第33話 オスターヴィッツの古城にて②


 「Graaa!」

 「Graa!」


 城門を突破したところで夥しい数のオーガが、待ち構えていた。

 なるほどさっきの五体は実力を測るためだったというわけか……。


 「ヒルデガルト、流石に俺とエリスも戦闘参加するぞ?」

 「あぁ、頼む!」


 ヒルデガルトは、オーガ達から目を離すことなく言った。


 「お兄ちゃん、今から私は見苦しい姿を見せると思います。でも嫌いにならないで欲しいのです」


 コルネリアは上目遣いで俺に訴えかけた。

 コルネリアの言う見苦しい姿というのがどんな姿かは分からなかったが、それでも日は浅いとはいえ大事な仲間だ。

 だからコルネリアがどんな姿で戦おうとも嫌いになるはずはない。


 「嫌いになるわけが無いだろ?安心しろ」


 真っ直ぐにコルネリアの目を見返す。


 「それなら、安心して戦えるのです!」


 コルネリアは身を翻すと、オーガを見据えた。


 「ヒルデガルトお姉ちゃん、少し時間をくれませんか?」

 「構わない。敵が仕掛けて来たのなら私が時間を稼ごう」


 ヒルデガルトは剣を構えてコルネリアの前に立った。

 コルネリアはペコッと頭を下げると両の手に握り拳を作り言葉を唱えた。


 「牙狼纏がろうてん!!」


 それまでのコルネリアの姿は何処かへ消え去り、溢れんばかりの殺気を身に纏っていた。

 シクラメンを思わせる髪色は、狼の名に相応しい白銀へと変わり目の色もそれまでのアイリスブルーから金色へと変わっていた。

 

 「なんかヤバそうね……」


 エリスは、信じられないものを見たような表情で言った。


 「あぁ、だがあれは俺達の仲間だ。【神盾イージス】」


 俺は万が一に備えてコルネリアやヒルデガルトの身を守るように不可侵の壁を展開した。


 「俺達もやるべきことをやるぞ」

 「そうね!お姉ちゃんだもの!」


 【神盾イージス】を纏った二人に俺達の攻撃は当たらない。

 不可侵の壁が不可侵である所以だ。

 フレンドリーファイアを気にしなくていいのなら、無制限で戦える。

 

 「【獄牙制滅スプレシオ】」


 無数の魔法陣が浮かび上がる。

 流石にオーガ達は異変に気付いたのか、魔法を撃たせまいと接近して来た。


 「近づけさせはせん!」


 ヒルデガルトが剣を繰り出し


 「死ねやァァァァッ!」


 言動までもが変貌したコルネリアは、ダガーを構えてオーガ達へと突貫していく。


 「うるぁぁぁっ!」


 裂帛の気合いと共にコルネリアが目にも見えぬ速さでダガーを振るい、数匹のオーガを屠った。


 「尖鋭なる穂先は万物をも貫く、槍穿バンカーバスタ


 その頃にはエリスも詠唱を終えていた。


 「受け取れオーガ共!」

 「散りなさい!」


 無数の魔法陣から数多の攻撃魔法が放たれる。


 「Gyaaa!?」


 絶命の悲鳴をあげてオーガ達はその体に大穴を穿たれた。

 そんな魔法攻撃の合間を縫うようにコルネリアは駆け、撃ち漏らしたオーガを確殺していく。


 「凄いな……」


 積み上がる屍の山。

 ここから魔核を取り出す光景を想像すると魔法陣に注ぐ魔力を止めてしまいたくなった。


 「はぁぁぁぁっ!」

 

 オーガ達の攻撃の全てを牙狼纏がろうてんによって大幅に引き上げられた運動能力により躱していく。

 だが圧倒的だった俺達は次の瞬間、目を覆いたくなるような光景によって攻撃を止めざるを得なくなったのだった―――――。

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