第5話 打ち合わせ(後編)

 小平さんが負けた。


 「ということで、別に明日でも構いませんね?」

 「し、しかし明日は………」


 小平さんがピンチだ。たぶんこちらの会社側が明日コラボ配信はできないのだろう。それを言えばいい話なんだが……女の人が困ってる……そんなの! 俺が助けてなくて誰が助けるんだ!!


 俺は席から立ち上がっていた。


 「む、向井さん?」


 俺を見つめる小平さん。彼女に俺は微笑み告げた。


 「そんな顔をしないでください小平さん。あとは……俺に任せてください」


 正面に向き直る。


 今の俺絶対カッコいい……特に小平さんからのアングルの破壊力やばいだろうな〜

 これが配信だったら絶対アーカイブに残していたぜ!


 「さぁ……今度は俺が相手だ! 魔王枚田!!」

 「ま、魔王枚田!?」

 「あわわわわわ向井さん!?」


 やっべ。調子こいたてへぺろー


 

 ****


 一応、枚田さんにごめんなさいして休憩を挟んだ。疾走感あったけど普通に1時間ぐらいは話し合ってるからな。少しインターバルを挟んだ。


 「……枚田さん」

 「あ、魔王は言わないんだね」

 「え? 欲しかったですか? なら遠慮なく」

 「冗談よ。それで今度は勇者向井さんが私になにようで?」

 「あ、そちらはそのスタンスなんですね」


 枚田さんって結構頭いかれ〔見苦しいぞ貴様〕よな。

 

 「理由なんてないさ……ただ、女の子が困っているのに! 助けないなんて言うことなどしない!」

 「あなたもしっかりノリノリね」

 「枚田さんの方ですよ。俺の厨二心を揺さぶったのは」

 「それなら責任を持つわ。かかってきなさい」


 


 この後はお互い役になりきり話し合った。最初らへんは今回の打ち合わせに関係ない世界線だったから割愛したぜ!きらーん



 「勇者向井よ……なぜ足掻く? これは言ってしまえば出来レースだ。こちらの方がVtuber界で先輩会社なのだ。先輩の言うことは絶対なのではないのか? あ〜部活もやってないから上下関係もわからぬか〜あっはっはっはっ〜!!」

 「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……」

 「む、向井さん……」


 すごい論破されている!(へ?)

 やばい! 負ける! (へ?)


 だが、俺は勇者だ! この世界を守らなくちゃいけないんだ! そのために俺は立ち上がったんだ!(割愛できてねぇーじゃん)


 「……これを出す羽目になるとはな……」

 「む? 切り札か? この女のように逆にこっちが利用してやろう! はっはっはっはっ!!」

 「む、向井さぁ〜ん!」

 「さぁ〜こい! 全てを受け止めて勝ってやろう!!!」


 ヒロイン(小平)は「もうライフはゼロよ!」並の迫真の叫び、その叫びを背に勇者(向井)は高笑いをしているラスボスの魔王(枚田)へと立ち向かう。


 いや、まじ今俺どの世界線におるん。


 過度な世界線により正常へと戻った向井! これにより彼は冷静に判断できるようになった! そんな彼が放った言葉は!!??


 「普通、コラボ相手が了承しないとまず始まらなくない? そのコラボって俺とその最爽さんの了承があってのもんでしょ? 俺まだなんも分からずで了承してないのだが?」


 至って単純!!!! “常識を突きつけ”てきた!!


 「え? 了承されてないのですか?」


 これにより枚田も正常へと戻る。


 「コラボはしたいけどさ……普通に会社が明日は出来ないんじゃないかな? 小平さんがどうしても明日は無理って言うぐらいなら余程の予定が入ってるわけだし。

 俺のコラボってだけで会社は巻き込まないよ。ってことで、会社のためなら俺が最終関門になろうと言うことだ〜」

 「そうですね……明日は二ヶ月前から企画されている鷹葦 ロミ(たかあし ろみ)さんのボイスレコーディングなのです。うちの事務所は小さいので一つのことしかできないので……」


 ほらな。やはり余程なことだったんだよ。


 「ということでわかっていただけました?」

 「? それがなんで明日ダメな理由になるのでしょう?」

 「え〜話聞いてました? だからうちの会社ではもう予定があってうちではオフコラボする場所がないんですよ! ハァ〜頭硬いですね〜」


 小平さんも大概だよ……普通にそれを先に言えばいい話だったからね。

 話的にオフコラボの意味はわかった。用は直接会って配信することだろ? だったら機材とかもあるし確かにうちでは出来ないな。詳しいわけではないけど、会社はでかくてもVtuberの部署は小さいから……


 「ですから。こちらで場所は用意しますので、向井さんがこちらに来ていただければ済む話です。あとは……狡噛レンの立ち絵を送っていただ問題ないです」

 「「………」」


 小平さんも俺と同じ考えだったのだろう。「あんなに上からくるし、わがままなんだ。場所も用意しろって言ってくる」と。だから『明日は絶対無理』を貫いていた。

 一方、あちらは場所はラピスベリーで用意する前提で話を進めていたから無茶なお願いも通ると思っていたのだろう。


 要するにすれ違い通信していたと言うことだ。


 「………話し合いって大切ですね」

 「? ずっと話し合いをしてるつもりでしたが?」


 枚田さんはマネージャー失格です。そう勝手に烙印を押した俺だった。




ーーーーーーーーーーーーー


 長い長い遠回りを経て打ち合わせ終了です。ご付き合いくださりありがとうございました。 

 話をため込んでいるんですけど、悪役(最爽)は7話ほどで出てきます。

 次回は少々ラピスベリーの凄さを実感していただく話です。たぶん



 


 

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