第35話 ゲーム配信(後編)
たらこさん・傭兵(救助型)
八号さん・弁護士(解読型)
コミットブロックさん・医師(補助型)
そしてラストの俺は“泥棒”だ。
泥棒とは懐中電灯をアイテムとして所持しており、懐中電灯の光をハンターの顔に長時間当てることによって一定時間スタン(気絶)させることができる。
牽制型である。
どれでバランスがとれたオーソドックスなパーティーを組めたと思う。
それではいざ、出陣である。
****
マップには板やオブジェクトが存在する。サバイバーはそれを活用しながらハンターから逃げる。ちなみにハンターが板の間通った時に板を倒すとスタン(気絶)させることができるぞ! 板で駆け引きをしながら逃げる。読み勝った時すごい気持ちいんだ!
「!? 悪夢です! た、たらこさん近くにハンターがいます」
弁護士の八号さんが教えてくれる。
弁護士には地図があるのでゲーム開始早々から敵の情報が分かる。
悪夢とは一定時間対象のサバイバーを視界に入れることで追尾付きの飛びつき攻撃を可能にするハンター。他にもカラスを暗号機などに飛ばすことができ、カラスがいるところには瞬間移動できるという特殊能力持ちだ。
ちなみに俺がハンターを使う時はこれだ。飛びつき攻撃がかっこよくてずっと使っているのだ。他のハンターは使えません!!
「じ、自分近いですか。まー自分は追わないんじゃないですか?」
「確かにそうだね〜傭兵追ってたらチェイスおわんないもん」
「たらこさん、ハンターターゲットチェンジしたら教えてください」
「了解です」
傭兵のアイテム肘当ては高速移動ができるためハンターからしたら追いたくないのだ。
傭兵だったらはい! タゲチェン! 第五界の常識である。
「あ、タゲチェンしましたね。自分このまま暗号機回しますね」
「次は……方向的にレンさんですね。ハンターの人引き運ないな……」
「確かに笑 普通は解読キャラとか追いたいもんね」
ハンターは脱出を阻止するのが目的。つまりあまり暗号機を解読させたくないのだ。
「じゃあ、自分最初のチェイス入りますねー。よければチェイスしながら色々答えていこうかなーって思っているので、バンバン質問しちゃってください。連携必要なこのゲームで喋れるのって、誰かがチェイス入ってる時かなーって思ってたんで」
「ま、マジスカ」
「……なに聞こ」
「きゃぁぁぁぁ!!」
(あ、ハンター見えた。よし、逃げる準備だ)
「じ、自分からいいですか?」
「全然大丈夫ですよ!(先に板倒してハンターとの距離離しとくか)」
「す、好きなアニメとかありますか? す、好きなジャンルとか」
「俺は話が深いアニメ好きだよ。進○とか! まージャンルって言われると異世界とかよく見るね」
「そうなんですか!? 自分も異世界好きなんですよ!」
「……私もよく見る」
「きゃぁぁぁぁ!! 異世界系私大好きです!!!」
「そうなの!? みんなで話そう!! 話そう!!(やべ、追いつかれそう。もうそろそろ懐中電灯使うか)」
話の流れで一戦目は好きなアニメとかで話すことになった。
《楽しくアニメの話してるw》《裏山》《次が待ち遠しい……》《次誰行く?》《早い者勝ちっしょ》《まーそれが一番平和だね》
コメント欄もレンと話したいという気持ちが漏れ出ている。
だからなのだろう。雑談しながら未だにダメージをもらっていない事実を見逃していることに。
****
「あれ? そういやレンさん、まだチェイスしてるんですか?」
「ん? まーまだ諦めないね」
「じ、自分もう1台目上がりますよ?」
「うぇーもうそんな時間経った? 話してたら一瞬だな!」
たらこさんの傭兵が一台上がる。これはだいぶチェイスが伸びている。
「いやー泥棒ってほんとうざいよなー手軽にスタンさせることできるし、光浴びないように立ち回ったら立ち回ったらで思ったようなプレイできないしな。悪夢なんて一定時間対象のサバイバー見続けないと飛びつき攻撃できないしな。相性最悪だな! あ、また読み勝った。俺ノネさんとは思考の相性はいいかも!笑」
「「「それはそれはかわいそうに」」」
それにしてもアレだな。諦め悪すぎるな。普通ここまでしたら萎え……ほんとだ!? 萎えちまう!!! 『このゲーム楽しくない!』ってなってやめちまうかも!?
うわ! やらかした! 俺追い続けてるのってゲーム勝つの諦めたってことかな!?
悪いことしたな……次からは加減するか……
だが、その決意は無駄となる。コメント欄では……
《レンは追ってはいけない》《レンは傭兵》《たとえレンが解読キャラでも絶対追わない》《追ったら負け》《追ったら負け》《もう、会ったら負け》《死神や》
ここに新たな暗黙の了解が誕生したからだ。
*小田川乃音*
「もう! くやしぃぃぃぃ!!!」
勘の良い方はお気づきであろう。最初に悪夢としてハンターをしていたのはノネこと小田川乃音である。
彼女は向井が狡噛レンの時から追っていた。向井や蒼には内緒にしたがスパチャもガン投げ勢で、ツウィッターも30分に一回は確認する重度のファンなのだ。
「……久しぶりに雄馬とゲームしたな」
高校入学して間もないころは、よく蒼を含めた3人でゲームしていた。
けど、2年に上がると一緒にゲームする時間はなくなった。
なんか毎回『あー勉強イソガシクテサ〜毎日は無理カモ〜』とカタコトな喋り方で毎回断ってきた。
私とゲームするの嫌になったのかな……
そう思わざるをえなかった。そしてゲームする時間がなくなり暇を持て余した私は見つけてしまったんだ。
狡噛レンを。
最初は覗いてみるか程度だった。けど楽しそうにゲームするレンを雄馬に重ねてしまった。それからはずっと追っている。
だが今回その正体が雄馬と知った。驚きもあったが一番は腑に落ちたといった気持ちだ。
そして参加型をすると聞いて、いつのまにか第五人間を開いてた。
その後からはあまり記憶にない。あるのは雄馬とゲームしたという楽しい気持ちだけ。
めっちゃボコられた。普通に試合は負けた。けど本当に楽しかった。
「……これからまた一緒に遊べるね」
敗北のリザルトを眺めながらそう呟いた。
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次で初配信終了です。
それを機に小平さんのざまぁ計画をメインに進めたいと思います。
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