第82話 違和感
《決勝は3戦し先に2勝した方が勝者となるぜぇぇぇぇぇええ!!
それじゃあ〜第一戦目! はじめ!!》
進行役の人の掛け声と同時に、ゲームが始まった。
俺が使うキャラは当然悪夢。なんならこれしか練習してないから他のキャラ使ったら壊滅的になるだろう。
勝利条件は準決までと同じ。変わったのはさっき言っていた二本先取ってところだ。
だから一回負けてもなんとかなる。いや、王手かけられるだけだが。
ま、けど変わらない。俺が頑張らなければいけないことには。
「見つけた」
《おっと〜! 見つかったのはリーム選手だ!!》
確かあんま喋らない男の人だよな。泣きピエロか……
《泣ピエロ:サバイバー側のキャラ。ロケットをアイテムとして所持しているキャラ! そのロケットはマップ上を縦横無尽に駆け回るぞ!》
そして彼は俺を見るなりアイテムを使用し、俺との距離を離していく。
「見つかったよぉぉチェイスするよぉぉ」
「おう、頑張れ」
「できればずっとチェイスしといて」
「………」
「無理があるよぉぉ」
泣ピエロ結構相性悪いんだけど……追うか。今から違う人探すの時間かかるし。
距離をかなり離されているがそれでも追っていく。その間に“色んな行動をした”。障害物を乗り越えたり、板などでの心理戦。さまざまな攻防を繰り返しようやく泣きピエロをダウンさせた。
「つ、捕まったぁぁ」
「了解助けに行く」
「ナイスチェイスよ!」
「………」
け、結構時間かかったな……暗号機残り3台。
通電は免れないかな……
これからの立ち回りを考えていると、マジシャンが無防備に姿を現した。
《マジシャン:サバイバー側のキャラ。アイテムは“ステッキ”。その場に幻影を残して一瞬透明化できるぞ! さぁーテリアン選手の救助です!!》
なんでそんな無防備に姿を出したのだろう。これなら狩れるか?
バシッ
アウチッ
《なんということでしょう!! テリアン選手が救助に失敗!! そのままダウン状態です!!》
その実況にギャラリーがどよめき出す。非常に珍しいことだからだ。
これは別にチートでもバグでもない。普通にあることだが、俺が使うキャラは救助狩りをあまり得意としない。それなの救助狩りができてしまったから驚きを隠せないんだ。
かくいう俺もその一人。
「でか! 一気に勝ちコースや!」
先ほどまでサバイバー陣営に勝利がむきかけていたが、一気にハンター側へと持ち込めた出来事だ。
「……次私が救助行くわ」
「おけ、頼んだ」
「……」
「ギリギリの救助でいいよ」
それなのに【鬼没は御守り】チームに動揺は見られない。
結構大事だと思うんだが……優勝チームの余裕なのか?
分からない……いや、多分深い訳なんてない。相手も人間だ。普通にミスったんだ。
気を取り直して泣きピエロを脱落させるために次の救助狩りを試みるが、ここはあっさり救助されてしまった。
《サリア選手が使う調香師により救助成功です! えっと、調香師とは香水というアイテムを所持しており、香水を使えば発動している間攻撃を受けてもダメージをなくすことができます!》
なんだろう、めっちゃ落ち着いてる。多分勝てる。けどなんだこの違和感は。
なんか“いろいろ試されてる”ように感じる。
****
《【鬼没は御守り】の逃亡者1! 【カラスは巡視者】の逃亡者3! 結果! 一戦目は【カラスは巡視者】の勝利!!》
「「「「おぉぉぉぉぉぉおお!!!」」」
一戦目から王者が負けると言う意外な展開にギャラリーが湧いている。
その叫び声を聴きながら確かに感じたモヤっとする違和感の正体を俺は晴らせないまま一戦目が終了してしまった。
「おつかれUMA! さすがだな!!」
「ナイス! ずっと続いていた完全試合記録は終わっちゃったけどね」
「うん、ありがとう。そっちもお疲れ。まさか3人も逃げるとはね」
「案外いけたわよ。理由は“よくわからないけど”」
「俺たちの実力は王者も凌いでるってことだろう! このまま次の試合も勝って優勝だぁぁ〜!!」
「気が早いよ。青リンゴ」
「……よくわからないけど……か」
そうなんだよな。なんて言うんだろう。実力で勝った気がしない? いや、死力は尽くした。めっちゃ“全力だった”。
俺の持つ“全てを出した”と言っても過言ではない。
それなのになんだろう。このモヤモヤは……
そして俺たちはその正体を知ることとなる。
第二戦目で。彼らから教えてくれた。
****
《【鬼没は御守り】逃亡者3! 【カラスは巡視者】逃亡者“0”!! 第二戦目は【鬼没は御守り】が取った!! 王者の実力を発揮かぁぁぁぁぁあ!!!》
1戦目の勝利が嘘かのように第二戦目、惨敗した。
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