第99話 エルフの少女
「ここは……?」
目覚めた
「起きたか……」
夜は魔物の来襲に備えて交代で起きているようにしているのだが保護した
「ッ……!?」
少女は俺の声に身構えた。
「安心しろ、敵意は無い」
例え魔族に味方するものであったとしても今は俺たちの保護下である以上、明確な敵とは少し違う。
「どうして私たちを保護してくれたのですか……?」
少女は戸惑いの目で俺を見つめた。
「助けられる命があるのに見捨てるのは寝覚めが悪い、とは言う気は無い。情報を聞き出すためだ」
どうせ、あとからこちらの魂胆は見透かされるのだからいっその事、明かしてしまおう。
「やっぱり……魔族に味方する私たちが憎いですか……?」
「それはお互い様なんじゃないのか?それに俺からすれば種族なんてどうでもいい。邪魔する奴は片付けるだけだしな」
エステルと約束した優しい世界というものには勿論、魔族だって含まれている。
おまけに俺はこの世界の住人ではない以上、魔族を潜在的に忌み嫌うこの世界の人族とは考えも価値観も違う。
「変わっているのですね……」
そう言うと少女は居住まいを正した。
「私はフィリア、この子は妹のメルクーリヤ。保護して頂かなければ、今頃は魔物に食われていたでしょう。そのお礼に私の知る限りのことはお話します」
少女は頭を下げた。
「頭を上げてくれ。それならまず最初に気になったことがあるから、それを教えてくれ」
もっとも気になったのは人族と魔族の争いに関わってこなかった
「お前たち
そう尋ねるとフィリアは俯いた。
もしかして訊いたらマズイことだったか……?
「私たち
しばらくの間の後で、フィリアは語り出した。
「万を超える魔物と戦っても私たちに勝機はない。それが当時の長老会議の出した結論でした。私たちには魔族に降伏する以外に道は無かったんです!!」
きっと忸怩たる思い、というのが生温く聞こえる程の思いをしてきたのだろう。
「それから私たちは、前線へと駆り出されました。水晶球を持たされ、前線の映像を魔王城へと送るという任務を与えられて……。その過程で多くの同胞が命を落としてきました。人族と魔族との戦闘が激化すればするほど、
そしてフィリア達もまた駆り出されたということか。
少女を駆り出すほどとは、余程の事態なのだろう。
「貴方たちはテオドラの軍勢を破るほどに強い。どうかその力で私たち
フィリアは泣きそうな目でそう訴えかけてきた。
「……」
だが俺にはその場で答えを出すことは出来ない。
「無理ですよね……。我儘を言ってしまってごめんなさい……」
長い耳が元気なく下へと垂れ下がった。
「いや……仲間に訊くまでは答えは出せないだけだ」
エリスたちの悲願の邪魔となるなら俺は反対するつもりだが、きっと彼女達のことだからきっと答えは―――――。
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