第2話 「予想外の出来事」
昨日の夜に自分をサンタだと名乗る不法侵入者と出会ったのが夢だったと思うほどいつも通りの朝が来た。
俺たちのやりとりはどうやら家族にバレていなかったようで、両親からも妹からもそこに言及されることはなかった。
「蒼樹、なにぼーっとしてるの?」
母さんから声を掛けられ、驚いて食べていた朝食を吐き出しかける。
「別に、なんでもないよ……」
「えー? お兄ちゃんがなんでもないって言うとき大体なんでもなくない時じゃん」
「なんでもなくないってなんだよ、紫音」
俺と同じ食卓で朝食を摂っている妹――
「なんでもなくないはなんでもなくないだよ。なんでもなくないということはなんでもなくないということで」
「もうなんでもなくないって言いたいだけだろ。ゲシュタルト崩壊しかけたわ」
妹の適当なノリに付き合いきれなくなった。朝食をいつもより早く片付け、高校に向かう。学校方面のバスに乗って、いつも通り一番後ろの端っこを占領。景色が流れていく窓の外を見つめる。
正直、昨日のことは夢じゃないかと今でも疑っている。自分をサンタと名乗る美少女。それをすんなり受け入れるのは無理があるだろう。
「はぁ……」
「なにため息吐いてるの?」
「うわぁ! って、美佐か」
同じクラスの友人、
「どうしたの? なんか憂鬱そうに見えたけど」
「別に憂鬱ではないけど……そういえば、美佐はサンタって信じてるか?」
「そういえばって、全く話の前後が繋がってないよ。うーん、サンタかぁ。信じてるか信じてないかで言えば信じてないかな。でも、信じてみたいとは思ってるよ」
「……信じてみたいって、なんか意外だな」
「意外かな? ……で、どうして急にサンタがどうとか言い始めたの?」
「昨日さ、俺の家にサンタが来たんだ」
「……寒すぎて頭がどうかしちゃったの? それとも怪しい粉吸ったりした?」
「辛辣過ぎない?」
いや、言いたいことは分かるけどさ。
「信用できない気持ちは分かる。だけど、本当に来たんだって。俺と同じくらいの女の子がさ」
「ふーん、蒼樹ってそういうの好きだったんだ。言ってくれればあたし、着てあげるのに」
「そんな趣味はねえよ!?」
冗談なのは分かっているけどここは全力で否定しておかないと。それでは俺があまりにもサンタが好きすぎるあまり幻覚を見るようになったみたいじゃないか。とんでもない誤解が生まれそうで慌てて止めに入る。
昨日の夜。俺の前に芽依が現れた時。
「プレゼントは私……ってことですよ!」
「――いや、俺他に好きな人いるから」
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