第37話 三人の客
「あんた達、お偉方が迎えに来てるよっ!」
宿に泊まって何日かたったある日のこと、受付にいた老婆の素っ頓狂な声で俺の二度寝は妨げられた。
「お偉いさんというのは……?」
眠い目をこすりながらコルネリアを連れて一階へと降りる。
すると甲冑姿の男数人が、階段の下で待っていた。
「お前達が冥界の番犬殺しだな?」
三人の男のうちとりわけ豪奢な鎧を身につけた男が横柄な態度で俺達を睨めつけた。
ん?冥界の番犬……?
もしかしてケルベロスのことか?
なるほど、そうだとするのならケルベロスを討伐した話はもう伝わっているのか……。
どういうルートでケルテンへ入国したことやこの宿に泊まっていることを知ったかは調べる必要があるかもしれないな。
「こんな青っちょろいのとネーチャン達が番犬殺しとか本当ですかい?」
三人は完全に俺達を舐め腐った態度だった。
小馬鹿にしたような目で見られるのは腹立たしいが平穏無事に生きていくためには要らざる揉め事は起こすべきではないのだろう。
「
どうせ信じて貰えそうにないなら何を言ったところで同じだ。
「ならようお前達、表出ろや」
頭目の男が口角を吊り上げて言った。
なかなか何事もなく……とはいかないらしい。
「だそうだ、店の前を借りてもいいか?」
俺は、端でこちらの様子を見ていた老婆に声を掛けた。
「み、店を壊すのはやめとくれよ!?」
なかなか厳しい要求だが飲まなければ、実力すら示せないわけか。
「善処しよう」
老婆にそう言うと俺は男達と共に宿を出た。
「何勝手に決めてるのよ!?」
エリスがそっと耳打ちしてくる。
ヒルデガルトは怪訝な目で、コルネリアは心配そうな表情で俺を見つめた。
「なに、俺一人でどうにかするさ。それよりエリス達は道を行く人に危害が及ばないように迂回させて欲しい」
相手の実力は正直言って分からないが、魔族を倒したという経験が自信を与えてくれている。
「人数は四対三でお前達が有利だ。ハンデをくれてやるよ」
それでも勝てると言いたげな頭目に対して俺は
「そんなハンデは不必要だ。逆に俺からハンデをくれてやるよ。俺の仲間の三人はこの勝負に手出ししない」
正直言って今のエリス達だけでも十分勝てそうな気がするのだ。
「言うじゃぁねぇか!女を守ろうって心意気には褒めてやるが後から泣き言抜かすんじゃねぇぞ?」
「女は俺達が可愛がってやるから心配せず逝きな!」
「ガキは俺の好みじゃい」
三者三様、だが共通しているのはどいつもこいつも俺を殺す気だということだ。
「距離はこんなもんでいいな?」
間隔にして二十メートルほど。
これなら詠唱も間に合いそうだ。
「どうせテメェは死ぬんだ、好きにしろ」
三人の男たちは、それぞれの得物を俺へと向けた。
キェルケのときをふと思い出した。
あれから二ヶ月と少し、俺がどれだけ成長したかを測らせてくれよ――――。
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