第7話 最爽エリー
「……き、緊張してきた」
初めていく場所なため早めに家を出たんだが、かなり早く着いてしまい配信の時間までまだ余裕があった。
逆に長い待ち時間は不安の渦へのカウントダウトと変わる。
「……そうだ。“ツウィッター”で呟いとこ。一回してるけどもう一回しておこう」
俺はスマホを取り出しツウィッターを開いた。
【もうすぐラピスベリー所属最爽エリーさんとのコラボ配信です! 初コラボ……緊張する……】
動画のリンクも一緒に貼り付けてツイートする。
すると数分もせず通知がなる。さっきのツウィートを見た俺のファンが反応してくれてる。
【待機してます! 楽しみです!】 【初コラボ頑張って! 応援しています!】 【お、女……けどレン君が皆んなに知ってもらえるためなら許します!()】 【緊張せずにいつも通りね! ゲームならレンが一番やから!】
数々の応援の気持ちががダイレクトに突き刺さる。
あぁ……本当に皆んないい人で泣けてくる。
気を緩めば出てくる涙。それを堪え、改めて思う。
“応援してくれるみんなを楽しませる!”
この言葉を心の中で復唱した。
「……今回もみんなを楽しませよう! 緊張なんて二の次だ!」
俺はリプをくれた人に「ありがとうございます」をベースにそれぞれに合った一言を添えてリプ返していった。
リプ返をしている時のフリックスピードは先程の配信ツイートする時より俄然早かった。
****
「向井さんはもういらっしゃってます!」
「え!? まじ!? あたしの顔色大丈夫!? メイクとか大丈夫!?」
「大丈夫ですよ! 完璧です!」
二人の女性の声が廊下から響く。
とうとうか……俺の名前が出ているということはそういうことなんだろう。
コラボ相手のお出ましだ。
開かれた扉の奥には佐川さんとギャルの見た目をした金髪の女性がいた。
金髪の女性はすぐさま俺のところにやってきてお辞儀をした。
「初めまして!! ラピスベリー所属! 最爽エリーこと江東響(えとう ひびけ)です! お会いできて光栄です! 狡噛レンさ……」
俺のVtuberとしての名前をを言い終えると同時に顔を上げる江川さん。
しっかりと佐川さんの顔を見て思ったことは……うん、ギャルだ。長いまつ毛、目がぱっちりと大きく見える二重、耳には何個もつけられたピアス。これをギャルと表さずになんと表そう。
とりあえず俺も挨拶を返そう。
「初めまして。狡噛レンこと向井雄馬です。今回はよろし「え、思ってた顔と違う」します………はい?」
挨拶をしてる途中、訳のわからないことを発した江東さん。
それから彼女は俺の周りを歩いている。じっ〜となにかを探るように。
「あんた……何歳?」
「え、16ですね」
「は!? 高校生!?」
「はい、高校2年です」
高校生だと何かいけなかったのだろうか? それに江東さんのもう一人のマネージャーである枚田さんには伝えたはずだけどな? なぜ知らないんだ?
「あのさ……あたしあんたの配信を聞いてビビッときたわけよ」
「は、はい」
初めましての時に見せた敬まっている気持ちが今では皆無と言っていいだろう。逆にこのコラボ配信を企画する時に現れていた“自分勝手”が滲み出ている。
「まさに私の理想の人だって……なのに年下はないわ。あんな大人びいている声してんのに騙しやがって」
「た、確かに大人びいた声とはよく言われるけど……」
完全に言いがかりだ。勝手に想像して幻滅して。あわや、騙しやがって? え、キレそうなんだが?
「クソが、こんなガキならコラボするんじゃなかったわ」
「は、はぁ……すいません?」
え、なに? Vtuberを出会い系とでも勘違いしてます??
とりあえず彼女に合わせた反応したつもりなんだが、それが癪に触ったようだ。
「は? うざ。萎えた。帰る」
彼女は180度向きを変えこの部屋から出ていった。
「………え!? ちょ、ちょっと! 江東さん!? 向井さん! もう配信時間になるので始めといてください! 私が連れ戻します!」
佐川さんが江東さんの後を追い出ていく。
え? 俺だけで配信しとけと? コラボ配信なのに?
配信予定時間は20時。
あと5分で20時だ。
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