第38話 闘争術
「おい、あれって暴剣のダルドじゃないか!?」
「あの男、とんでもないのに目をつけられちったな」
エリス達が通りの通行を遮断しているはずだったがいつの間にやらギャラリーが溢れていた。
キェルケの時も勝手に賭け事とかしてたしな……この世界の住人はきっとそういう気質なのだろう。
ちなみにキェルケの賭けはエリスが全額俺に賭けてぼろ儲けけしていた。
きっとコルネリアの衣服もそこから資金を捻出してのことなのだろう。
「来ねぇのか?」
頭目の男、ダルドは大剣の
「『
「それぐらいは弁えているらしいな」
道理を知らないレベルだと思われているのか……。
「舐めてかかることはオススメしないぞ?」
忠告しておいた。
どう見てもケルベロスより硬い風には見えない彼らを魔法で貫くのは俺からすれば至極容易なことだ。
エステルの目指す優しい世界に此奴らが必要かどうかはさておき、俺の想像する優しい世界に争いを好む連中は不要だ。
「いいことを教えてやろう。俺のこの大剣は決闘で多くの血を吸っている。手入れはしてるはずだが染みが残っちまった。おかげでついた通り名は暴剣、この意味わかるだろ?」
強さを誇示して相手の動揺を誘う手合いか?或いはただ単に実力をひけらかしたいだけの二流か……どちらにせよ痛い目を見てもらうという事実は確定しているのだから関係は無いか。
「すぐに暴力に訴えかける剣だってか?」
ダルドが仮にも前者だとしたら、そんな言葉を返した俺も前者だ。
「貴様ァッ!?」
スイッチを押しちゃったか?
相手の三人はお顔真っ赤だ。
さしずめ怒り怒髪天を衝くといったところか?
「容赦はいらねぇ、二度と喋れないようにしちまうぞ!」
「「おう!」」
ダルドを含む二人が剣をもう一人が槍を構え直すと駆け出した。
「【
親の顔より見た不可侵の壁は、見事にその役割を果たした。
「剣が届かない!?」
「なぜだ!?」
「長ったらしい詠唱が聞こえなかったぞ!?」
ある程度なら物理攻撃も魔法攻撃も無効化できる文字通りの不可侵の壁。
「こちらから行かせて貰うぞ?【
周囲の家屋に影響を与えないための精密な攻撃。
「「縮地!」」
一人を除いて【
咄嗟に逃れられなかった一人は、もろに鎧に【
だが【
「今のを避けるんだな」
彼らが咄嗟に叫んだ言葉が原因なのだろうか。
「それは一部の職業のみが使える闘争術というものだ。主に近接戦を戦う者たちが行使する」
ヒルデガルトが丁寧に教えてくれた。
「アレを使うぞ!!」
「おう!!」
ダルドたちは何やら言葉を交わした。
さっきのとは異なる闘争術を使うのだろうか?
そんなことを考えていると
「「
二人は叫んだ。
やはり闘争術か。
「くたばれぇぇっ!」
ダルドが叫びながら間合いを詰める。
キィィィン――――
ダルドの大剣がもう一人の槍が不可侵の壁へとぶつかり無機質な音が響いた。
なるほど、闘争術を用いてより鋭さを増した打突というわけか。
「なぜ……貫けないッ!?」
信じ難いものを見た、そんな表情でダルドは壁の向こうの俺を見つめた。
「舐めてかかることはオススメしない、そう言っただろう?【
ケルベロス討伐に使用した魔法で勝負は終わりだ。
もちろん威力は抑えてあるので、かなり遠くまで相手を突き飛ばすくらいだろう。
「ぬぁっ!?」
「ゴフッ!!」
見本のような見事な吹き飛びっぷりだ。
あっという間にダルド達は視界の外へと消えていった。
「勝負あったな」
俺は、攻撃を避けきれず壁際に蹲るダルドの仲間の一人のそばに寄って優しく言った。
「その命、次は貰うぞ?」
流石に街中で命を奪うのは気が引けるというもの。
それに加えて実力者らしいダルドを倒した噂が広がればきっと俺たちに手を出す者はいなくなるだろうという打算の上での決着だ。
それにしても闘争術か……手練が使えばかなり厄介な代物だな。
古代魔法が使えるとはいえ俺は体の能力で言えば一般人のそれ、認識範囲外からの不意打ちなどに闘争術を使われればそこにあるのは死だろう。
俺はこの世界への認識を改めた、
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