第45話 無力な正義感
「天から穿たれるは無情の百雷、
襲いかかる無数の魔物に対して『
たちどころに数匹のゴブリンが、攻撃魔法をもろに受けて屍へと変わった。
「神崎、防御魔法を頼む!前衛職は防御魔法の内側で待機してくれ!」
リーダーシップをとる『
「願わくばその御力をもって我らを守り給え、
クラスメイト達の前面を覆うように構築される光の壁。
「さすがは勇者と言ったところね」
エリスは興味深そうにその光景を見つめていた。
統率の取れた動きは、これまでの訓練で培ってきたものなのだろう。
うちのパーティは、個々が自由に戦闘している感じなのだが、
「あの魔法は凄いのか?」
古代魔法を除いてはさっぱり魔法知識がないため俺は、エリスに訊いた。
「あの範囲をカバー出来るんだから、それひなりに実力はあるはずよ」
そうか、詩織は頑張ったんだな……。
幼馴染の活躍に思わず頬が緩む。
「でも『
どうやらシュヴェリーンの家に仕える剣の家の娘であるヒルデガルトに言わせれば、前衛職はまだまだらしい。
「そうみたいだな」
ヒルデガルトやコルネリアは、敵中に単身で突入し踊るように敵を捌いていくが、勇者パーティの前衛職は基本的に一対一の戦闘を展開させていた。
「『
三十人程の大規模なパーティである勇者達に襲いかかる魔物はおよそその十倍、詩織の防御魔法が優秀でも壊滅は時間の問題だろうことは火を見るより明らかだ。
「ミノタウロスが出やがった」
巨大かつ高い生命力を持つ魔物であるミノタウロスが防御魔法に戦斧で物理攻撃を仕掛ける。
対魔耐性がある魔法だとしても対物耐性はそれほどでもないからか、ミノタウロスの攻撃で魔法にヒビが入った。
「願わくばその御力をもって我らを守り給え、
詩織が再詠唱による修復を試みるが前衛のゴブリンに続くミノタウロスの数は数十体はくだらない。
時間とともに威力を増していくミノタウロスの攻撃に対して、それは魔力の消費でしか無かった。
◆❖◇◇❖◆
まるで、通用してない……!
防御魔法は容易く破られていた。
今まで想像だにしなかった敗北の光景。
己の実力を過信した私達を襲う光景は、信じたくはないけど現実だった。
「みんな、私の魔法じゃ守りきれない!転移魔法の
残存魔力でいっても
できることは最低限の時間稼ぎのみ。
「ダメだ、俺達は勇者なんだぞ!?」
至極真面目な顔でそんなことを叫ぶ天童くん。
実力を伴わない正義感が自分たちの身を滅ぼそうとしてることにどうして気付けないのだろうか。
「あの数のミノタウロスに勝てると思うの!?」
つい先日、ようやくみんなで倒したのがミノタウロス一体。
高い生命力は非常に厄介で、いくら攻撃を加えてもその動きは衰えを知らない。
そんなミノタウロスが目の前には軽く数十体、勝てる見込みは万に一つもない。
あぁ神様、本当に神様がいるのだとしたら何故助けてくれないのですか……?
私は天を呪った。
その瞬間――――私の体に何かが迸った。
「今のは何……?」
自分でも分かるおぞましいほどに強大な力。
その波動はすぐになりを潜めた。
それに胸を撫で下ろすと沸き上がるのは、寂寥感だった。
「ごめんね春人くん……もう会えそうにないや」
心の何処かで生存を願う幼馴染。
「願わくばその御力をもって我らを守り給え、
最後に私に出来る悪足掻き。
「逃げて!」
あらん限りの声でクラスメイト達に私は叫んだ。
「願わくばその御力をもって我らを守り給え、
神の御力に縋る希望の魔法は、音を立てて砕け散る。
やっぱりダメかぁ……。
何処かわかっていた結末に私は目を閉じた。
死を覚悟して目をつぶった。
その目蓋に恐ろしい程の光が溢れた。
「奇跡……?」
恐る恐る開けた目に映ったのは、私たちの護衛に就いた四人の冒険者たちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます