第36話 世界に愛された2人
「遊んでない方いませんか〜?」
《はーい》《楽しかったー》《面白かったー》《疲れたー》《眠いー》
「みんな語彙力無くなってるやん!笑」
《そりゃねー》《逆になんでそんなに元気なんですかー》《もう日昇ってるよ》《ほんと日曜じゃなきゃ地獄だな》《日曜に感謝》
現在の時刻、な、な、なんと5時! 本当にオール配信した向井。
「まーまー俺は楽しかったぜ。いつも文字でしか知らなかったみんなを直接知れた機会だと感じてる。本当にありがとう! 楽しかった!」
《……最後の最後で泣かせるなよ》《この年になると涙腺ゆるゆるなんだよ……》《キャァーーーー!! 私も楽しかったです!!》《色々お喋りできて楽しかった》《これからも楽しみにしてます!》
「これからもこういうリスナーと距離の近い配信をしていこうと思ってます!!
それじゃ! 俺はもう寝るわ! みんなも寝ろよな! んじゃ、乙ガ……これはだめだ笑」
《よく踏みとどまった笑》《被り物捨てたからそういうのもまた新しく決めないとねw》《爆笑》
「そうだな。また新しくみんなで決めよう! それじゃ今回はなんの変哲もない挨拶で締めまーす!!
バイバーイ〜!!!」
画面に向かって過去最高の笑顔と両手を振りながら応えた。
Vtuber時代、3Dじゃなかったからな。思った動作をできるのも顔出し(実写)の特権だな。
《ガチでなんの変哲もないw》《バイバーイ笑》《いい夢見なよー》《売買》《ばいばいきーん》《ばいならばいならー》
さまざまなファンの挨拶を見て、「やっぱ統一しよ」と心に刻んだ。
そして速攻で眠りについた。やっば………天に召されるぅぅぅううう。
これは12時間睡眠コースだわ。
*最爽エリー*
原点はここにある。オフコラボ事件へと遡る。
「まじで信じられない!!」
最爽エリーこと江東響は憤っていた。
「まじでなんで勝手に配信してんの!? あ゛ぁぁぁぁぁぁああ!! ガチで頭おかしい!! まじでなんで配信しとけなんて言ったんですか!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
クソが!!! さっき会社に報告するって強気に出たはいいものの、明らかにこっちに非がありまくってる! さっきから佐川無能だしどうすれば……!
「何事ですか」
「「!? あ、浅羽(あさばね)副社長!!」」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
どうすんだよ! この状況!! いつも見にこないくせになんでこんな時に限って!!!
と、とりあえずその場凌ぎで………
「ごめんなさいぃぃオフコラボ失敗しましたぁぁあ! 急に江東さんが帰るとか言い出して説得してる最中、向井さんには配信してもらっていたんですけどそらを知らずに入室した江東さんが配信中に声出して、オフコラボってのがバレましたぁぁぁああ!!」
「………」
オメェぁぇぁええ!!! 何言ってくれんたんじゃぁぁああ!!!!????
沈黙してんじゃねぇーか!? なんでそんな馬鹿正直に……
「江東さん」
「は、はい……」
あ、ダメだ。やらかした。一時の感情に身を任せた私がバカだった……ほんと最あ……
「先手を打ちましょう。幸いなことに今回は向井雄馬様1人だけでいらっしゃったということなので、どうとでもなります」
「え、本当ですか」
「後は私に任せなさい。上手くやります」
****
「みんなを幸せで包み込むぅ! 最爽エリーだよぉー!」
《エリー!!!》《大変だったねぇぇえ!!!》《心配したヨォ!!!》《大丈夫だった!?!?》
「うん! 大丈夫だったよ! それよりコラボの件……みんなに迷惑かけてごめんね?」
《俺たちは大丈夫だよ!》《エリーの方が心配》《クソレソのせいでエリーの心に傷がついたらと思うと……ずっと眠れなかった》《ほんとそれな》《まじで俺たちのアイドルに手をつけようなんて焼き殺してやろうか!》《あ、消された》《殺したろうかは危険だねー》《あ、消されたw》
「怖かった……紹介された部屋に知らない男の人がいて……けど、私は頑張るよ? みんなに配信を楽しんでもらいたいから!!」
《あかん、アイドルの鏡だ》《俺泣けてきたよ》《俺も》《やっぱエリーは最高だ》《それと同時にやつには札意が湧くよ……》《あぁ……こんな純粋無垢な彼女を傷つけるなんて……》《配信再開したら嵐に行ってやる……》
ふふふ……バカな男達。可愛くしとけばなんでも信じるんだから。非リアでVtuberにしか貢げないバカな男達を散々こき使ってやる。
やっぱり私はこの世界に愛されてる!! 私の快進撃は止まらないわ!!!
ざまぁぁぁぁぁああ!! 向井雄馬!!!
私の好みの顔じゃなかったあんたの顔を恨みなさぁ〜い笑
*浅羽摩利(あさばね まり)*
私は浅羽摩利。このラピスベリーで副社長を務めている。
現在社長は出張中だ。あちらこちら飛び回っては会食などを繰り返している。
そのため会社をよく留守にする。だから実際このラピスベリーは私の城と言っても過言ではないのだ。
「ハラハラしましたが、あの豚が馬鹿で助かった。これで最爽は悲劇のヒロインのような人気を得る。ククク……完璧だ……完璧すぎるぅぅぅ……」
いずれは本当に社長に上り詰める……世界に愛されている私に不可能はない。
この自称世界に愛されている2人。
そう思えるのは今だけだ。この2人は必ず嘆くことになる。
さぁ、制裁の時間だ。
これから始まるのは報いるべき“ざまぁ”を先延ばしにした、あわれな2人に制裁がおくられるまでのエピソードだ。
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次からざまぁ展開に入るにあたって、敵をしっかり描写させてもらいました。
ざまぁを待っていた方! お待たせしました! これからの“彼女ら”の戦いにご注目ください。
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