第74話 3人の出会い

 「……必要人数……ハンター陣営1人、サバイバー陣営4人の計5名を1チームとする」


 向井に立ちはだかる壁とは……大会の参加資格。

 

 ハンターランクをランキング上位まで上り詰めた向井にとって大会の優勝なんて簡単だと思った。

 だが大会に参加するにはチームを組まなければならない。第五人間の大会は“個人戦”ではない。


 一人で戦えると思っていた向井の最大の誤算。


 仲間が必要だった。




 ****



 「どうしよう」


 別にぼ○ろの後藤ひ○りちゃんみたいな人見知りでもぼっちでもない。当ては全然ある。


 けど、俺のために一緒に大会出てくれるだろうか。

 出るとしても優勝を目指してやってくれるのか。


 大会情報を見るまで完全に個人戦だと勘違いしていた向井はどんどん不安が募っていく。


 

 そんな時だ。その不安を払拭してくれる人物が現れたのは。


 「な!? 雄馬! 今日は早いな!」

 「あおり……」

 「なんだ? 学校早く来すぎて元気ないのか? お前遅刻常習犯だもんな笑 遅刻連続数が途切れて萎えてるのか?笑」

 「そんなわけねーよ笑」


 いつも通り煽ってくるあおりに少し笑ってしまう。

 なんやかんや言うて、俺の高校での初めての友達のあおり。こいつと話すのが一番楽しいし、楽。


 「んで、どうしたんよ?」

 「? なにが?」

 「とぼけんなよ。流石にテンション低いの分かるって。どした?」


 あおりにはなんでもお見通しだった。本当に煽り性能だけに全振りしとけよ……


 やっぱ誘うならあおりからだよな。


 「あおり……ゲームの大会でないか?」



 ****



 「いいね、でる!」


 あおりの返答はめっちゃ早かった。伊沢も押し負けるほどだ。たぶん。


 「まじ? 俺が言うのもあれだけどもうちょっと考えて……」

 「いやー楽しそうじゃん? 俺もゲーマーの端くれだ。一度は経験したいことだよ!」

 「そ、そっか」


 まーあまりの速さに驚いたが、一緒に出てくれるならすごい助かる。

 あおりもあんなやつだけどかなりゲームが上手い。

 配信者の参加型に乗り込んでボコしたりを趣味にしてるほどだ。

 ……本当に性格終わってんな〜その趣味はやべーって。


 「んでー第五人間なら俺と雄馬抜いてあと3人か」

 「俺がお前以外に誘っていると言う思考には?」

 「いたらん!」

 

 処す! としたいところだが……あいにくあおりの言う通りだ。

 まだ入学したばかりということであまり交流がないのだ。(現在十一月)


 「まぁ、残りは任せるわ。俺ハンターしかしないから、あおりに人選任せるわ」


 正直誰でもよかった。チーム戦になったところで“俺がしっかりしてれば”勝てるしな。


 「よし、じゃあ放送室行くぞ」

 「お、おう。………は?」


 おい、何するつもりだあおり。放送室は絶対あかんこと考えてるって!


 「募集するぞ!」

 「お前ヤバすぎやろ! 放送室使って宣伝して良いのは二次元だけだって!」

 「俺たちも半分二次元だ」

 「まぁ、お前の顔なら……」


 他の奴らが騒いでるから嫌でも知っている。こいつはカッコいい。顔だけ。顔だけだぞ!

 


 「んじゃーいくぞー!! 全学年から第五人間の猛者釣るぞー!!!!」

 

 俺はそのままあおりに首根っこを掴まれた。「もういいや」とあおりに身を預けることに決めた。



 ****



 「ま、そりゃこうなるわな」

 「お前だけは言うな! お前だけは!」


 宣伝はできたが、案の定教師陣に説教である。本当に説教だけですんでよかった……停学が頭の中でよぎっちまったよ。


 「まー言うことは全部言えたしな! 放課後俺たちのクラスに長蛇の列できるんちゃう!?」

 「サイン会じゃねーよ! 別に3人ぐらい適当に声かけしときゃ集まっただろうに……」


 けど大会で優勝する以上、少しでも上手い人とチームになりたいよな。

 だからあおりの奇行でなった結果だが案外よかったかもしれない。


 「よし、放課後がたのしみだぁぁぁぁー!!!」

 「上手い人来てくれぇ〜(切実)」


 ****


 

 「………こないっ!」

 「………」


 教師陣の好感度下がるの承知で行った、放送室宣伝だったが………結果は誰一人こない! 現在二人しかいない教室で参加者を待っている。


 放送室宣伝を終えた俺らは教室で晒し者状態だった。クラスで誰か来るかなーって思っていたのだが、誰一人として参加意思を示すものはいなかった。


 なんなら下校する奴らが……


 『ちゃんと人数集まると良いな〜放送室!』

 『誰が放送室や!!!』

 『なんだっけ? 第五人格?』

 『おい、ガチでその間違いはやめろ。ぼかした意味ねーだろ』

 『もっと有名なゲームでだろよな〜じゃ!!』


 と煽ってくる始末。これには【煽り王】あおりもお手上げのようだ。


 

 放送室で言った受付時間は5時まで……5時までに集まった人たち全員で抽選をして選ばれた3人って宣伝したが………虚しすぎる。


 「……どーする? あおり」

 「虚しいな」

 「俺たちの夏が……(現在十一月)」

 「俺たちの夏……エントリーもできないんだな(現在十一月)」

 「仕方ねぇーよ……まさか引退した先輩たちが不祥事を起こしていたから……それがまさか警察沙汰だなんて……(こいつらを後輩にしたい奴などおらん)」

 「俺たちは悪くないんや! その引退した先輩たちが悪いんや! なんで……そいつらのせいで……俺らのぉ……代は出られぇへんのぁ…… (こいつらを後輩にしたい奴などおらん)」

 「学校の意志や……どうすることもできん」

 「う、うわぁぁぁぁぁぁああんん!!!!」


 とうとう頭がイカれて茶番の繰り広げてた時だった。“彼女”が現れたのは。


 「まだセーフですかー? 5時までなんでセーフですよね。参加申し込みさせてくださーい」


 小田川乃音。これが俺たち3人の出会いである。


 

 ーーーーーーーーーー


 久しぶりー乃音。


 

 73話の題名変えました。過去編のゲーム大会をしっかり書いていきたいと思ったのでちょい長くします。




 




 


 


 



 


 

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