第66話 全てを知る向井

 めっちゃ長いです。


ーーーーーーーーーーー


 「て、適当に座ってください」

 「ありがとう向井くん」

 「お邪魔しまーす」


 エントランスの前で話すのもなんだし、とりあえず上がってもらった。

 それにしても久しぶりの小平さんだ……元気そうでよかった。あの時、部長に実質クビ宣告受けた以来だ。


 「どうぞ。いつも常備してる缶コーヒーですが」

 「ありがとう。私と会わなくなったからってモソスターに戻ってるんじゃないかって心配したよ」

 「最近飲んでみたんですけど、なんか体が受け付けなくて……笑 夜ふかしとかは毎回これですね」

 「それは良かった。耐久配信とか毎回モソスター飲んでたから……」


 小平さんの言う通り、耐久配信とかの日は毎回モソスター飲んでた。それを『体大切にしなさい!』って小平さんに怒られたの今でも思い出す。

 本当に……懐かしい記憶が思い出される。


 「それで今回は2人ともどうしたんですか? 懐かしいですね! このメンツってあの打ち合せ以来じゃないですか?笑」

 「そんな打ち合せもあったね〜」

 「本当にひどい打ち合わせだったわ」

 「あ、そっか枚田さんあの打ち合わせで……くくく…魔王枚田さん?」

 「そんなことしてましたね笑」

 「そこ笑うな!」


 打ち合わせといってもいいのかわからないあの打ち合わせも今となってはいい思い出だ。

 

 「俺のせいで話がそれちゃいましたね。んで、2人はどういった用件で?」


 改めて問う。俺的には早く調べること調べたいんだが……逆に関係者のこの2人に聞いた方が早い気がしてきた。

 とりあえず要件だけ聞いて答えて、俺も聞こう。


 小平さんと枚田さんはお互い顔を見合わせたかと思うと。覚悟を決めたかのようにコクンと頷き俺の方へと顔を向ける。


 「向井くんはご存じでしょうか? 最爽エリーが向井くんとのコラボの全容を配信で暴露したことを」


 !? そちらもそう言う要件!? なら話早いや。


 「はいそれは知ってますよ! けどそのあとのことは知らなくて……大まかなことは友達から聞きましたが……詳しくどうなっているんですか?」

 「ご存じなんですね! えっとですね……」


 俺は小平さんから全てを聞いた。


 小平side

 ・小平さんが俺のために隠蔽されたことを露見させようと頑張っていたこと。

 ・小平さんを中心に最爽のマネージャーの佐川さんも協力してくれたこと。

 ・最爽はコラボ配信中、俺とのコラボの全容を暴露したこと。

 ・それにより隠蔽したラピスベリーがいま最爽と一緒に炎上していること。

 ・コラボ隠蔽は陰謀だとラピスベリーが認めて、謝罪ツウィートしたこと。

 

 枚田side

 ・ぐらぶるダクションはラピスベリーに騙されたこと。

 ・本当に俺がやらかしたと報告を受け信じて、弱みを握られたこと。

 ・その弱みにつけこまれ、部長がエターナルのメタバース技術を提供しそうになったこと。

 ・それをすべて名探偵枚田があばいて、社長に報告したこと。

 ・部長は背任罪として逮捕されたこと。


 ………俺が知らないところで話進みすぎだろ。コールドスリープ状態から目覚めた主人公って感じだよ。

 けど今全部説明されたことで全てを知れた。


 「とりあえず言わせてください……小平さん枚田さん……俺のために本当にありがとうございます」

 「顔をあげてよ! 向井くん! まず悪くない向井くんが叩かれてるのが嫌で勝手にしたことだから!!」 

 「……名探偵として謎を解いた……それまでだよ……キラーん」


 それでもだ。ファン以外にも俺の味方でずっと戦ってくれてた2人。感謝の気持ちしか出ない。

 感謝の気持ちしかないからこそ……枚田さんの名探偵はスルーしておこう。自分で「キラーん」っていっていたことも何も触れないでおこう。


 「本当にありがとうございます。結果もそうですが、気持ちが嬉しいんです。枚田さんには流れで言ってましたが、小平さんは何も知らない中俺を信じてくれたんですよね? それが嬉しいんです」


 狡噛レンのツウィッターアカウントは消されてるからアンチDMとかはない。

 けど、YouTubを開くたびに見た。狡噛レンの切り抜き。それをみてずっと思ってた。

 


 「俺はこんなことやってない……」


 変な憶測などが流れるネット。身をもって知ったデジタルタトゥー。

 ファンがいてくれるで立ち直れるほど俺のメンタルは強くなかった。

 だからこそ今まで俺のために戦ってくれていた2人が………本当に救われる。


 今まで我慢していた涙が溢れてきた。


 「……今まで頑張ったね。もう大丈夫だよ」


 小平さんがギュッと抱きしめてくれる。本当に小平さんには感謝しかない。


 


 「俺を信じてくれでぇ……ありがとうぅ」



 ****



 泣いてかなり落ち着いた。ちょっと恥ずかしい思いを胸にまだ小平さんから話があるということで、俺は向き直った。


 「それでね、社長からも直々に謝りたいってなってるの」

 「しゃ、社長ですか!?」


 社長って、俺をスカウトしてくれた人だ! あのヤクザみたいな怖い人!!!!


 「直接謝りに行きたいって言っていたんだけど……マスコミ対応がね……」

 

 部長が逮捕された対応だろうな。背任罪って、普通の犯罪より話題性ありそうだしな。そりゃマスゴミどもが食いついちまうよ。


 「だから今からリモートつないで良いかな?」

 「い、いまから!? き、緊張しちまうよ」


 スカウトされて以来かな? それ以降全くといって会うことなかったからな。


 枚田さんがもってきていたパソコンをいじくっていた。

 そして画面に久しぶりに見たあのヤクザ……じゃなかった! ヤクザ顔の人が!


 『久しぶり! 向井くん!!』

 「お久しぶりです!! 社長さん!!」


 ある大会でスカウトを受けた時の人……豪堂社長だ。


 『まず最初に言わせてくれ。本当に申し訳なかった!!』

 

 豪堂社長は豪快にでこを机にぶつけて頭を下げた。


 「顔を上げてください! 社長!」

 

 慌てて顔を上げてもらうよう促した。


 『本当に申し訳ない! 君をスカウトしたのは私なのに……もっと君に目をかけておくべきだった!』

 「し、仕方ないですよ! 隠蔽されちゃ」


 これは世辞なんかじゃない。本心だ。隠蔽合作なんてされちゃどうしようもない。

 仕方なかったと思っている。

 それに社長には感謝しているんだ。楽しいVtuberという場を用意してくれた人なんだから。


 『そういってもらったら……本当に助かる。君を陥れた渡部は司法でしっかり裁いてもらうから』

 「……あ! 渡部って部長のことか!」


 今言われて思い出したよ。


 『それでなんだがな……戻ってくるつもりはないか? ぐらぶるダクションに』

 「!?」

 『君の無罪が露見されたからこそ……戻ってくるつもりはないか? 君も配信すごい楽しいと言っていたと小平くんからは聞いているからな』


 たしかに無罪が証明された狡噛レンなら復帰してもなんら問題はないだろう。

 俺が配信が楽しいと思っていたことは事実だ。


 


 けど俺は顔出し配信者として生きている。顔出しで得た新しいファンもいる。


 戻る気はない。


 「大変嬉しい話ですがお断りします。俺にはもう新しい居場所があるんで……

 『そうか……俺は今顔出し配信者としてやっているんで!」迷惑をかけたから……え!? 配信しているのかい!?』


 俺が告げた顔出し配信者として活動しているということに驚いた豪堂社長。ついでに小平さん。

 枚田さんは知っているからか、2人の驚き顔を見て「わはははー」って笑っている。


 「はい! あの後いろいろありまして……」


 知らない2人に俺が顔出し配信者になるまでの経緯を話した。


 『そ、そうか……顔出しか……』

 「し、知らなかったです……枚田さんはご存知だったんですか!?」

 「もちのろん!」

 「ぐぬぬぬ……また枚田さんだけ……」


 俺の経緯を聞いていろんな反応を見せる皆さん。小平さんの反応はどういうことだ……?


 『ま、けど楽しい配信をしているなら何よりだ!』

 「はい! 楽しいですよ! よかったら俺の配信見に来てください! 一応毎日配信してるんで!」

 『そうさせてもらうよ』


 豪堂社長は画面越しに最大の笑顔を見せてくれた。


 今までゲームしてるだけで満足していた俺に配信という生きがいを教えてくれた豪堂社長……何か恩返ししたいな……




 そうだ!


 「社長! 俺を“一回だけ”狡噛レン復帰させてください!!」

 



 ーーーーーーーーーーーーー



 今まで空気だった向井くんからのラスト復讐。ターゲットはだれでしょうか。お楽しみに


 20万PV突破しました! ありがとうございます!!!!

 そしてHGSikiさんレビューありがどうございます!!!!(レビューはありがとう言えないのでここでやらせてもらいます!)

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る