第41話 p.8

 Ashアッシュを削り出すことも、綺麗な瓢箪型を作り出すことにも慣れた頃、アーシャから、人一個体分のAsh clockアッシュ・クロックを作る指示が出た。


「僕に出来るでしょうか?」

「出来るかどうかじゃない! やるんだ! じゃなきゃお前は、いつまでもイレギュラーのままだぞ!」


 不安げな僕を、アーシャは厳しく突き放し、追い立てられるように、僕は、とぼとぼと歩き出す。


 不安でいっぱいだったが、降りつもるAshの音を聞いているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。僕を一人前にするために、根気強く教えてくれたアーシャの期待に応えたい。僕は、顔を上げた。


 Ash clockを作る作業は、最適なAshを探す事から始まる。


 僕はアーシャの教えを思い出し、今一番いいと思えるAshを探し、籠一杯になるまで、休む事なくAshを削った。


 それを持ち帰り、確認してもらおうとアーシャへ近寄れば、彼は、プイッと僕から離れて行く。どうやら完全に一人でやれという事らしい。


 僕は一人、黙々と作業をした。沢山のAshを溶かし、練り、大きな瓢箪型を形成。幾度も繰り返してきた作業だが、初めての大きさにやはり苦戦した。完成したAsh clockは、案の定、不恰好だった。


 それなのに、いつの間にかそばに来ていたアーシャは、満足気な声を上げる。


「良いじゃねぇか! 

「カイ?」

「お前の名前だ。この世界では、跡継ぎ候補が一人前になった時に、名前を送る事になっている」

「カイ……僕の名前……」

「イヤか?」


 僕は、勢いよく首を振る。


「ありがとう。名前も、一人前と認めてくれたことも」


 僕がアーシャに向かって頭を下げると、彼は、僕の手をとって顔を上げさせた。


「礼を言うのは、俺の方だ。良いAsh clockをありがとよ」


 アーシャの言葉の意味が分からず、僕がキョトンといている間に、彼は不格好なそれを抱える様にして抱き、飛び切りの笑顔を僕に向けた。


「いいな。自信を持て。カイ! お前は、絶対に良い作り手になる」


 そんな言葉を残し、アーシャの姿は、次第に溶けるように薄くなる。そうかと思えば、Ash clockの中に閉じ込めたAshが色づき始め、彼の姿が消えると同時に、赤く染まったAshが、さらさらキラキラとAsh clockの底に降り始めた。僕は、その光景をただ無心で眺め続けた。


 しばらくして、静かにひとつため息を吐くと、僕は籠を背負い、熊手を手にする。


 僕はカイ。個性的なAsh clockの作り手だ。






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全編、完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

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こんなお仕事、どうかしら ~お仕事アンソロジー~ 田古みゆう @tagomiyuu

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