第2話 現実ラブコメ。急遽終了のお知らせ②
(そっ!そうだ!玉村たちを追わなきゃ!)
俺はさっきまで玉村たちが行きたいって言っていた店を見たが、玉村たちはいなかった。
(くそっ!俺としたことが見失ってしまった!)
俺は急いで周りを見渡すがそれらしき影は見えない。
(どこ行った?)
俺は急いでフロアを歩き回ったがどうやらこのフロアにはいないようだった。俺は急いでエスカレーターに乗ろうとするとちょうど二階ほど上のエレベーターに二人らしき影を見つける。
(いた!)
俺は人の注目を浴びない程度に急ぎながら二人を追った。
どうやら二人は最上階を目指しているようで、俺が最上階に着いた時には近くのカフェに入るところだった。
(なんでこんな時間に最上階なんて来るんだ?)
俺は訳のわからないまま席に座った。
どうやらこのカフェはファミレスとフードコートが混ざったような作りをしていて、ファミレスのように一つのテーブルごとに仕切りがある上、フードコートように入口が広いので俺がきたことに二人気づいていなかった。
なので俺はバレないくらいの遠さのテーブルに音を立てないよう座り、仕切りから少し顔を出して二人を観察した。
(見た感じ、俺と二人以外の客はもういないようだ)
「ここのカフェ景色綺麗でしょ!私のお気に入りなんだ!」
柊さんのいう通り大きめなショッピングモールなだけあって最上階の窓からの景色は壮観だった。
「そうなのか。知らなかったな」
玉村は明るく接しようとしているが明らかに東雲さんが帰ったことでテンションが落ちていることが丸わかりだった。
(おい!テンション下がりすぎだろ!もうちょい柊さんに気を遣ってやれよ!って柊さん?)
しかし柊さんは玉村がしたことを少しも気にしていない。というかなんかソワソワして聞こえてないような様子だ。心なしかというか完全に顔も赤くなっている。
(え?柊さん?どうした⁉︎)
柊さんは次の瞬間赤くなった顔をあげて玉村に話しかける。
「あ!あのさ!翔斗に伝えたいことがあるんだけど!」
柊さんの顔は恥ずかしさで真っ赤になっていた。少し離れた場所から見てる僕でもドキドキしてしまうほど、女子の勇気を振り絞った誘いはラブコメ空気を周りに作り出した。
「っ⁈⁉︎」
(こっこれは!まさかの告白イベント⁈)
俺は驚きすぎて気づかれないよう持っていたスマホを落としそうになる。
しかしなんとか持ち堪え、二人のラブコメ空間を壊さずに済む。
「あぁ俺もお前に伝えたいことがあったんだ」
玉村は柊さんの真剣味を感じ取ったのか、真剣な顔になって答える。
(あぁそうか負けヒロインの振られイベントか!)
俺は即座にそう直感した。
こんな時期にさらには他の女子に惚れているとわかりながらも幼なじみが告白するなんてもう振られる未来しか見えない。
「あ、あのね!私は、私は!」
(ドクン!ドクン!)
初めて立ち会う告白の瞬間だからか、振られるとわかっているからか俺の胸は驚くくらい高鳴っていた。
「私は翔斗が好き!私と付き合ってください!」
柊さんは今にも泣きそうな顔だった。緊張もあるだろうが、やはり本人も振られることがわかっているのだろう。
「っ!」
玉村も驚きで声を失う。
その空間のみこの世から断絶されて、時の流れが遅くなったように感じた。何時間にも思える数秒の沈黙を切り裂くように、玉村が一言声を発する。
「ごめん…」
(あぁやっぱりか)
「そ、そっか…」
「お前から言わせて」
「えっ?」
(ふぁ?)
「さっき俺からも話があるって言ったよな。それを今ここで言わせてくれ」
(え?ちょっ!待て待て待て!意味がわからんぞ!)
俺の脳があまりにもすぎる事象を前にして脳の処理が追いつかなくなる。しかし、そんなことを気にせず玉村は続ける。
「柊 苺。俺もお前が好きだ。俺と付き合ってくれ!」
(はぁぁぁぁぁぁあ?)
俺の脳はついにショートし、ただひたすらに驚くことしかできなかった。
「えっ?なっ、何で?東雲さんが好きだったんじゃ」
告った柊さん本人も驚きのようで驚きを隠せていない。
(ホンッットになんでだよっ!)
「俺が東雲さんを好き?確かに東雲さんはいい友達だし、引っ込み思案だから良く気にかけたりはしてるけどな。
俺はずっと苺。お前が好きだったんだ」
「う、嬉しい!」
柊さんはその場で泣き出し、玉村はそれを宥めるように柊さんに抱きついた。ちなみに俺はというと、
(アーモーイミワカラン)
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