第75話 チーム結成

 小田川乃音の存在は周りに興味がない俺でも認知している。

 彼女は裏でファンクラブが設立されているほどの人気がある。


 そんな人がゲームしていることに驚きを隠せなかった。


 「あ、うん! 全然大丈夫だぜ! なんなら今日来てくれた人初だ!」

 「え、まじ? 確か3人必要だったよね?」


 あおりが持ち直して小田川と会話をする。


 「あてあるの? いや、ないか。あったらあんなバカなことしてないよね」

 「本当にバカだよな」

 「いや、お前が勝手にしたからな? あおり」

 「途中ノリノリやったやんけ」


 俺も俺で持ち直して会話に加わる。


 「当てがないなら、私の知り合い誘ってもいい? 実力は保証しないけど」

 「それは全然いいけど、小田川さんゲームするんだな。意外だわ」

 「それなー」

 「私だってゲームぐらいするよ。なんなら私……かなりのゲーマーだよ?」


 学年のマドンナである小田川さんは胸を張って自慢げに親指を自分に指している。

 で、でかい……

 

 「そっかー! 改めてよろしく! 俺は多岐蒼。高校生No. 1イケメンです」

 「俺は向井雄馬。ハンターは俺がさせてもらう」

 

 あおりが自己紹介したから俺も続いて自己紹介をする。


 「ハンター決まってんの?」

 「そうだな。雄馬がする」

 

 小田川さんは考えるそぶりをして少し経って向き直った。

 

 「私まだその人の実力把握できてない。だから実力見して。ハンターがポンコツだったら優勝できないし」


 キリッと敵意剥き出しで俺を見る。今すぐにでもハンターの座明け渡したいところなのだが……そういうわけにもいかない。俺にも優勝しなければならない理由がある。

 そのためには絶対ハンターだけは譲れない。


 「いいよ、見せたるよ。通電なし4吊り決めてやるよ」


 

 ****



 『す、すごいね……』

 「ありがとう」

 『すごいだろー! 雄馬は』


 あのあと、流石に学校でやるのはいけないということで、ネット上で見せることにした。

 第五人間にはフレンドのゲームしているところを見れる機能があるため、それを活用して二人に俺のプレーを見てもらった。


 『悪夢って環境でもないよね? そんなキャラ使って最初はあれだったけど……』

 『雄馬の悪夢やばいだろ!? ステージを縦横無尽姿はまさに神出鬼没だよな!』

 「そんな褒めたってなんも出ないぞ〜」


 かなりニヤけてる向井。個人戦だと思っていた彼にとって、誰かにプレイを見せることがなかった。だからこそ褒められると言う状況が今回初なのだ。

 大会のためにあらゆる時間を削って習得したプレイ技術を褒められて、嬉しくないものなどいない。


 『本当にすごかった! 疑ってごめんね? 向井くん』

 「全然大丈夫だよ。逆に褒めてもらえてすごい嬉しいよ」

 『それじゃ、次は私の番かな? ハンターしたことないから結局サバイバーだけど』

 「『なんやねん!」』


 なんか自分の方がハンター上手い! って感じで対抗心あるのかな? と思ったが全然そんなことなかった!! 

 やる気だし損だぜ……まぁ、ハンターはやらしてもらえるらしいので良しとしよう。


 『うわ! 小田川さんカーボーイってイケメンかよ!』

 『ふふふ……お嬢さん、今助かるよ?』

 「まじか! その縄救助はイケメンすぎんか!」


 小田川さんもかなりやりこんでいるようで、俺たちが見ているなか、素晴らしいプレイをしていた。

 これはかなりの猛者を仲間にできたのではなかろうか。


 

 そういう感じで俺たち3人は大会のチームとして練習するようになった。残り2人は小田川さんの知り合いが入ってくれた。


 みんな同じ学校学年だったから一回顔合わせをしたんだが……速攻で察する。あの二人……あおり目当てだ。

 気づいてないのは当の本人だけではなかろうか。

 なんか小田川さんが俺の方を向いて手を合わせてテヘッとしてる。

 小田川さんは知っているようだ。あの様子を見るに最初っから……



 不安しかなかったチームだったが、いざ彼女らのゲームスキルを確かめてみると、驚くことにすごい上手かった。

 小田川さん曰く、『多岐くんに良いとこ見せたくて頑張ったんだろうね』って。

 上手いなら全然問題ないや! 


 


 そして俺たちはこの5人で大会を優勝しようと練習を重ねた。


 練習はサバイバーとハンターで分かれて練習した。

 理由は単純明快! 女子しかいない空間にあおり単独で突入させるためだ。

 いつも澄ましてるやつの反応が楽しみだぁだはっはっはっ〜!(見れんけど)

 ま、本音を言うと親の存在だ。ゲームを堂々とするために優勝する。それまではコソコソとしかできない。

 通話してたらゲームしてることがバレるかもしれないため、俺自身あまり通話に参加できなかった。

 だからだ。決してあおりに煽られた鬱憤を晴らすためなんかではない! うん……



 だが思った通りにはいかず、ハンターとサバイバーで通話のチャンネルを変えてたが、俺のハンターの方に小田川さんが頻繁にくるようになった。

 彼女曰く、

 『あそこの空間ラブコメしてて胸焼けしちまう』だそうだ。


 そういや他2人があおり狙いやったの忘れてた!! ちっくしょぉぉぉぉ!!


 ま、それを機に小田川さんとはよく話すようになった。

 いろんな話をするうちに、お互い下の名前で呼ぶようにもなった。


 まーこうしてなんやかんや半年ぐらい経った。

 出ようとしている大会が今年はもう終わっているということで、俺たちが高校2年になる仲が深まったチームで大会へと臨んだ。


 俺たちが出る大会は高校生限定。会場は高校生で埋め尽くされていた。(所々高校生偽ってんだろって人いたけど)


 勝敗は相手のハンターと味方のサバイバーとで試合をし、相手のサバイバーと味方のハンターがそれぞれ試合を行い、“サバイバーが逃げた数”が多いチームが勝利となる。


 「要するに俺が4吊りすれば良いってことだ!!」

 「「「「なんも要すってないわ」」」」



 大会に出る人たちだ。みんな上手かった。

 だが、伊達に半年前からこの大会を優勝を目指してやってない。


 宣言通り4吊りの山を築いていく。


 「さすがとしか言いようないわ」

 「なんか気楽にできちゃうよ笑」

 「一人でも出てくれたら俺がなんとかするからな!」


 順調に俺たちのチームは勝ち続け、予選という山を超えた。


 とうとう本戦である。



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 新作構想中。この作品を疎かにするつもりはありませんが……いや、もうしてるのか……エタらすことはしません。

 

 

 



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