第96話 明らかになる実体
「随分と遅い登場だな」
予想以上にスケルトンとトロールの犠牲が多くて慌てて出てきたというところだろうか……。
「我に見合う実力であるかを見定めていただけだ」
横柄な物言いでテオドラは、俺の予測を否定した。
「で、お眼鏡に適ったから出てきたってワケ?」
エリスはそんなテオドラの言葉を鼻で笑った。
するとテオドラはニヤリと口角を吊り上げた。
「それは分からんな。このスケルトン兵たちの出どころを教えに来ただけかもしれない」
テオドラの言葉にヒルデガルトは剣の柄を強く握りしめ、エリスはフォルセティに莫大な魔力を纏わせた。
「とくにこの三体が優秀でな」
その三体の纏う甲冑はの周囲のスケルトンちとは異なるもので、より洗練された造りをしていた。
俺にわかるのはそれくらいの差だったが、エリスはフォルセティに纏わせていた魔力を躊躇いなく放った。
「尖鋭なる穂先は万物をも貫く、
魔力で構築された槍が魔法陣から射出された。
テオドラは、それを軽い身のこなしで避けてみせた。
「お〜怖い怖い。地雷を踏み抜いてしまったか?」
エリスの予測はどうやら計らずも当たってしまったらしかった。
「なぜ今のを避けれるのよ!?」
エリスの攻撃魔法は確かに避けることが困難な攻撃に見えた。
だが事実としてテオドラはそれを避けたのだ。
つまりは時間に干渉していると言える。
例えば俺が使えるのは古代魔法の【
魔法を行使する人間の意思に従い時間を操作できる魔法で、自分以外の時間を遅くしたり早めたりすることが出来る。
「避けれるから避けた、それだけの話だ」
エリスの問いかけに、仕返しとばかりにテオドラは鼻で笑うと取り合うことはしなかった。
「エリス、あれは時間操作の魔法だ。お前の行使した攻撃魔法の時間を遅めることで回避を可能にしている。
「だったら私たちにも遅く見えるんじゃないの!?」
エリスの疑問はもっともで、普通に考えれば第三者にも速度が遅くなって見えるはずなのだ。
ところがこの魔法は、術者が選んだ対象にのみ作用する性質があるのだろう、テオドラは俺たちの視界までは対象にしていないのだ。
「あれはおそらくアイツの選んだ対象の時間のみを操作出来る魔法だ」
「ということは私たちの視界はそれに含まれていないということ!?」
そうだ、と言おうとした俺の代わりに答えたのはテオドラだ。
「よくわかったな。だが分かったところでこの魔法が繰り出す攻撃は避けれまいッ!!」
テオドラは、握った剣に魔力を纏わせた。
「自身の動きと自身の剣を振る時間を操作し、目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出す、そんなところか?」
攻守共に担える魔法、それが時間操作の魔法だ。
「見破ったところで今更出来る事なとあるまい」
したり顔でテオドラはそう言い放つと魔力を纏わせた魔杖代わりの剣を振り下ろしたのだった―――――。
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