第9話 コラボ(?)配信(中編)

 『ここ部屋にあるものなら適当に使って大丈夫です!』




 「いや〜ここ俺の理想の部屋だわ」


 大画面PCが一つの机に3台置いてあり、横には最新のゲームから昔のものまで置いてある。

 ゲーマーにとっては夢のような場所である。


 「んじゃー今回は最近発売されたスプラッシュ3やるか!」


 【お! スプラッシュか!】 【ガチ名作】 【ゲームで1番好きかも】


 「俺もかなりやり込んでるぜ! もうランクSプラスまでいったしな!」


 【ん? 今こいつSプラスって言ってなかった?】 【ま、まさか〜いくらなんでも〜】 【恐れ慄け〜レンの凄さはこれからだ〜】


 「俺用のアカウントはもう作ってくれてるみたいだから……んじゃー始めるか!」


 俺はスプラッシュ3を起動する。


 ロードが終わるとスプラッシュ3の舞台である“バンゴラ街”がうつった。


 軽くスプラッシュ3について説明しよう。

 インクを塗り合うゲームだ! イカになったり、タコになったりして戦うんだ! オンライン対戦で4体4で戦う神ゲーだ!


 ……軽すぎたか? いや、こんなもんだろ。それぞれゲーム内容違うから、やる時にまた説明しよう。


 「あ、チュートリアルからか。マジで最初っからだな。終わらすから待っといてー」


 【りょー】 【把握】 【うす】 【チュートリアルは操作確認やし、実力は分からんかな】 【けどSプラス(自称)だぜ? なんかなんか魅せてくれんじゃね?】


 向井はこのゲームをやりこんでいる。さっさとチュートリアルなんて終わらす。


 


 そう思われた。


 「やべぇって!? ぐわんぐわんしすぎだろ! 酔うわ!!! やっぱジャイロはクソ!!」


 すごい悪戦苦闘中である。


 【オイオイそれでSプラスは笑えるw】 【あれれ? 初心者!?w】 【完全に初見で草】 【最初にハードル上げすぎたなんてもんじゃない】 【“シュータ”ー使えない説あるかもね。“チャージャー”とか“ローラー”使いかも?】


 「そんなことないぜー! 俺はれっきとしたシューター使いだぜ! なんならチャージャー使えなさすぎてビビるレベルの実力!」


 【そんなイキらんともろて?w】 【なんもカッコよくない!w】 【んじゃーなんでそんな下手なんですかね〜w】 【……知ってるやつは黙っとこうな。みんなの驚く反応みたい】 【そうだな。レンの配信見たら誰もが通る道】 【なんか意味深なこと言うてる人いる〜w】


 リスナーの反応は“笑う”と“黙る”に二極化していた。最初に大見得きった向井には最悪な出だしである。


 「ふーようやくチュートリアル終わったぜ!」


 【おつ〜】 【よくできました💮】 【チュートリアルできて褒められる自称Sプラスw】


 「確かあれだったよな。最初はナワバリバトル一回しないといけないんだよな。けど、その前に“やること”あるんだよな〜」


 俺はコントローラーのあるボタンを押す。

 

 【ん? カスタマイズ?】 【まだ服とか持ってないし意味なくね?】 【本当それ】 【何がしたいん?】


 リスナーのみんなは俺のした謎の行動を理解できず困惑している。


 「いやー“ジャイロエイム”切りにきた。この機能俺には合わなくてさ」


 ジャイロエイムとはコントローラーを上下左右に動かして視点移動ができる機能である。この機能によってエイム操作が楽になったのだ。

 このジャイロエイムが鍵となってくるスプラッシュ3。それを外すと言っている向井。当然、それを見逃さないリスナー。


 【ジャイロ外すは草】 【流石にそれはないでしょw】 【え? これ縛り配信でしたっけ?】


 リスナーはこの向井のとった行動が意味わからないようだ。

 普通の人はジャイロを外すなんて奇行にはしらないからだ。


 「まーみてろって。度肝抜かしてやるからよ」



 ****



 ナワバリバトルとはそのままの意味である! 3分間各自インクを塗り合い、塗り面積が多かった方の勝ち! スプラッシュの代名詞とも呼べるバトル内容だ。

 そんなナワバリバトルを終える向井。狡噛レンの戦いっぷりにリスナー達は……


 【……普通だな】 【てっきり敵陣突っ込んで無双するかと思ったけど……】 【ナワバリバトルだから塗るのは大事だけさ】 【あんだけ大きく出てるんだからなんかしてくれると思ってたんだけど】 【正直期待はずれ】 【口だけのやつ嫌い】 【レン……お前には失望したぞ】 【キル全然とれてねーじゃん、塗りだけかよ】


 絶賛叩かれ中である! 確かに今のバトル、華のあるバトルではなかったけど……勝ったんだし許してくれよ……けど、配信者らしからぬ内容だな。もっとわかりやすく形で勝たないと伝わらんか。


 「ごめんな! 次のガチマでは魅せるから! 俺にラストチャンスくれ!!」


 【うーん】 【かなり待ってるぞ】 【まー三度目の正直したるか】 【しゃーなし】 【次面白くない試合内容なら切腹な?】


 渋々と付き合うリスナー達。その意思が滲み出ているコメントがずらりと流れる。

 

 そんな中、わざわざスパチャで色付きコメントをしたリスナーがいた。そのリスナーのコメントを見て舐めかかっていたリスナー共の目がガン開く。


 【みんな全然わかってないから流石にちょっと言わせてもらうけどナワバリバトルでレンは“一回も死んでないよ?”(レンのチャンネルじゃないから少なめ)¥120】





 


 



 

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