第38話 めっちゃマウントとってくる!!

 「鷹葦ロミのマネージャーの枚田美瑠です。こちらこそ“また”よろしくお願いしますね?」


 ど、ど、どうして!?


 「どうして最爽エリーのマネージャーであるお前がここにいるのです!?」


 まさに殺したはずの宿敵が生きて返ってきた並の驚きを見せる小平。そしてまさにそんな感じを連想つもりなのか? ククク……と小平の問いを嘲笑い答えた。


 「ククク……私はラピスベリーをクビになったのだ! そのあと職を探して三千里していたらここに行き着いたというわけだ!!!」

 「な、な、なんだと!?!?………いや、マジでどういうことですか」

 「? なにが?」


 また変な流れで役にお互い入り込むかと思われたが、意外にも小平の方から冷静になった。めっちゃ意外だ。もう一度いう。めっちゃ意外だ。


 「クビになったって件ですよ」

 「クビになった件? そのままだろ」

 「そ、そ、そうですがぁ!」

 「他に何がある。何そんなに煽りたいの? けどごめんね。クビになったことはもう立ち直り済みよ」

 「いや、別に煽りたいわけでは……」


 枚田は社会クソだ連合の一員として前を向いている。クソみたいな理不尽に負けないようにと。その原動力は当然向井との対談にある。


 一方小平は枚田を見て一瞬こう思った。最爽のマネージャーだったのならあの時何が起こったのか教えてもらえるのではと……しかし枚田はクビになったと。真実に辿り着くと思った矢先足場が崩れたかのような喪失感を味わっていた。


 「そうですか……それじゃ枚田さんは向井くんがあの時どうなったか知らないのか……」

 「ん? 知っているが?」

 「そ、そうですよね……クビになられたんで「おい、もうそろそろクビクビってキレ」「知っているんですか!?!?」


 う、うそ!? なんで!? クビになったんでしょ????? なんで??????


 「向井くんと直接会ったのよ。それで聞いたわ」

 「……直接?」


 小平の雰囲気が変わった。喜怒哀楽で表すと、哀→喜→怒である。今ドス黒いオーラをどんどん展開していっている……これはヤバい。


 「たまたまの出来事だったんだよ。私がクビになって就活を強いられている中出会ったんだ」

 「ほ、ほ、ほぅ〜?」 

 

 なんか感じますねぇ〜? 甘ったるい話の予感がぁ〜????


 「まーとりあえず、ご飯食べながらお互いのことを話し合ったわけだよ。私の話を親身に聞いてくれて本当に嬉しかった」


 ほぉ〜?? 私には何も言ってくれませんでしたね……あーなんかアレですね! 悩みとかは“他人!”の方が話しやすいって言いますしね!? 他人の方が!!!!


 「それでお互いの悩みを共有していろいろ運命感じたね」

 「へぇ〜」


 まーまー他人ですから……他人だから話せたんです……向井くんは……そういや枚田さんも向井“くん”呼び……


 「んで、帰ってたらずっと同じ道歩くなーって思ったら家同じだったんだよ」

 「ちょ!? それは強すぎですって!!!」

 「ん? 何が?」

 「………私にもわからない」


 なんでだろ……なんか文句言いたくなってしまった……そうだ!? 聞かないと!! あの日起こったことを!!


 「向井くんに何が起こったんですか!」

 「それは言えないよ」

 「どうしてですか!!」

 「彼が振り絞って教えてくれたことだ。そう簡単に伝えるわけにはいかない」

 「ぐぬぬ……マウント攻撃がつらい……」


 けど、彼女のいう通りです。そう簡単に言える内容なら一番に私に伝えてくれるはずです……たぶん。余程なことが起きたのでしょう。

 逆にここで伝えなかった枚田さんはしっかりしている。マウント攻撃してくるけど、いい人なのは確かです。

 しかし、こうなるとどうすれば……やはり最爽から直接聞くしかないのでしょうか……


 「………私の後任となった人物の名は教えてあげれる」

 「え?」

 「私がクビになって佐川由里子が最爽のマネージャーをしている。向井くんとのコラボは佐川が担当してるはず。これぐらいしか力になれない」

 「どうして私があの件を追っているって?」


 言ってない。確実に言ってない。どうして枚田さんは……


 枚田はクスッと笑った。嘲笑うでも貶す笑い方でもない。ただただ普通に笑った。


 「なんか伝わる。向井くんから聞いてたぶん私もあなたと同じ気持ちになった。だからなんとなく伝わる。あなたが何をしようとしてるのかも」

 「枚田さん……」

 「だからさ、頑張ってよ。彼のためにもさ。私からは伝えられないけど、あなたなら絶対辿り着ける」

 

 それ以上の言葉は要らなかった。やはり私は進み続けるしかないのです。向井くんのために。


 「それじゃ、打ち合わせ始めよっか」

 「そうですね」


 切り替えて、コラボの件で意見を交えた。佐川由里子……覚えた。





 

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