深淵なる愛の会
「なあ、他のことも流行らせたくないか?」
突然、海星はそんなことを言った。
「なら、『君のものは俺のもの』っていうのはどうかな?」
「それ、もっと詳しく聞きたいな」
俺は得意げに話し始める。
「好きな人の持ち物は、好きな人同然だという考え方。つまり、ほかの人に触られたら、好きな人本人が触られたのと同じ判定になる。だから俺は、寧々の持ち物全てに俺の名前を書いた」
「なるほど! 好きな人の持ち物に自分の名前を書くということか!」
海星はそう言うと、筆箱からマジックを取り出し去っていった。
数日後。
この話は男子にも、女子にも広まり、クラスのモテモテな男女の持ち物はいろんな人の名前で埋め尽くされた。
そして、その持ち物は名前がありすぎて、結局誰のものか分からなくなった。
海星がやってきた。
「すげえな! ここまで流行るなんて!」
「そうだな」
すると、海星が何かを思いついた時の顔をした。
「そうだ! この慣習に名前を付けようぜ!」
「名前?」
「なんたら教会とか、なんたらの会とか…………」
そこで、寧々がやってきた。
「深愛教会とかどう?」
しかし、海星は納得いかないようだ。
「なんか、深みが足りない気がする…………深淵なる愛の会はどう?」
「それいいね! これからもっと、流行らせていこうね!」
寧々は、にっこりと笑った。
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