第27話 狼少女、コルネリア
「あむあむ、うまっ、うまっ!」
俺の隣でむしゃむしゃと料理を頬張るのは、さっき助けたばかりの獣人の少女。
「そろそろ話を聞かせてくれ」
エリスの【
「ふぅ……満足です」
支払いが怖くなるような量を食べた少女は満足そうな顔で言った。
俺の話、聞いてたか……?
仕方ない、俺の側から気になることを訊いていくとするか。
「名前は?」
少女はおずおずと俺の顔を見つめた。
「は、はいっ!私と名前は戦狼族が族長の娘、コルネリア」
戦狼族って随分と剣呑な名だな。
「ならコルネリア、なんであんな騒ぎになってたんだ?」
見たところコルネリアは一人きりだった。
そして保護したときのコルネリアは無気力な表情を浮かべていたことからも、何かあってあの場にいたのだろう。
「先日、私の一族は突如として魔物の襲撃を受けたのです。そして私の一族は、村は消えました……」
辛いのだろうコルネリアは涙を流した。
「父と母は私に路銀を渡すと、私を逃がしました。そして私は、僅かな路銀を握って行くあてもなく一人で彷徨い歩き、ここまで来たのです。でも、その路銀も尽きてこの二日は野宿で飲まず食わず……勇者一行の隊列の前に出たことにすら気付けませんでした……」
コルネリアは俯きがちにこれまでのことを話してくれた。
「なんだか私達みたいね……」
魔物によって家族と国土を失ったエリスには、コルネリアの心中察するに余りあるのだろう。
「一つお願いがあります!」
涙を拭ってコルネリアは眦を決すると俺を見つめた。
「叶えられることなら聞こう」
お金を少しくれと言うなら勿論、渡すし一晩の宿を貸してくれと言うならお易い御用だ。
「どうか、私を貴方様方の一行に加えて欲しいのです!」
「それは……」
コルネリアの発した言葉は思いもよらないものだった。
俺達は、これからずっと魔族や魔物達との戦闘を、もしかすれば人族、神族とすら戦うこともあるやもしれない。
俺達に付いてくるということは、命を危険に晒すということなのだ。
「……エリス……」
俺はエリスに「どうする?」という問いを込めた視線を送る。
彼女もコルネリアの同道を許すことがどういうことかをわかっているはずだ。
「そうね……」
行くあてもなく困っているコルネリアを助けてあげたい、その気持ちは痛いほどにある。
だがコルネリアのことを思えばこそ、俺達に同道するのは好ましくないことなのだ。
「一つ聞いても良いか?」
重たい沈黙を破ったのはヒルデガルトだった。
「何かいい考えでもあるの?」
エリスの質問には答えずヒルデガルトはコルネリアに尋ねた。
「コルネリア、お前の職業は何だ?」
「私は、『
コルネリアは、おずおずと言うと
なるほど、戦狼族らしいな……。
『
もちろん偶然なのだろうが。
「ハルト、コルネリアは素晴らしい戦力になるだろう」
ヒルデガルトは、満足気な表情で言いきった。
「お願いします……どうか私を連れて行ってください!」
縋るような目で俺を見つめるコルネリア。
「コルネリア、俺からも一つ訊いてもいいか?」
「はいっ!」
「俺達の目的は魔族の支配領域となったシュヴェリーン公国の奪還だ。それを聞いてもなお、俺達についてくると言えるか?」
僅かな表情の変化も漏らすことのないよう、俺はコルネリアの表情に注視した。
容姿だけで判断すればまだ小学校高学年、そんなコルネリアを俺は出来れば連れて行きたくなない。
だがコルネリアの表情は変わらなかった。
「私の気持ちは変わりません。皆様について行きます!」
「命の危険があると知った上でそう判断した理由は何だ?」
これが最後の質問、彼女の人となりを知るための問い。
「私には他に頼る人もいません。そして私は私達一族を皆殺しにした魔物達が憎い!殺して八つ裂きにしても飽きたりないのです!」
コルネリアの目は憎悪に燃えていた。
なるほど、復讐心が理由なわけだ。
復讐心はまずもって裏切ることは少ないだろう。
俺はそう判断した。
「わかった。なら、これからよろしく頼む」
ヒルデガルトの「戦力になる」という言葉が決め手。
俺達はコルネリアを新しい仲間として迎え入れた―――――。
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