第53話 新たなる影
「Graaaa!」
「なんつー力だ!」
耳を劈くほどの咆哮をその身に受けて態勢を崩さざるを得なかった。
「チッ……【
吹っ飛ばされたがどうにか態勢を建て直すと今度は咆哮から身を庇うよう不可侵の壁を展開させた。
飛行魔法【
魔法の並列行使では、擬似的な魔力回路を構築する必要があり、それ故に魔力の消費は著しく増えるのだった。
「Graaa!」
再びの咆哮、しかし今度はそれだけではなかった。
ドラゴンの口の中は赤く輝いていた。
それは
「来るぞっ!」
ヒルデガルトも声の限り叫んで教えてくれる。
範囲攻撃にも近い
真っ向からの魔力勝負を受けざるを得ないらしい。
俺は【
「来いよ、トカゲ野郎」
俺の言葉が届いたか否かは分からないが、ドラゴンは物凄い圧とともに暴力じみた火炎を吐き出した。
「なんっだ、これ!?」
最初の威力が一番高いのかと思えば全然そんなことはなく、むしろ威力は上昇し続けている。
「我ニ対シテノ侮辱、許セヌ!」
「ドラゴンは人の言葉も喋るのか?」
おどろおどろしい声でドラゴンは
さしずめ侮辱で文字通り火がついた、そんなところだろう。
「我ハ全知全能ノ種族ナリ」
俺を見つめるドラゴンをお返しとばかりに見返すと奇妙なものが目に映った。
ドラゴンの頭に魔法陣のようなものが刻まれているのだ。
膠着したことによって出来た時間を使って俺はある質問をエステルの知識へと投げかけることにした。
なぁエステル、ドラゴンの頭にある魔法陣はなんだ?
エステルの知識に問いかけるが答えはなかった。
訊き方が悪かったか……。
エステルは既に死んでいて俺の中にあるのはその魔力と魔力容量、そして知識だけだ。
視覚を同調させてるわけではないし意思を持っているわけでもない。
なので質問の内容を変えた。
龍を使役もしくは操る魔法は存在するか?
ドラゴンは高潔なる存在、この世界の常識のとおりなのなら魔族に靡くような真似はしないはず。
ならば操られているのではないか?という直感的な仮説に基づいての質問。
はたして視界に一文字目が刻まれた。
†ドラゴン種は、主に次の三つの魔法により操ることが可能である。
・使役魔法
・隷属魔法
・洗脳魔法
ただし最強種の使役には膨大な魔力を必要とする†
出てきた答えに道程の過酷さを実感させられた。
つまりはこのドラゴンを使役するほどの魔族がいて、それはおそらくシュヴェリーン公国領の奪還において敵になるだろうということ。
「何処までもこの世界ってのは
ドラゴンを倒すことは、ドラゴンを使役する魔族との間に想定される戦闘の試金石となる。
そうと決まれば、やはりドラゴンは此処で倒すべき相手だ。
残りの魔力量は七割程度。
魔力が枯渇する前にこのデカブツをここで
「仕留める!!」
経験したことの無い魔力の消費に体が軋むように悲鳴を上げるのを感じたが俺は、ドラゴンの
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