『悪党たちに捧げる挽歌』制作メモ
完結作品の制作について、備忘録を書いておこうと思います。物語の核心に迫る部分もあるのでネタバレあり。
まだの方はぜひ本編を読んでみてください。
悪党たちに捧げる挽歌 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16817330655041518226
【コンセプト】
暗殺者と殺人鬼の戦いって面白いんじゃいか⁈から発想を得ました。もともと殺し屋だの殺人鬼だの物騒なモチーフが好きで、どちらも人を殺すけどスタンスが違う。それがぶつかり合うところを書いてみたい、という好きなものごった煮趣味全開というのがきっかけでした。
【キャラクター】
まずは鳴瀬と手塚を考えました。組織に忠実に役目を果たす暗殺者と自分の好きな獲物を狙って殺す殺人鬼です。
鳴瀬は仕事人間でストイック、手塚は欲望に忠実、相反する二人がそれぞれの信念をかけてぶつかる構図にしました。
二人だけだと物語に厚みが出ないので、家族や職場の人間など、脇役も必要最小限登場させることにしました。
小見山は本当は三つ巴の戦いにしたかったのですが、3点のバランスが取りきれなかったというのが本音です。
脇役を通して手塚と鳴瀬の人柄を見せるように描写しました。彼らは外見もよく能力が優れており、人に慕われます。しかし、自らの身上から絶対に一線を超えない、というスタンスです。
そんな中で孤独を感じていた手塚は人を殺すという共通点から鳴瀬に異常な執着を見せます。
実は、鳴瀬も手塚のことを仕事を邪魔した憎い奴、という執着があったのですが、手塚のストーカー気質の前にやや薄まってしまいました。
【作品テーマ】
この作品は殺しの技がすごいという二人の異能者が戦うとどうなるのか、というワクワクアクションエンタメ作品を目指しました。
それだけではストーリーにならないので、二人が真逆の性格であり、互いの信念がぶつかる構図にしました。
二人とも信じるものが覆るというのがポイントで、それぞれに救いを見出し新しい人生を歩むことになります。
実はこれは当初かなりぼんやりしていたことでしたが、書いていくうちに輪郭が明瞭になり物語に組み入れられました。
【プロット】
プロットはめちゃくちゃざっくり作っていました。鳴瀬の家族や昴、喜久子など脇役がどう関わるかもメモはありました。
しかし、書き進めないとこの形にはならなかったというのが実際です。
緻密なプロットを建てられる作家さんはどのくらいまで考えているんでしょうね。
私は蓋を開けてみたら完成作品に対するプロットの割合は三割かなぁといった感触です。
プロット無しでは書けなかったけど、最初から緻密に考えておくのは無理だったと振り返ります。
【思いつきで入れたモチーフ】
プロットに無いものです。
京平の絵本は思いつきでした。ラストまで使おうというのも後半戦で思いつきました。
京平は大人しい子で、絵本の世界に没頭します。絵本の世界が本編とリンクしており、鳴瀬と手塚が共闘することを暗示しています。
ラストの発表会で京平がおおかみさんを見た、というのは良い演出ができました。
冒頭で鳴瀬は発表会に行かない、と即断しましたが京平を見守るためにこっそり発表会にやってきたのです。
これが鳴瀬生存の可能性を盛り上げるフラグになりました。
サボテンは鳴瀬の心の変化を表すアイテムで、根暗な男がサボテンを大切に育ててたら面白いというのがチョイスのポイントでした。
スマホの待受がサボテンから家族に変わることで愛情の芽生え、サボテンを信頼できる吾妻に託すことで吾妻との信頼関係、鳴瀬の律儀さを表現しました。
ラストで花が咲いているのはこれからの未来がそう暗いものでは無いという暗示になりました。
【手塚という男】
手塚は快楽殺人鬼という設定で手塚の思考パターンをどう異常に見せようか気に留めながら書いていました。
1番怖いのは冷酷で他人を利用する割に妙に良心的なところがある点かなと思っています。
手塚が自慰行為をするシーンは、悩みましたがリアリティのために書くことにしました。
感情のやり場を見失って、快楽に逃れているサイコパス味を出してみました。
処刑人を殺したことで家族の復讐を果たせましたがそれだけで精神がまともになれるはずはなく、京平を救うという二段階の仕掛けをしました。
京平は手塚と同じ年頃にしたのはこのシーンをぼんやり想定していだと思います。
【執筆をしながら】
この作品が本当に形にできるのか、書き初めた当初は不安しかありませんでした。
そもそもプロットもかなり雑で間の話はほとんど考えられていませんでした。
ラストシーンのメモは鳴瀬と手塚が手を結び、小見山を倒す、だけです。
ここに向かってどう書いていくか、とりあえず書こう!と始めたのはストーリーを流しながらの人物設定です。
冒頭の人物紹介を書きながらキャラクターを作っていました。その感じでようやく進み始めましたが、足踏み感があったのはそういうことでした。
それでも何とかストーリーが進み始めて勢いついてからは書きやすかったです。
ラストシーンは対決に持っていくためにどう運ぼうかずっと考えていました。
思いついては書き進め、というまさに自転車操業?でした。
【長編を書くこと】
なんというか、私の場合超アドリブです。緻密なプロットが書けない。スケッチでなく清書を始めないと像を結ばないという感じです。
訓練を積めば計画通り進むのかなとも思います。
振り返ってみると、何も無い状態からよくぞここまで書いたなと驚いています。
小説投稿サイトのありがたいところは新作を書いたらすぐ読んでもらえ、反応がもらえることです。
コメントやハート、星レビューをもらいながら頑張って継続することができました。
心から感謝しています。ありがとうございます。
ちなみにここでひっそりと。
この作品は公募に出すつもりでぶっ飛ばして書きました。無事投稿したので、夢の公募一次通過を願っています。
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