第41話 新たな武具

 「威力を試すいい機会だな」


 俺とエリスは魔杖を、ヒルデガルトは剣をコルネリアは鉄爪アイアンクローをそれぞれケルテンの国庫から頂戴してきた。

 俺の魔杖は名をイングナ・フレイ、エリスのはフォルセティというらしく、人を選ぶ魔杖なのだと創造神エステルの知識が教えてくれた。

 ちなみにヒルデガルトの剣はミスリル製の業物で魔力を帯びた魔剣だった。

 剣に内包された魔力と刻まれた重力魔法の魔法陣によりミスリルの重さは軽減されている。

 さらには魔剣と言うだけあって、切断したものに再生不可能の効果をもたらす。

 コルネリアの鉄爪アイアンクローは、アダマンタイト製でこちらも術式が組み込まれており軽量になっていた。

 それでいて使用者以外の者が触れると、触れている間は生命力を奪うという効果があった。

 もちろん国庫を預かる人間の立ち会いの元にこれらを選んだのだが彼らはこれらの武具の持つ特性を知らなかった。


 「本番前に慣れておかないとね!」

 「使用感が気になるところだな」


 エリスはフォルセティを握りヒルデガルトは魔剣を鞘から抜いた。


 「よいしょ、よいしょ……これでよしっ!」


 コルネリアは両の手に鉄爪アイアンクローを装着した。


 「さて、開始の号砲を鳴らそうか!【獄牙制滅スプレシオ】!」


 消費する魔力はそのままに、今までの魔法陣の二倍近い魔法陣が浮かび上がった。


 「これがイングナ・フレイの実力なのか……!?」


 これまでよりも勢いを増した弾幕が迫り来る無数の魔物達を襲った。


 「反則すぎるわね……でも今度は私の番よ!研ぎ澄まされた力は処断の戦鎚、撃痕マイロナイト!」


 キェルケも使っていた攻撃魔法。

 だがキェルケのそれとは比べ物にならなかった。

 フォルセティを使ってエリスが放った攻撃魔法は、一定範囲の魔物を一瞬で消滅させてみせた。

 眩い光の塊が現れると魔物達目掛けて落下し、直下にいた魔物達が押し潰したのだった。


 「これが私の魔法なの?」

 

 エリスは驚きを隠しきれない様子で魔杖を見つめた。


 「次は私達の出番のようだな、行くぞコルネリア!」 

 「はいなのです!」


 ヒルデガルトとコルネリアがそれぞれの得物を構えて魔物の群れへと突貫していく。

 ヒルデガルトが魔剣を一閃すればたちどころに周囲の魔物が倒れ伏す。

 コルネリアの鉄爪アイアンクローで一薙ぎはミノタウロスをも一瞬で絶命させた。


 「オーガもミノタウロスも形無しだな!」


 オーガの持つ再生能力はヒルデガルトの魔剣の効果により封じられ、ミノタウロスの高い生命力はコルネリアの鉄爪アイアンクローに吸われていく。

 二人は魔物の大群に押されるどころか逆に押し返し始めていた。

 百人力や一騎万軍のような言葉は、きっとこういうことを言うのだろう。

 そう思わせられるほどに圧倒的だった。


 「魔力の消費は大丈夫なのか?」


 いつの間にか十数分は経過していただろうか、レチュギア迷宮で魔力切れを起こしていた戦闘時間はとうに超えていた。

 

 「なんかこの魔杖、魔力の消費量抑えられるみたいなで、まだ余裕あるわ」


 手を休めずエリスは魔法を叩き込み続ける。

 継戦能力は、著しく向上していると言えた。


 「なぁハルト、魔物達が逃げ出して行くぞ!」


 ヒルデガルトに言われて辺りを見渡して俺も気付いた。

 あれほどいた魔物達は潮の引くように、逃げ出していた。

 足元には屍山血河、ヒルデガルトもコルネリアも魔物の返り血に染まっていた。

 

 「これならシュヴェリーン公国領土の奪還も夢じゃないわね!」


 その光景を見つめたエリスは期待感を滲ませた表情で言ったのだった。

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