第84話 繋がる気持ち

 《最終ぅぅぅうラウンドぉぉお!!!》

 「「「おおおぉぉぉぉおお!!!」

 《盛り上がってんねぇ〜!! それじゃ! 最終戦を迎える前に1、2ラウンドのハイライトをご覧いただこう!!》


 進行の合図と同時に先ほどまで二画面に分かれていたモニターだったが、一画面へと生まれ変わって出現した。


 《まずは最初のラウンド! 挑戦者【カラスは巡視者】のリーダー! UMA選手がいきなり魅せてくれたぞ!!》


 俺がテリアン選手の救助狩りしたシーン流れる。

 これもわざとな気がする。この1プレイで俺のプレイ中の性格を見抜かれた……


 《続いて2ラウンド! ここはきっちり王者の存在を魅せてくれました!!》


 いきなり2ラウンド目。そうなんだよ。わざわざ“見返す”試合じゃなかったんだ。

 俺たちがすごいってより、“明らかに”相手のミスって試合だったんだ。


 だからあおりたちの試合に関しては一場面も取り上げられていない。

 勝つべくして勝った試合という印象なのだ。


 《先程は救助狩りされていたテリアン選手の無傷救助!!!! 一ラウンドでのミスを払拭する働きです!!》


 ここな……数秒消える効果を最大限まで使って救助された。明らかに動きが一ラウンドの時と全然違った。


 《そして! マリット選手の骨董商が風船救助を決めました!!!》


 ……急に窓枠を飛び越えて現れたかと思ったら、そのまま横振り一閃……初戦の怒りをぶつけるために使っていた【カメレオン】のカ選手とは全然違う意図のある攻撃。


 んで、これが通電合図となり最終的に1吊り。俺の負けとなった。


 《そしてガラテアを使うカンテン選手は一ラウンドと同様ファーストチェイスであったノーネル選手でしたがきっちり追い切ります》


 ま、まじか。チェイス大得意の乃音がこんな早くダウンとられたんか!?

 なんか見た感じ……読み合いで負けてるな……。1ラウンド目ではそんなことなかったのに……まさか最初のラウンドは研究してたのか……サバイバーのクセや動きを!?


 そうとしか考えられない思い切りの良さ。

 そういや、俺とあおりにあの的確な情報くれたの……カンテン。

 カンテン……君の強さの根源はそこからか……


 《そしてここで! 救助狩りを決めていくんですね〜。その後もダブルダウン!! 一気にハンターの勝ちコースへと入ったことにより、残りの青リンゴ選手は“ハッチ”を目指すようですね》


 こんな絶望的な状況だったのか……。

 確かハッチって動けるサバイバーが一人になったら開く、ゲート以外の脱出方法だよな。

 そこを使えば、絶望的な状況でも1逃げできる可能性ができるんだよな。


 《しかし! ここで“鬼没”!!! 壁を隔てて両者睨み合っていましたが、カンテン選手がその壁を透過!! ダウンを取られてしまい、4吊りです!!》


 マジかよ……ここでの鬼没……【鬼没は御守り】……まさにその通りの展開だな。

 こんなんにどう立ち向かうってんだよ……お前らは。


 「「じゃーんけーん!!……」」


 ハイライトから視線を戻すと、あおりとカンテンがジャンケンをしていた。


 「よし! 俺の勝ち!! 【カラスは巡視者】のサバイバーが先攻で!!」

 「んじゃ、僕たち【鬼没は御守り】は後攻だね」


 そっか、最終ラウンドは別々にやっていくんか。なに相談もなしに勝手に……もういっか。

 正直勝てるなんてもう思ってないよ。


 「……そっちのリーダー死んでるね。もう決着着いちゃったかな?」

 「ふっ……先にやる俺たちで目覚ませるんで大丈夫すよ」

 《両者バッチバッチだぁぁぁぁあ!!!! それでは


 サバイバー【カラスが巡視者】vsハンター【鬼没は御守り】の始まりだ!!!!



 ****



 《マップは精神病院。カンテン選手は先程と同様、ガラテアをピックしております。

 お? 【カラスは巡視者】のピック内容は大幅に変更しているようですね》


 どうやらその通りだ。今までは各々好きなキャラを使い、連携などそっちのけのチームだった。


 個性的なピック内容ではあったが、大会で通用するレベルまだ持ってきた。

 逆に“それしか”練習していない。それなのにピックを変えるなんて……いくらカンテンに負けたからって練習もしてない編成なんて無謀だろ。


 カンテン:ガラテア

   vs

 あおりんご:教授

 ノーネル :心眼

 モブ1  :技師

 モブ2  :作曲家


 あおり以外、全員解読キャラ!? カーボーイ大好きの乃音が他のキャラを使ってるのすごい違和感ある……本当に大丈夫なのか……


 『まー見とけ。否が応でも気合い入れさせる作戦やからな』


 『見とき。うちらの覚悟。見届けて……感じて』




  …………。



 ま……サバイバー陣営はあっちに任してるしな。


 見せてみろ。


 頼んだぞ。うちの最強サバイバー軍団。



 *実況*


 

 バキンッ



 《始まりました!!!! 最終ラウンド!!!! 今回の実況、解説もティトーがお送りします!!!》


 最終ラウンドの火蓋が切られた。


 《今回の試合の肝は唯一のチェイスキャラであるあおりんご選手がチェイス時間を多く稼げるかにありますね。【カラスは巡視者】の編成は解読パーティ。いかに“早く”解読キャラが解読をするかにかかっています》


 ティトーの解説は正しい。“定石”だ。


 そう、定石。一般の戦い方だ。


 《おっと!? あおりんご選手がピックをしている教授が隠密をしております!!》


 隠密とはハンターに見つからないように立ち回ること。

 こういう戦法は解読キャラがよくするのだが、よりにもよって唯一のチェイスキャラのあおりんごがそういう行為をしたのだ。


 ギャラリー一同、動揺があらわとなっている。


 《カンテン選手は本来ファーストフェイスだったはずの教授を見つけられず、そのまま別のスポットへといってしまいました。》






 こんな奇怪いな行動をした【カラスは巡視者】であったが、それ以降は至って普通なプレイ内容であった。


 《えー……とうとう最後の解読キャラを使うノーネル選手がダウンしました。

 しかし! いまだ通電しておりません!!! とうとう残すはあおりんご選手だけです!!》


 解読パーティなのにチェイスキャラがヘイトを稼がず、解読キャラ達にチェイスさせた。

 

 誰しもが“諦めた”のだろう。そう思った。


 だが信じていた5人。蒼は最後の仕上げへと走った。


 


 サバイバー達は一斉に叫んだ。


 「「「「ゴぉぉぉぉお!!! “ハッチぃぃぃぃい”!!!!」」」」



 そこで会場にいる者は気付かされた。


 最初からサバイバーの勝ちなど考えてなかった。全てはチームでの勝利のため。


 向井が4吊りしてくれると見据えての確定1逃げを狙うため。

 勝負を捨てたと誰もが油断する状況を作り出すため。


 《!? しかしカンテン選手もハッチへと全力で移動中!! これはギリ間に合うのか!? 際どい

ですが間に合いそうです!!》


 カラスが舞わないように暗号機に触れていたこともあり、すぐにハッチへ向かえなかった蒼。


 そんなこと知らずに彼は走る。


 カンテンも車椅子を懸命にに走らす。


 


 そして蒼がハッチを目視した画面に映るガラテア。

 距離的に間に合う。誰もがそう思った時。


 カンテンが“鬼没”を発動する。


 前にも説明したが、“鬼没”は障害物をすり抜ける奥義。これは距離詰めにも使える。


 間に合う距離だった。希望の光がさしていたハッチが一気に遠い存在となる。


 

 チーム名通り鬼没を御守りとしていた【鬼没は御守り】の勝利に思えた。


 「勝った! ……」


 誰もがカンテンの勝利だと。


 「それはもう知ってる」


 

 パリン


 教授による特性。“鱗硬化”はハンターの攻撃とタイミングを合わせれば攻撃を無効化し、ノックバックできる。


 蒼はこの土壇場で相手が“鬼没”を使うことまで計算して発動した。


 そしてあおりんごこと教授はガラテアがノックバックされてるうちにハッチへと飛び込んだ。




 一瞬の出来事。何が起こったか分からない攻防。


 ただ一人理解した者がいる。チームを組む前からよく一緒にプレイしており、何度もハッチの攻防で負けたことのある。

 たった一人の男。


 「……やっぱすげぇよ……あおり……お前は最高の相棒だ」

 「……ギリギリだったぜ。あとは頼んだぞ」




 《………ハッチ攻防を制したのは!! あおりんご選手!!!! よって【カラスは巡視者】逃亡者“1”!! 全滅寸前が! 首の皮一枚繋がったぁぁぁぁあ!!!!》



 ーーーーーーーーーー



 俺の脳から打ち切り宣告を受けました。


 残り3話ほどです。


 



 


 

 


 



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