第35話 報告
「前回の討伐の報酬ですが、こちらで調査しましたところオーガ及びオーガ・ロード108体の討伐を確認しました。凄い量ですね……」
ギルド職員による報告書を前にギルドの受付嬢は頬を引き攣らせていた。
「大量発生の理由は掴めたのか?」
「それが不明なんです。オーガの発生に関係するようなものは一切ありませんでした」
受付嬢の言葉を聞いたが、俺にとっては不可解な事象には思えなかった。
「またか……」
「また、ということは以前にもあったのですか?」
受付嬢は、羽根ペンとメモ紙を取り出した。
「あんまり声を大にしては言えないので、なるべく他言無用にして貰えないか?」
「なるべく……ですね?」
「なるべくだ」
一般の冒険者に話が伝わってしまえば無駄に騒ぎ出すことは目に見えている。
その辺をわきまえているギルドの職員や幹部に留めておけば問題は無いだろうという含みをもたせた。
「この前、突如として魔物が大量発生したことがあってな」
俺がそう切り出すと受付嬢は紙にペンを走らせた。
「おそらく万近くはいたはずだ。それらを倒しきったところで魔族の男が現れ、余興だと言っていた」
魔物の大群を余興だと言ったオーガスタ。
彼が用意したのか或いは誰かが用意したのか。
ともかく今回のオスターヴィッツの古城で大量発生したオーガも天変地異や時間をかけての増殖ではなく何者かが持ち込んだと考えていいだろう。
「つまりは魔族の仕業……ということですか?」
「魔族との戦線も近い、後方を撹乱することが目的だとするのならそれもありうるだろうな」
「他に証拠になりそうなものはありましたか?」
他の証拠か……特には無かった気がするな。
「いや……ないな」
「そうでしたか。有益な情報ありがとうございます!」
受付嬢は比較的大きめの麻袋を取り出した。
「こちら、今回の報酬です。ちなみにあそこに座ってるいるのが魔核を回収して来てくれた冒険者達ですよ!今朝戻ってきたんです」
「そうか、世話になったな」
俺は受付嬢に礼を言って、教えてくれたテーブルに向かった。
一昨日のオスターヴィッツでのオーガ討伐は、気分が晴れないことを理由に魔核などの素材の回収を行わず帰還した。
それらの回収は俺達から依頼を出すことで、依頼を受けた冒険者達の手数料を除いた金額を俺達が受け取ることにしたのだった。
ちなみに討伐したオーガの数はこちらで記憶しているので、依頼を受けた冒険者達が報告の数を少なくして魔核をちょろまかしたりすることが出来ないようにしておいた。
「君達が魔核を回収してきてくれたパーティだな?ありがとう」
依頼を受けてくれた銅等級の冒険者三人組に声をかけた。
「命の危険のない高収入な依頼でしたので俺達の方から感謝したいくらいです!」
蒼い髪の青年が元気よく言った。
「にしても108体ってどうやったら狩れるんだよ……」
青年の連れの一人が呆れ混じりに言った。
俺はその言葉には答えずに彼らのテーブルを去った。
なぜならこの後には予定が入っていたからだ。
「戻ったぞ」
部屋の扉を叩く。
するとすぐに扉が中から開いた。
「おかえりなさい!コルネリアは準備終わったのです!」
いつの間にエリス達が見繕ったのか外行きのワンピースを着たコルネリアが勢いよく飛び出してきた。
俺はそれをそっと受け止める。
「待たせたな。行くか」
今日の予定は、兄妹水入らずの街歩きだ。
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