転生できるなら私は貝になりたい

「……………………んぁ?」


 酷い頭痛だ。頭の中をハンマーで何回も叩かれたような強烈な痛み。だが、同時に只ならぬ解放感が湧き上がっている。説明はつかないが、シガラミという牢獄から脱したようなそんな解放感。


 視界は暗闇で何も見えない。ただ、自分が寝転がっていることは分かった。ひんやりとした床の冷たさが全身で感じられた。


 とりあえず、上半身を起こしてみる。そこでようやく頭痛が和らいできた。しばらくすれば綺麗に無くなりそうだ。


 暗闇ではなにも出来ない。仕方がないので一体これはどういった状況なのか、考えてみることにした。


 ……たしか、ボケたおっさんが来店してきて……ようやく帰った……と思ったおっさんの乗った車が勢いよく突っ込んできて―—。


「もしかして、俺は死んだのか?」


 可能性としてはあり得るが、そんな考えに至ることが馬鹿らしく思える。

 

 ……とにかく、ここから動いてみようか。


 そろそろ身体の調子も戻って来た。立ち上がってみるが、二日酔いのような嫌悪感が出るだけだ。これなら問題は無いと言える。

 

 暗闇にも目が慣れたようで、ぼんやりだではあるものの、部屋の全貌が明らかになった。


 部屋は倉庫のような場所で、四方八方段ボール箱のようなものが積み上げられている。


 ゆっくりと部屋の中を歩きまわり、扉と思われる場所まで辿り着いた。


 ドアノブに手をかけようとした瞬間、1人でに扉が開いた。


 暗闇の中に燈される光が俺ともう1人の影を作る。


「だ、誰ですか!?」


 怯えるような女の声。これはマズイと本能が訴える。確実に良くない状況だ。まずは俺が無害であると伝えるべきだろう。


「俺は危険な人物じゃありません!」


 この時点で気づくべきだった。


――いま、俺は無一文のスッポンポンであることに。



<あとがき>


溜めて、溜めて、開放や。


れっつごーかいほー

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