第80話 vsカメレオン(後編)

 *UMA*


 カメレオンの奇行は想像していた。勝ちもやる前から確信していた。

 だが、向井は明らかに困惑していた。


 「……いや、いくらなんでも自由すぎだろぉぉぉぉぉお!!!」

 

 (((ほんとだよ)))


 流石に思いを押し殺せなかった向井が叫ぶ。それに同調するギャラリー の画が出来上がった瞬間である。


 対策してたよ!? けど、こんな展開誰も予想つかんやろ!! 完全に勝負捨てに来てんじゃん!!!

 実況聞いてたら、あっちの方はここほど荒れてないけどクセ強プレーしてるらしいし……


 《え〜事前情報によるとカメレオンチームの選手は……最近思い人に告白したようなのですが……“全員”玉砕したそうです》


 試合中に公開された悲しき黒歴史にギャラリー、選手たちは反応に困る。


 かろうじて出たのが「あぁ……(絶句)」である。


 「未確認生物のくせにリア充のUMA!! 聞け!! 俺たちの悲しき「え……今試i」「出来事を……」

 「え、これ回想入っちゃうの!? 試合中だy」



 *カメレオン*


 俺たちはごく普通の高校生だ。いや、そんなんも生ぬるい。いわゆるカースト最下層の住人だ。


 そんな俺たちがどうして大会に出ようと考えたか。

 まさにその最下層から脱却するためだった。


 脱却したいという強い思いを持つ5人が揃いこの大会に出た。


 結果はベスト8。初出場では普通にすごいことだ。

 大会のあらゆるところで俺たちの話題が上がっていた。

 だから調子乗ったんだ。自分達が有名人になったと。


 全員の思いである“最下層脱却”が可能だと思ってしまった。


 ま、結果そんなことないんだが。

 普通に興味ない界隈の有名人なんて知らない。

 本当の有名人は界隈に縛られずにみんなに知られている人のことだと今更ながら知った。

 

 有名人になったってのに俺たちの地位は変わらなかった。

 なんなら好きな人に告白したら玉砕して晒し者にされましたとさ。



 *UMA*


 「わかったか……俺たちの理不尽な世界(学校)に苦しめられた悲しき俺たちの過去を!!」

 「お、おぉ」

 「それなのに男女混合チームで来てよ……俺たちの魂の想いを「「「「受け止めやがれ!!!」」」」」

 「いや、もうそれ俺をイライラの吐き口にしてるだけやん!!!」


 的確なツッコミを入れたところで彼らの猛攻は止まらない。

 ま、アイテムは無限じゃないからなくなるな待てば勝てるけどさ……こんなん俺の知ってる第五人間じゃない!!!


 「くぅぅぅぅぅう!! ストレスぅぅぅぅぅう!!!!」


 《UMA選手、カメレン選手達にボコられているためまだ一回もサバイバーに攻撃できていません!! もうどちらがハンターか分からなくなりそうです!!!》

 「俺もわかんねぇーよ!!!」 


 会場は謎に大盛り上がり。好プレーではなく、珍プレーが炸裂しまくってる試合が新鮮で笑いを引き起こす。

 笑顔じゃないのはボコられてる俺とまともな実況をさせてもらえない実況の人だけだ。


 そんな中、また一波乱起きた。Bモニターで。


 《おっとここでBモニターの方では試合が終了しております!!! 結果はサバイバー4人逃げで決着です!!!》

 

 俺がボコられてる間にいつの間に……ま、だけど4逃げなら俺が3逃げに抑えられたら勝ちってことか。


 ……ま、こいつら絶対逃げられんしな。暗号機解読してないし……


 「苦戦してまっせ〜UMA」

 「うっせ、ナイス4逃げ」

 「おう、まぁ〜相手の自滅やけどな」

 「相手の自滅?」

 

 どういうことだ? あ、自分の感情優先させてあおりガン追いハンターと化したからか。


 「相手投降した」

 「……は?」

 「俺を捕まえたあと投降した」

 「いやいやいや、いくら感情優先する奴らだからって大会でそんなことする奴は……」

 「んっ」


 あおりはカメレオンチームにいる一人を指差す。


 「燃え尽きちまったぜ……真っ白にな……」


 あ、これ対策してる時に見た奴だ。自分のやりたいことができ終わったら彼らがなってしまう現象。

 あ、ガチかもしれん。


 「大変だったな」

 「まー別にいいよ、勝ちは勝ちやし。それよりそっち放置してて大丈夫なんかよ」

 「あーまだ攻撃終わらないからな。こいつら感情任せのくせに効率よく長い時間俺に攻撃するために一人ずつ攻撃与えてくるんだよ。一斉に攻撃してきたら早く終わるってのに……」

 「自らサンドバックをご所望とは」

 「ご所望ではないっす」


 大会とは思えない空気感。試合中に雑談とか前代未聞である。

 そんな謎めいた空気感に包まれる会場。


 


 「もうそろそろかな……アイテム切れるの」


 別にアイテム使われてるから攻撃できないわけじゃない。けど別にこんな戦い方する奴に負けるわけがないし、勝ちは確定してる。

 無理して勝ちに行く必要がないと判断した。


 そして最後にバッツマンがブーストモードで打ってきたボールが破裂してようやく彼らのアイテムが尽きた。


 「よし! 全部使い切ったな!? 散れぇぇえーー!! ここから勝ちに行くぞー!!」

 「「「おぉーー!!」」」

 「え、勝ち目指すの!?」


 ここから!? てっきりあそこで白くなってる人みたいになるのかと……


 「あくまで我々は大会に出場するゲーマー!! 勝利を目指すのはあたりまえだぁあ!!!」


 彼らはダァーと四方に逃げていく。


 そっか、勝ち目指すんだ。


 正直自分がやりたいことのために勝ちを捨てる奴らに本気でやらなくていいやと思ってた。

 だからサンドバックになってやった。

 拍子抜けといった感じで。


 けどそこはやっぱりゲーマーだな。ゲーマーである以上勝ちにこだわってなんぼだよな!!


 「本気出すわ」



 ****



 《決着〜!!!! UMA選手の4吊りでゲームセット!!! 結果は4ー0で【カラスは巡視者】の勝利だぁぁぁああ!!!》


 ま、流石にな。いくら大会常連の人だからっていって、アイテム全部使い切った人達なんて余裕だった。


 試合が終了して各選手ごとに握手を交える。


 「完敗だ。アイテムなくても女に浮かれた奴なら全然勝てると思ったんだがな」

 「浮かれたやつが本戦まで来れるかよ。こっちはこっちでマジでやってんだよ」

 「失礼した。美女美男でのチームがめっちゃ羨ましかった」

 「正直か」


 その正直なところや愚直なところが良さなんだろうな。

 けどなんか過去語ってた……こいつらなんか変な方向で進んでるかもしれないと感じた。


 「あのさ、君も気づいてるだろうけどさゲーム上手くなったところでカースト上位には入らないよ」

 「分かってるさ。身をもって重々承知してる」

 「だから方向性を変えろよ。どうしてもカースト上位に入りたいなら陽キャになるしかねーぞ」

 「陽キャ……我々には無理だ。君みたいに顔が良くないし……」


 俺の言葉で負けた時以上に下を向く彼ら。


 「顔なんて二の次なんだよ。お前らアニメとか見ないの? 弱キャラ友○くんとか知らない?」

 「弱○!? 知ってるのか!!」


 あ、知ってるようだ。やはりアニメも好きなようだ。


 「あれこそ脱オタアニメだろ。参考にしたら?」

 「いや、UMA氏。あれはあくまで二次元。リアルでは無r……」

 「誰がそんなこと決めた?」


 アハハと作り笑いをするカ選手に放つ。

 

 「そうやって別次元とか分けてたら意味ねーだろ。二次元かも知れないけど活用できるところはたくさんある。あーゆー現実世界観アニメは尚更だ」

 「た、たしかに……」

 「それこそカメレオンの信条の出番だろ。“やりたいことのために変幻自在”。いろんなことに挑戦して変わっていけよ。今回のプレー見た限り、お前らならできると思うぜ」


 ま、俺が偉そうに言える立場でもないんだけど。

 過去のやつで俺たちに突っかかってきたってのもあるだろうし、せっかく上手いんだから過去を払拭するいい機会になればなと思った。


 「……ありがとうUMAさん。頑張ってみようと感じた」

 「おう、それならよかった」

 「なので……師匠!! これからは師匠と呼ばさせていただく!!!」

 「なんでやねん!!!」

 「いろいろ話を聞きたいので連絡先をいただけないか!」

 「あ、それはいいよ」

 

 お互いスマホを取り出しQRコードを読み取る。

 そしてカ選手と連絡先を交換した。


 「………よっしゃ!!! 連絡先こうかんしたぞぉぉぉぉぉぉおお!!!」

 「おめでとう!! 初めての友達だな!」

 「家族と俺たち以外のアカウント!!」

 「ツウィッターとかでもなくLINEで!!」



 あ、最初に言ってた『あわよくば連絡先をゲットするぞぉぉお!!』ってガチの友達欲しさからだったんや!!! てっきり女子陣のやつかと思ったぞ!!!


 ギャラリーからもおめでとうって言われてるってことは、毎試合言ってるのかな……なんかめっちゃ光栄すね。あははははは〜


 こうしてクセのある一回戦が終了した。



 ーーーーーーーー


 ここから一週間ほど更新ありません。

 テストに集中させていただきます(T . T)



 




 


 


 


 


 

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