第12話 社会の闇に直面
「向井雄馬。いや、狡噛レンには配信活動を控えてもらう」
どうしてこうなった……
俺はぐらぶるダクションの部長に呼び出された。前に言ったと思うがぐらぶるダクションはエターナル株式会社のプロジェクトの一つだ。
だから、ぐらぶるダクションのトップはこの俺の前で踏ん反り返って腹が出ているハゲになる。
「え、えっと……急に呼び出されてよくわかってないんですけど……どゆことですか?」
「そのまんまの意味だ」
「い、いやその経緯というか……」
一応雇ってもらっている身として強く出れない……思い当たる節と言えば。
『もういい! 帰って! このことそっちの会社に報告させてもらうから!』
江東響のこの言葉。マジで報告したの?
「むこうのマネージャー佐川さんから聞いてる。案内した部屋には“おらず”、“最爽エリーさんが使うはずだった配信部屋”で勝手に配信していた。と」
なんじゃあぁぁぁぁぁぁああ! そんなでまかせぇぇぇぇぇええ!! それに佐川裏切ったんがガァぁぁあ!! 失敗をもみ消そうとしとんのかぁぁぁあ?
「流石に非常識すぎる。初めてのコラボだからうかれてたのもしかないが流石に限度が過ぎる」
「えっと……そんなでまかせ信じてるんですか?」
「信じるもなにも現にいまこうなってる」
「うぐ……」
部長はツウィッターの画面を俺に見せた。
そこには滅多にトレンドなんかに載らない俺こと狡噛レンが載っている。
最爽エリーの名前と一緒に。
「しかしさっきのは事実無根です!! ちゃんと案内された場所にいました!」
「そう思ってるだけだろ? 向こうはちゃんと案内したと言っている」
「いや、だから……」
「それに! 配信事故起きたにも関わらず君は連絡しなかった! 我々はすごく心配していたんだぞ!」
っ!? 何も言い返せない。報連相を怠った俺にも非はある。認めよう。
けど……濡れ衣着せられるのはちょっと違うかなぁ……?
「連絡を怠ったのは本当に申し訳ございません。しかし、こういうの自分で言うのもアレですが、人は必ずミスをします。ましてや今回のコラボに関しては僕には初めての経験です。
なんとか慈悲はお与えください!」
俺は深々と頭を下げた。自分が間違ってないとしても理不尽なことが起きる。
それが社会だ。大人の世界。
だから耐えるんだ。狡噛レンを待っているリスナーはたくさんいる。
こんな理不尽なことでみんなを裏切りたくない。
だから我慢だ……屈辱だがそれを押し殺せ。
「ない。諦めろ」
「……どうして」
俺の決意、覚悟は虚しく散る。
「まず炎上のネタがデカすぎた。だから君にはそれ相応の責任をとってもらわないと困る」
「ですから!」
「それに報連相という社会としての必要最低限のことをできてない。まーまだ高校生だから仕方ない。
そうそう高校生だからここいらで潮時でもいいんじゃないか?」
俺の話など一切聞かず、しまいには高校生を引き合いに出してくる始末。
怒りでどうにかなりそうだ。
「……私も忙しい。伝えることは伝えたから帰ってくれ。くれぐれもツウィッターの呟きや配信はしないように。こちらで説明しておくから」
「………」
俺は部長の部屋を出た。
「向井さん!」
……小平さんか。いつものほんわかした口調じゃない……まぁ、今はどうでもいいや。
俺は小平さんに一礼して背を向けた。
小平さんがどうな顔をしていたか分からない。かという俺も小平さんにどんな顔を見せたか分からない。
*部長*
「……しっかりと狡噛レンに活動休止を伝えましたよ?」
「それは良かったです」
向井が会社をあとにした部長の部屋ではなんやら不穏な電話が。
「しかし、まさかあなたから直接交渉してくるとは思いませんでしたよ〜」
「仕方ないことです。こちらのブランドを下げるわけにはいきませんので」
「そうですか〜で、あなたのシナリオ通りにしてあげたので今回をきっかけに関係を続けるということでいいですね?」
「こちらはこちらで御社のゲーム関連には高い評価をしていますので」
「我々はそちらの人気ライバーとのコネクトを得れる。win-winな関係だ。けど、大丈夫なんですか? 当事者の2人の口止めは?」
「そこはぬかりなく。最爽は自分本位な性格。自ら地獄は望まない。マネージャーの佐川は……私、彼女の同期を“クビ”にしているんです。一つの失敗で。なので与えられたチャンスを自ら不意にしないでしょう」
「あなたも悪い人ですね笑」
「仕方のない犠牲です。それにあなたも向井雄馬を犠牲にしている」
「ふひひひ……この世はさまざまな犠牲の上で成り立ってるからね」
2人して不敵に笑う。その姿は社会の闇を表していた。
*向井雄馬*
彼は先刻遠回しに引退を告げられた。
今日に限って土曜。学校がない。土曜の夜は毎回徹夜でゲーム配信だったんだけどな……
とりあえず家に帰るためバスを待つことにした。毎回会社に行くたびバス代が飛ぶ。
こういうの経費で落ちないのかって? 高校生の分際で給料出してるのにバス代ごとき……自分で払え! って遠回しに言われた。いや、ちゃんと配信してるんだから給料もらって当然だろって思ったけど。
まぁ、今の俺には無縁なことだ。
「「はぁぁぁ………」」
深いため息をつ……ん? ハモった?
「……また落ちた……」
そこには見覚えのある顔が。
「“枚田さん”?」
「む、向井さん!?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
知らないうちにこの作品に100フォローあって驚きましたー!! めっちゃ嬉しいし、感激です(T_T)
ここで枚田の再登場です。一応、主要キャラのつもりです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます