第30話 不可解なオーガ
翌朝、ギルドに向かうと緊急クエストの受注者募集で賑わっていた。
「オスターヴィッツの古城を住処とするオーガの討伐に参加していただける冒険者を募集します!上位種であるオーガ・ロードの存在も確認されていますので参加条件は銅等級以上の冒険者となります!」
ギルドの受付嬢がよく通る声で募集をかける。
オーガってどんな存在なんだ?
ここはファンタジーな世界ではあるがゲームの世界のようにライフカウントなどある訳ではないから命がかかっている。
となればどんな些細な情報でも欲しいのだ。
早速エルメスの記憶に問いかける。
†凶暴で残忍な性格をもち人の生肉を好んで食べる人型の種族。巨大な体を持つが故に力は強い。特筆すべきはその再生力にある。上位種であるオーガ・ロードは、魔法攻撃を用いる†
巨体で力が強いという点は俺の知るロードと同じだった。
だが再生力というのが一つ気になる点だな。
「どうする?」
幸いにして俺とエリスとヒルデガルトは、等級制限には引っかからない。
ケルベロス討伐の勲功によりマクタリーナの一存で銀等級になっていた。
「受けてみたいわ」
「腕試しにはちょうどいい」
エリスとヒルデガルトの二人はやる気満々。
チラッとコルネリアに目をやると、目を
やりたい……そういうことなのだろう。
「なら受けよう」
俺はコルネリアと手を繋ぎ、エリスとヒルデガルトを連れて受付嬢の元へと行く。
「オーガの依頼、俺達が受けても構わないか?」
冒険者カードを見せながら声をかけた。
◆❖◇◇❖◆
「―――――というわけで突如として現れたのです」
受付嬢の話によれば、最近になってオーガの群れによりオスターヴィッツの古城が占拠されたのだそうだ。
「なぜ突然湧いたのかは分からないのか?」
魔物の少なかった地域への突然の出現など不可解なことこの上ない。
レチュギア迷宮から魔物が湧いて出たときと似た不自然さだった。
「現状不明なのです。調査隊を出そうにも、銅等級が対象となるオーガ相手では、それ以上の等級の方は避けてしまうので……」
聞けばオーガを討伐するのは主に銅等級冒険者の依頼なのだという。
故に調査隊を編成したところで銀等級、金等級といったような冒険者は協力してくれないのだとか……。
「だがその銅等級が討伐出来ないから問題が長引いているのだろう?」
「そうなんです。街道をゆく商隊、とりわけ金品と食料、軍事物資などが狙われているというのもまた不可解な点でして……」
何者かが統率していると考えることが出来そうな話だな。
確実に魔族が絡んでいる、そんな気がした。
「まぁ、行ってみないことには何とも言えないな……」
「何のことですか?」
おっと……声に漏れていたか。
魔族が絡んでいる、などと言えば悪戯に問題を大きくしかねないので口外にするわけにはいかない。
それに確証があるわけでもないので、憶測であるうちに口に出したとすれば無責任極まりないないだろう。
「気にするな。こっちの話だ。やはりその依頼、俺達が受けよう」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
受付嬢は、ぱぁぁぁっと顔を綻ばせながら言った。
そんな受付嬢に見送られながら、地図を貰って俺達はギルドを後にした。
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