第83話 挫折
*カンテンside*
「ないす3逃げ〜!!」
「カンテンもナイス4吊り!」
互いチーム勝利がイーブンとなったため決勝戦は最終ラウンドへと突入する。
《最終ラウンドは試合を一つずつ見ていくぞぉぉ!! 先攻後攻決め+10分のインターバルを挟むとのことなのでもう暫くお待ちください》
「へー最後は同時にしないんだ」
「そうよ、って話聞いてなかったのかよ」
「本当にあなたって人の話を聞かないんだから」
「ひ、人の話は聞いた方がいいよぉ」
「………」
勝ち星をあげて最終ラウンドに持ちこめた【鬼没は御守り】は全体的にいい雰囲気。
「いや〜けどえぐいほど“ハマったな”」
「そうね、やっぱ一試合データがあるだけで全然違うわね」
「最初のラウンドは捨てで正解だった」
「な、なんていうかぁすごい戦いやすかった」
「…………レンケイガ、ワンパターン」
そう、彼らは大会初参戦で勝ち上がってきた【カラスは巡視者】のデータを得るために最初のラウンドは捨てていたのだ。
そのためさまざまな行動をしてどんどん向井たちの情報を蓄えていっていたのだ。
「一戦目の救助狩り……あれはほぼ試合を決めたプレイだった」
「けど彼はそのまま“とどまった”」
「保守的な行動……UMAはあまり大胆なプレイをしない選手」
「べ、別にキャラ的にチェイスより戦術が大切になってくるキャラなのになぁ」
「なんの変哲もない普通なプレイなら」
「………コワクナイ」
今までさまざまな相手と戦ってきた彼ら彼女。
そんな彼らに普通の立ち回りは“通用しない”。経験でカバーできてしまうからだ。
「んじゃーラストも勝ちわよ
「おう」「が、頑張るよ」「……ウ」
「カンテン、最後もきっちり締めてきてよ」
「……うん」
これで終わるんかな。ま、強気なプレイしないことには彼らに勝つことはないね。俺でも勝つのしんどいもん。
彼が決勝の舞台で吹っ切れるか……そこが【カラスが巡視者】には鍵になってくるね。
正直まだ物足りないよ……俺は。
王者は静かにそして悲しそうに笑うのだった。
*UMA*
完敗だ。
第一戦目を勝って、俺たちも戦えると実感した。
その矢先にこれだ。正直舐めてた。
王者っていってもこんなもんかと思ってしまった。
けど冷静に考えれば、俺は第一戦目で“全力”を出してしまった。
だから色々情報を与えてしまっていた。
せっかく不戦勝や謎勝ちとかで情報を与えていないという利点を自ら不意にしてた。
「俺はもう……攻略されている」
勝てない。せっかくみんながハンターを任せてくれているのに……勝てるビジョンが見えない。
もう攻略されているなら、いっそまだ情報のないあおりや乃音がハンターをやった方がいいのでは……
そうだ。それがいいに決まってる……俺がやって勝てる気がしないんだったら可能性のあるあおりたちに。
「あ、あおり! 聞いて……」
「すまん! 雄馬! やられたわ! やっぱ強いなカンテンは!」
「あ、あぁそうだな」
笑顔のあおりがいる。なんでそんな笑ってるんだ? なんで謝ってくるんだよ……俺が負けたからなんだぞ。
「俺の方が悪い。普通に負けた。たぶん、俺の立ち回り攻略されてる。もう……勝てない。だからまだ情報のないあおりとか乃音とかに……」
俺が提案したらあおりの表情は曇った。
「なに言ってんだよ。そんなこと言うなよ」
「けど……勝てるビジョンが見えないんだ……」
さっきの2試合目だって普通に負けた。たまたまとかじゃない。しっかり連携とってきて、1試合目とは動きが全然違ったし、俺の思考を直接除いているんじゃないかと思うほど読み合い負けるし……絶対勝てない。どう考えても空回りする未来しか見えない。
「絶対負ける。せっかくハンター任せてくれたのに……絶対みんなの期待を裏切る。今現在裏切ったけど……だから」
「そういうことか……」
「そう、だから……」
「よし! 小田川さん! このバカ引っ叩くぞ」
「いいね、思いっきりやるわよ」
「な、なんで!? 何言ってんだよ!!」
バチンバチン
お構いなしにバチバチ叩いてくる2人。いや! 痛ぇーよ!! 何すんだ!!!
「目覚めたか?」
「何がだよ!」
「この大会に出ようって決めたの雄馬だぞ? 一回負けただけでへこたれんなよ」
「け、けどさ……」
「けどさじゃないよ。あなたが出ようって言わなかったら、私出ようとすら考えなかったし……だから期待裏切るは筋違いよ」
あおりだけでなく乃音まで……
「けど俺は負けた……」
「誰だって負けるだろ。自分は人間辞めてますってか?」
「そ、そういうわけじゃないけど」
「じゃあ変なこと考えんな。なんのためにこの大会参加したんだよ。ずっとゲームするための実績にするためだろ!」
「えっ!? そんな理由なの!?」
「あ……強敵と戦いたかったからだろ!」
「今の「あ」はなに!? 絶対最初のやつが理由じゃん!! そんなことのために参加表明したの!!」
「乃音………そんなことなんかじゃない!! これは俺の人生を賭けた勝負や!!!」
優勝して「こんだけゲームの才能あるなら……ずっとゲームやっててもいいかな……」って親に言わすためにこの大会の優勝は必要最低限事項なんや!!!!
「ふ、調子戻ってきたやん」
「……自信は全くない」
「そっか……それなら無理矢理でも追い込んだるわ。小田川さん、作戦“アレ”だ。」
「……確かにそれじゃないとね……うちのリーダーの気を引き締めるためにもね」
「ちょ、アレってなんだよ」
「まー見とけ。否が応でも気合い入れさせる作戦やからな」
そう言って、俺のチームのサバイバー軍団は会場へと歩いて行った。
なんでそんな自信あるんだよ……さっき全滅してるのに……どうやったらそんなこと言えんだよ。
「雄馬!」
下を向く俺の顎を持ち上げる乃音。
へっ……顎クイ!? なんで俺がされてるねん!!!
「ちょ、やめろって」
「見とき。うちらの覚悟。見届けて……感じて。以上!」
その言葉だけを残して乃音はタタタッと駆けていった。
………まだ思えない。勝てるなんて天地がひっくり返っても思ってない。
けど……仲間が言ったんだ。見とけって……
何をするか見当もつかない。けど信じよう。今まで一緒に戦ってきたみんなを。
重い足取りではあるが、俺はステージ上に上がる階段を登っていった。
決勝戦。最終ラウンドが始まる。
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