仲間入り
高校の休み時間、俺はあるものをポケットから取り出した。
誕生日に寧々からもらったプレゼントの半分だ。
残りの半分は、家の鍵のかかる引き出しに入れてある。
「なあ、それ何だ?」
友達の海星が、興味津々で問いかけてきた。
「これは、寧々の唇の皮だよ」
「なんでそんなものを…………」
海星は、おびえた様子だ。
俺はそんなこと気にも留めないまま、話し始める。
「これは寧々が俺のために、身を削ってプレゼントしてくれたものなんだ。底知れない愛と刺激を感じるだろう? お前もきっと、とりこになるよ」
「…………愛と刺激……とりこに……」
海星は、陶酔した表情で空中を見つめる。
「お、俺も、彼女に唇の皮プレゼントしてくる!」
「おう」
海星は唇の皮をむしりながら、猛スピードで走り去った。
「海星も、俺たちに仲間入りだな」
俺は、ぽつりとつぶやいた。
海星が彼女に唇の皮をプレゼントしてからのこと。
クラスでは、男子が好きな女子に唇の皮をプレゼントするという謎の行事が進行していた。
「なあ、めっちゃ流行ってんな」
海星が嬉しそうに俺に話しかけてきた。
「そうだな。みんな、やっと愛と刺激に目覚めたんだ」
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