第一章 再会
第25話 ケルテンへ
「これで入国出来るか?」
ケルベロスを倒した二日後、俺達はケルテン王国に北の隣国入るために国境へと来ていた。
「アルヴィアーナのギルド長から貰ったやつだが……」
俺はアルヴィアーナを出る前に、マクタリーナから「これを持っていきなさい。私なりの感謝の印です」と紹介状を手渡されていた。
「なっ……マクタリーナ様が!?」
検問で国境警備にあたる警備兵は目を剥いた。
「マクタリーナ様のお知り合いとは知らず、失礼しましたっ!」
警備は米つきバッタの如く頭を下げた。
「い、いや、大丈夫だ」
マクタリーナってそんなに凄い人だったのか……。
そんなことを思いながら国境を抜けた。
「よかったの?」
隣で駒を並べるエリスが名残惜しそうに来た道を見つめた。
「二ヶ月で俺達は成長した。シュヴェリーンの土地を奪還するために必要なのは前進だ」
小耳に挟んだとこによればケルテンでは魔物の出現の度合いが増しているという。
ケルテンの北の隣国はシュヴェリーン公国、つまりはそういうことだった。
「そういうことじゃなくて、みんなの歓待を受けずに去ったことよ」
ケルベロス討伐の功績によりギルドだけに留まらず国を挙げての歓待となるところだったのだ。
「確かに失礼にはあたるだろうな。だが歓待を受ければ俺達の今後の行動における自由が制限されることになる。それは不本意だ」
英雄として祭り上げられ、国に縛られることになるなど本末転倒もいいところだ。
そして人族の側に加担し過ぎるのは俺の目的にも良くない。
目指すは種族を問わない優しい世界なのだから。
「それは……確かにそうね」
「私も歓待は受けるべきでは無いと思う。目指すはシュヴェリーンの奪還なのだから」
エリスもヒルデガルトも納得してくれたか。
歓待を受けれないことはマクタリーナにも話しておいてある。
そのために貰ったのがさっきの書状とケルベロス討伐報酬の大金だった。
「で、目的地はどこだ?」
ヒルデガルトが手網を握る手を休めて訊いてきた。
「とりあえずは公都、クラーゲンフルトだな」
目的は、シュヴェリーン公国に関する情報収集だ。
「そうか」
ヒルデガルトは緊張した面持ちを浮かべた。
◆❖◇◇❖◆
「―――――というわけで、支援要請がケルテン王国から届いております」
イリュリア王宮では、王族を交えての緊急会議が開かれていた。
「魔族連中の積極的攻勢は喫緊の課題だな」
容態が芳しくない国王に変わり会議に参加した第一王子ドゥラキウムは手渡された資料に目を通しながら言った。
「それはそうだが他国に対して優位を取れる材料である勇者達を安易に送ることに私は反対ですわ」
召喚した本人であるオルテリーゼは難色を示した。
「だがな魔族の支配領域は刻一刻と我が国へ迫っているのだ。そんなことでケルテンを見殺しにしてみろ、後から苦しむのは我々だ」
国王である父に変わり政治の場に出るようになったドゥラキウムの意見は、真っ向から妹であるオルテリーゼと対立した。
「それは……」
「今や、魔族との最前線はシュヴェリーンではなくケルテンなのだ。ここは我々の出番だろう?」
ドゥラキウムの正論を前にオルテリーゼは返す言葉がなかった。
「というわけで勇者達のケルテン派遣、異論あるまいな?」
ドゥラキウムは会議の場に集まった面々を一瞥する。
この日、異世界から召喚した勇者パーティのケルテンへの派遣が決定したのだった。
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