第2話 打ち合わせ前
コラボの知らせを聞いた俺は浮かれていた。
「うひょぉぉぉぉおお!! まさかあのラピスベリーのライバーさんとコラボできるとは!!!!」
何回でもいうが、ラピスベリーはVtuber界のトップを走る企業だ。
向井のこの反応も正常である。
「………けどさ……なんか怖いな。なんで急に俺なんかとコラボしてくれるんだ?」
俺別に普通なVtuberだし。ツウィッターとかでもトレンド入り常連客でも無いしなー。逆にどうやって俺のことを知ってくれたんだろう。
疑問は深まるばかり。
「ま! コラボすることには変わりない!! オラ、ワクワクすっぞ!!」
柄にもなくアニメキャラのセリフを大声で叫ぶほど向井は有頂天になっていた。
****
叫んで三日後。事務所から呼び出しを食らった。
最爽エリーさんとのコラボについてだろう。
マネージャーさんからは「他社同士のコラボなので〜入念に打ち合わせをします〜。彼方からの希望で出来るだけ早くコラボしたいとのことなので普通のコラボとは違うと思っといてください〜」とのこと。
相場を詳しく知らんから普通のコラボを知らない俺。
「それにな……なんやかんや言うて“初コラボ企画”なんだよ」
向井はVtuberの月日は浅いのだ。三ヶ月ほど前だろうか? その頃にぐらぶるダクションからスカウトされたのだ。“あの大会”をきっかけに。
「お、あぶね。通り過ぎるところだったぜ。あんま事務所行くことないからまだ慣れないや。にしても普通に大きいよな」
目の前に立ちはだかる(?)ビルを前にありきたりな感想を述べる向井。
ぐらぶるダクションは最近になってVtuberを取り入れたのだ。それ以前からはゲームなどをプログラムしている会社。ゲーム会社としては有名だが、Vtuber界だと新参者という感じだ。
コロナ禍により突如起きたVtuberという波。これに乗るべく、ぐらぶるダクションも新しくVtuber環境を設置したのだ。
エレベーターを使いVtuberオフィスの7階へと向かう。
「……Vtuber界としての知名度は小さいかもしれないが、会社自体は大きいからな。そこに目をつけたのかもしれないな」
そんなことを考えてるとピコーんと音が鳴った。どうやら着いたらしい。
エレベーターのドアが開くなり、一人の女性が佇んでいた。
「こんにちは〜向井さ〜ん。お待ちしておりました〜」
「こんにちは。小平さん。いつも通りのほんわか口調ですね!」
少しウェーブのかかった茶髪ロングでいかにも社会人を醸し出している黒スーツを着こなしている女性が俺の担当マネージャーである“小平 奈緒(こだいら なお)さんだ。
「ありがとうございます〜。お分かりでしょうが、今回お呼びしたのはコラボ打ち合わせです〜。あちらのマネージャーさんがこちらに赴くようなのでしょうしょ〜お待ちを〜」
「了解です。頑張ります!」
「その意気ですよ〜。プレッシャーをかけるつもりではないですが〜向井さんが成功すればラピスベリーとのコネクトが生まれ〜いい感じになるので頑張りましょ〜」
彼女が言いたいことは分かる。俺がこのコラボを成功させたら、ラピスベリーとぐらぶるダクションでいい関係を結べるってことだろう。
さすれば、俺以外の同期達もラピスベリーんとこのライバーとコラボできるかもしれない。
要するに俺は“足掛かり”というわけだ。
足掛かりってちょっと癪だけど。ぐらぶるダクションには感謝してる。
もともとゲームできる建前としか考えてなかったけど、今ではリスナーに囲まれながら配信するのが楽しく思ってる。
Vtuberという世界に連れてきてくれたのがこのぐらぶるダクションだ。
しっかり恩義は返すぜ!
よし! 絶対成功させてやる! その前にまずはコラボについての打ち合わせだ!!
ーーーーーーーーーーーーー
癖のある打合せが次回始まります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます