第3話 打ち合わせ(前編)
「向井さん緊張してます〜?」
「わ、わかります?」
「はい、すんご〜い顔してるし、声も震えてるので〜」
「!? そ、そうですね……初コラボっていうのもあるし……そりゃ緊張しますよ……」
俺が通された部屋は会議室だ。平行に並べられている長机の片側に俺と小平さんが座っている。
向こうはまだいらっしゃってなかったようで、今こうして到着を待っている状況だ。
………うん、普通に緊張するわな。俺初コラボだよ?
「ろくな知識持ってないのに本当に大丈夫か?」 みたいなことを思うわけですよー!」
「大丈夫ですよ〜なんだかんだ言って向井さんはしっかりしてますから〜」
いつも通りの口調で励ましてくれる小平さん。
小平さんの口調のおかげかな? いつも小平さんの声聞くと落ち着けるんだよな。
「いつも通りですよ〜日頃の配信と同じ心意気で大事ですから〜」
「……そうですね。ありがとうございます」
ガチャ。
あ、きた。
一人の社員が会議室の扉を開け、「こちらでございます」と言ってる。
この部屋に用があるのは俺とコラボ相手しかいない。(あとお互いのマネージャー)
「初めまして。最爽エリーのマネージャー。枚田(ひらた)です」
彼女は名刺を差し出しながらそう告げた。
あれ? 一人だけ?
****
「それでははじめましょうか」
枚田さんが向かいの席に着いたことを確認し、小平さんが進行を始めた。
あれ? 小平さん気にしてない? これが普通なの? マネージャーさん同士で打ち合わせするのが普通なの? 俺必要なくね??
「まず初めに……最爽エリーさんはどうしました? 何かご予定がおありで?」
や、やっぱり普通じゃないよな! 普通いるもんだよな! よかったよかった。俺の勘違いではなさそうだ。
「それら諸々説明させていただきますので、まずこちらの要望をお聞きください」
「……わかりました」
な、なんか感じわr……上から目線だな。言葉選んじまったぜ。いくら立場的に上でもなぁ……あれは感じ悪いわ。
「まず、今回のコラボは“オフコラボ”とさせていただきます」
「!? いきなりオフコラボですか!?」
オフコラボ? オフって電源切るとかのやつ? 配信機材の電源切ってコラボすんの? いや、どうやって配信すんねん。そういや、小平さんの口調変わってr……
「我々の最爽エリーがそう望んでいるのです。逆に言えばオフコラボじゃないとコラボはしないということです」
「け、けどいきなりオフコラボは前代未聞で……「次の話に移ります」
小平さんの話を遮り次の話題へ移ろうとする枚田。いや、本当に“感じ悪いわ”。今までこの言葉だけは言うまいと我慢したけどここまで感じ悪い人初めて見た。
それにまだ俺、オフコラボがどういうことかわかってないんよ……
「先程聞かれてた“最爽エリーがこの場にいない”という件に関しましては……」
あーそれ気になってた。早く説明して欲しい。
なんかすごいこの場俺だけ浮いてるし、ライバーいないのが普通なら今すぐにでもここから立ち去りたいと思ってる。
だからなぜいないのか早く教えて欲しい……
「……率直に言います。最爽は狡噛レン様の配信をご覧になり。『何この人!? めっちゃタイプ! 声もイケボ! ……私この人と会いたい!』となり彼女からのコラボ要請でご連絡させていただきました」
「は?」
聞いて驚くな? 打ち合わせ始まって初めて俺が発した言葉がこれである。
そういや挨拶もしてないで? マナーなってないな! あっはっはっはっ〜
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最爽エリーは狂ってます
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