第6話 ラピスベリー

 とうとう来てしまいました〜

 じゃじゃーん! 私の前に立ちはだかるビル! ここがあの天下のラピスベリーの会社で〜す!!


 今回は急なコラボということで、マネージャーの小平さんは予定が合わなかったので今回は私、向井雄馬一人でお送りしま〜す!!


 普通は会社が作ったものを宣伝するためにVtuberのプロジェクトを作る感じなんだけど。(うちのぐらぶるダクションも当社のゲームを宣伝するために作られたプロジェクト)


 ラピスベリーは“Vtuber”単体! Vtuberの会社として成り上がろうと考えた会社だ。だからVtuberの環境はラピスベリーが一番金かかってるだろうし、ライバーの数も群を抜いているんだ。他にもライブとかにかけるお金をすごい金額で毎回ファンの期待を裏切らないパフォーマンスなんだとよ。


 なのにだぜ……俺の前に立ちはだかるビルに“覇気”を感じなかった。

 なんだろう、第一印象が「本当にここ天下のラピスベリーの会社なのか?」って印象だ。

 それぐらい質素な会社だった。


 


 ****



 中に入ってもそうだ。

 とりあえずロビーらしきところへ行き、受付嬢に話しかける。


 「こんばんは。エターナル株式会社ぐらぶるダクション所属向井です」


 エターナルってのはうちの会社だ。絶対社長は未だに厨二病を拗らせてるに違いない。

 受付嬢は目の前にあるパソコンのキーボードをカタカタさせていた。


 「お待ちしておりました。向井様、担当の者をお呼びしますので少々お待ちを」

 「わかりました」

 「お待たせしました! 担当させて頂きます! 最爽のマネージャー佐川です!」

 「はや!? お待ちしておりませんおりません!」

 「あはははははっは!」


 突如現れた佐川さん。昨日いらした枚田さんとは対照的に明るく溌剌的な女性だ。

 けど、一人のライバーに二人のマネージャーもついているなんて。流石Vtuberに力を入れてる会社だな。


 「ではご案内します!」



 俺はそのまま佐川さんについて行った。



****



 「ここでオフコラボをします! 機材は向井様がいつも使っているのに合わせています! 最爽は毎度毎度時間ギリギリにくるので配信ツイートや配信準備でもして待っておいてください!」


 それでは! と全てを説明し終えた彼女は風のように消えていった。いや、ほんまに風。びゅーん聞こえた。

 俺は今で開いた方が締まらない状況だ。わざわざ俺がいつも使っている配信機材を用意してくれてて、なんかイスが豪華すぎる。ゲーミングチェアが高級ソファー化してる。


 「す、すごすぎる……会社の外装はめっちゃ質素だったのに配信環境はセレブ級だ……」

 「どうしてって? ご説明しましょう!!」

 「!!??」


 またも突如と現れた佐川さん。マジで急にくる。この人といただけで寿命全て尽きるレベルでビビらせてくる。


 「ラピスベリーは会社名は公開してますが、“場所”は公開しておりません。理由は主にライバーを守るためです。他の会社のようにVtuberがいろんな中の一つのプロジェクトならば人も多いでしょうし大丈夫でしょう。

 しかし、我々は違います。Vtuber一筋です。なので会社の場所を公開してしまいますと過剰なファンが押し寄せライバーとして最悪な事態。“身バレ”が起きる可能性があります。

 なので、場所を公開せず、念を押して“外装を質素にして場所バレも阻止しているということです!」


 なるほどな。ちゃんとライバーの安全も考えた上での外装か。ちゃんとしている。いや、けど待てよ。ライバーそれぞれの自分の家で配信すれば良くないか? 俺なんていつも家で配信してるぞ? 企画とかは別やけど。


 「家でやれよと思いましたね? そういう手もあるのですが……」

 「わぉ、心読まれちまったよ」

 「ライバー各自の家ではネット環境が悪い方もいらっしゃいますし、家の周りが工事中で気兼ねに配信ができない! って方もいます。

 なので、我々はライバーに心置きなく楽しく配信して欲しいため。外装などは質素ですが配信環境だけは抜群の会社をつくったのです」

 「あくまでライバーのためですか……」


 ここまでライバーのために徹している会社が人気にならないわけないわな。


 ラピスベリーの人気の秘訣も知った俺はイスに座り脱力する。頭の中はすげぇーが連呼されていた。




ーーーーーーーーーーーーーーー


 次でとうとうあやつが登場!?

 


 




 

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