない勢いでカルフェが打ち込んできた。


カーン カーン カーン


ふと思ったのだが……このままでは再び木の棒は折れ、俺は先ほど同様ボコボコにされてしまうのではないだろうか?


「リペア」


俺はカルフェと打ち合いながら、手に持つ木の棒にリペアを唱える。


ひび割れそうであった木の棒が光に包まれ、瞬時に修理されていく。


よし。これならいくらカルフェが打ち込もうが木の棒が折れることはない。

剣術を練習しながら、リペアの熟練度も稼げるというわけだ。


「おにいの木の棒。光ってる。かっこいい」


カルフェの指摘に手元を見れば、俺が手に持つ木の棒は蛍光灯のように白く光っていた。


むう……なんだか分からんが、確かに格好良い。


カーン


白く発光する木の棒でカルフェの打ち込みを受け止める。

瞬間。受け止めて減ったはずの木の棒の耐久が、瞬時に回復する。


リペアが自動発動したのか?


過剰にリペアを使用したため、行き場を失ったリペアが白光となって木の棒にまとわりついていたのだ。


リペアを使用しながら武器を振るうのであれば、その武器は決して壊れない。

不壊の武器となるわけだ。


その後もしばらくカルフェと剣術に打ち込んだところ、俺のLVがアップしていた。

生産系クラスは生産スキルを使えば経験を得られるとはいえ、随分早いLVアップ。


これは俺のMPが異常に多いからこそ出来る芸当。

通常の修理工であればLV2におけるMPは30程度。これは修理素材を用意した上で、リペアを3回使う程度のMPでしかない。それに比べて俺のMPは1000を超えるのだから比較にもならない。



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LV:2 → 3


HP  :20/30 → 48(+3+15)

MP  :300/1058 → 1073(+10+5)


攻撃  :16 → 22(+2+4)

防御  :21 → 32(+2+9)

敏捷  :15 → 20(+2+3)


魔法攻撃:16 → 22(+3+3)

魔法防御:20 → 30(+3+7)


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ふー。剣の練習をするだけでLV上げとスキル上げにMP上げ。

さらにはカルフェに殴られてHPアップと良いことづくめではないか。


水魔法でコップに水を入れると、汗を流し全身で息をするカルフェに手渡してやる。


「ごくごく。おにいの水おいしい」


そうだろうそうだろう。

水魔法はDランクまで上げたおかげで、少し冷たい水を出せるようになっている。


「カルフェも水を出す。おにいに飲ませる」


「駄目。魔法は10歳でクラス取得してからだぞ」


いくらカルフェが可愛いからといって、いや、可愛いからこそ無理はさせられない。

下手に魔法を使って気絶、脳に悪影響が残っては大変である。

俺は毎日のように気絶しているが、そういうクラスのため特別なのである。


「でもカルフェも水を出せる。おにい飲む?」


……それは水ではない。が、カルフェの水は温かった。

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