第10話 コラボ(?)配信(後編)

 【みんな全然わかってないから流石にちょっと言わせてもらうけどナワバリバトルでレンは“一回も死んでないよ?(レンのチャンネルじゃないから少なめ)¥120】


 このコメントがスパチャとして浮上する。


 スパチャとはスーパーチャットの略で、リスナーがお金を配信者に貢ぐときの機能である。

 主にこれが配信者の稼ぎとなる。


 スパチャは金額ごとに色が変わりる。赤←青(高い←低い)こんなふうに。


 今回は120円で青寄りの色……いや、完全に青色で赤ほどの影響力はないが、先程まで誰もスパチャを投げてないから少しの色でもはっきりと認識される。

 そりゃそうだ。一応向井が配信してるチャンネルは現在不在の最爽エリーのチャンネル。

 推しがいないチャンネルにお金なんか投げないからだ。

 その環境がこの不協和音を呼ぶ。


 【そういや、確かに死んでない?】 【あまりにも地味な絵面だったから気づかなかったけど……】 【普通に考えて鳥肌もんなんだけど】 


 このゲームは死んでも復活する。だが、死んだら復活するのに一定の時間をようする。その間味方は相手よりも少ない人数で戦わなければならない。

 特に今回のナワバリバトルは塗る面積で勝敗が決まる。死んでいたら、その分塗る人員が減るわけだ。


 つまり死んだ分だけ味方に迷惑をかけると言うこと。

 

 それを理解した上で、向井は立ち回っていた。


 【敵と遭遇してなかったわけでもないしな】 【逆になんでこんな凄いことしてんのに気づかなかったんや!?】 【謎い! この男謎い!!】


 リスナーは大盛り上がり。向井が本気で戦う前から盛況を増した。

 だがリスナーの反応を挽回しようと集中し、向井はこの盛り上がりに気づいていない。


 とうとう向井が本気を出す。



 ****



 「よし、キル。余裕ありそうだしリスキルしてくるか」


 向井はこの上なく集中していた。彼は集中すると没頭し周りが見えなくなる。

 そのため、“配信”ではコメントにも反応しなければいけないため本気を出さない。

 全て楽しい配信のためだ。

 だが彼にとってリスナーを楽しませることが第一。

 リスナーが望んでることを体現する。



 だから彼は今本気を出している。


 

 【……】 【……なにこれ】 【鬼畜やん】 【軽い地獄だろ】 【いや、軽くないこれは】 【て、敵に同情するレベル】


 向井はさっきのナワバリバトルとは違うガチミコシというモードをしている。


 ナワバリバトルは塗る面積での勝敗だったが、ガチミコシは違う。


 ミコシをどれだけ進められるかというバトルだ。


 勝つにはミコシに乗り続けてカウントを進めなければならない。

 して、向井はミコシに乗り続けている? 


 否、ミコシを運ぶのは仲間に全て任せて、彼は一切ミコシを乗らず敵を狩り続けている。


 最初は中央にあるミコシに目掛けて両チーム向かう。

 だが、向井一人だけが一直線に向かわず敵の裏を取るルートで向かった。


 そのあとは説明するまでもない。ミコシに意識が向いている敵全てをキル。とりあえず敵を全滅させた。


 これはミコシを運ぶバトルだ。要するに……


 敵がミコシを運ぶことさえ阻止すればいいんだ。


 だから向井は狩り続ける。復活した敵を永遠に狩り続ける。


 結果は向井のチームの圧勝。最終リザルトでキル数が表示されるが、向井のところだけ“23キル”。

 向井以外の人は誰一人キルを取れないという異例のリザルトでバトルを終えた。


 【か、怪物だ……】 【こんなリザルト見たことない】 【や、ヤバすぎる……】 【そ、それもジャイロ機能なしだろ!?】 【スティック操作だけでなんであそこまでできるんだ……】


 最爽エリーのリスナーは狡噛レンこと向井の恐ろしさに慄くのだった。


 


 【ほらな! 言ったやろ!】 【レンはバケモンだから!】 【ハッハッハッ! 恐れ入ったか!】 【そういや久々かもな、レンの本気】 【集中しすぎるとコメント忘れるって言ってたから】 【リスナーと話すながらが楽しいとも言ってたし】 【俺は久々の本気プレイ見れて嬉しいぞ!!!!】


 レンのリスナーは向井の無双が見れて満足のようだ。

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